働きたい商人は、口が強い
遅い。
でも、
昨日よりまし。
ミリアが後ろを歩いてる。
荷物は少し減った。
私が持ってるから。
不本意。
「もう少しで街道に出ます!」
元気。
体力はないのに、
声は大きい。
「街道。」
「あそこです!」
指差す。
道が広い。
人がいる。
馬車もいる。
文明。
安心する。
その時。
「おーい!」
声。
男。
馬車の横。
商人。
身体が大きい。
目が細い。
「そこの嬢ちゃん!」
ミリアのこと。
ミリアが止まる。
「……?」
「商品、売る気あるか?」
ミリアの目が変わる。
さっきまでと違う。
疲れてない目。
商人の目。
「あります!」
即答。
速い。
馬車に近づく。
ガルドと私は後ろ。
見てる。
「干し肉、上質ですよ!」
「ほう?」
男が笑う。
嫌な笑い。
「見せてみろ。」
ミリアが箱を開ける。
干し肉。
普通に見える。
違いはわからない。
男が一つ取る。
見る。
匂い。
噛む。
「……悪くねぇな。」
その言葉を待ってたみたいに、
ミリアが言う。
「銀貨三枚です!」
「ちと高ぇな。」
「適正価格です!」
強い。
さっきまで座ってた人と同じとは思えない。
「銀貨一枚。」
安い。
たぶん。
「無理です!」
即答。
迷いなし。
「二枚。」
「三枚です!」
引かない。
強い。
男が笑う。
「嬢ちゃん、旅慣れてねえだろ。」
「慣れてます!」
嘘。
明らかに嘘。
「二枚半だ。」
「三枚です!」
動かない。
本当に動かない。
「……」
「……」
沈黙。
先に動いたのは、
男。
「……わかったよ。」
銀貨を出す。
三枚。
本当に。
「毎度ありがとうございます!」
ミリアが笑う。
勝った顔。
強い。
男が去る。
馬車も去る。
静か。
「……」
「……」
「……すごい。」
言う。
素直な感想。
「えへへ。」
照れてる。
「商人ですから!」
誇らしげ。
「……さっきまで」
「はい?」
「死にそうだった。」
「それとこれとは別です!」
そう。
別らしい。
ガルドも少し笑ってる。
「助かるな。」
「任せてください!」
頼もしい。
体力以外。
ミリアが銀貨を見る。
それから、
私を見る。
「これ。」
銀貨を一枚渡す。
「護衛代です!」
予想外。
「いいの?」
「もちろんです!」
当然みたいに言う。
商人。
本物。
銀貨。
重い。
安心する重さ。
「……ありがとう。」
「こちらこそです!」
うるさい。
でも、
悪くない。
旅は、
少しだけ、
楽になる。
たぶん。




