第27話 働きたくないのに、余計なことしてくる
調子に乗っている。
ミリアが。
完全に。
「見ましたか!? 売れましたよ!三枚ですよ三枚!」
うるさい。
さっきから三回は聞いた。
「すごい。」
「ですよね!」
元気。
体力はないのに。
街道を進む。
人が増えてきた。
商人。
旅人。
冒険者。
平和。
そのはず。
「次はあの人です!」
ミリアが指さす。
また商人。
今度は細い。
目が鋭い。
あまり笑ってない。
嫌な予感。
「……ミリア。」
「大丈夫です!」
何が。
ミリアが近づく。
「こんにちは!」
明るい。
眩しい。
「商品、いかがですか?」
箱を開ける。
干し肉。
保存食。
布。
色々。
細い男が見る。
無言。
長い。
「……いくらだ。」
「こちらは銀貨四枚です!」
上げた。
さっきより。
強気。
「高いな。」
「品質が違います!」
さっきと同じ台詞。
使い回し。
男が一つ手に取る。
見る。
匂い。
無言。
「二枚だ。」
「無理です!」
即答。
引かない。
強い。
でも、
相手が違う。
「三枚。」
「四枚です!」
動かない。
本当に動かない。
さっきはそれで勝った。
今回は。
男の目が細くなる。
「……お前。」
声が低い。
「なめてるのか?」
空気が変わる。
少し。
だけど、
確実に。
「え?」
ミリアが固まる。
さっきまで強気だったのに。
「相場を知らねえのか。」
「え、えっと……」
知らない。
たぶん。
完全に。
「四枚はふっかけすぎだ。」
周囲の視線が集まる。
面倒。
本当に面倒。
「……ミリア。」
「は、はい!」
「下げる。」
「で、でも……!」
男が一歩前に出る。
圧。
強い。
戦闘ではない。
でも、
嫌な種類の圧。
ガルドも前に出る。
静かに。
「三枚だ。」
男。
「……三枚で。」
ミリア。
折れた。
遅い。
でも、
売れた。
男が銀貨を投げるように渡す。
去る。
空気が戻る。
「……」
「……」
ミリアがしょんぼりしてる。
「すみません……」
「無事。」
それだけで十分。
「でも、四枚いけると思ったんです……」
「相手を見ろ。」
「……はい。」
学習したらしい。
たぶん。
歩き出す。
少し静か。
珍しい。
「……レティシアさん。」
「なに?」
「さっきの人、ちょっと怖かったですね。」
「うん。」
怖かった。
別の意味で。
戦えば勝てる。
でも、
揉めると面倒。
それが一番困る。
その時。
ガルドが小さく言う。
「……見られてる。」
「え?」
ミリアがきょろきょろする。
「どこですか!?」
「見るな。」
ガルドが止める。
私は視線だけ動かす。
遠く。
街道の端。
黒。
ローブ。
一瞬。
すぐ消える。
「……」
知ってる色。
忘れられない色。
ミリアは見えていない。
まだ。
でも、
もう、
追いついてる。
旅は、
やっぱり、
楽じゃない。




