45出来立ての料理
鍵を開けて部屋にはいる。
まず、目にはいるのは太陽光を取り込みやすそうな大きな窓。
家具はカントリー調に統一されたテーブルやクローゼットなど温かみを感じる室内だった。
ベッドはシングルが二台あったので元々二人部屋なのだろう。
ドア近くにはカゴが置いてある。
カゴ内にあったメッセージカードには、(汚れた服をいれてドア前にだしておいて)と書いてあった。
アニカさんが洗ってくれるのかな。
とりあえずガルラから借りた服を脱いで、転移してからお世話になっている服に着替える。
石鹸のようないい匂いがした。
忘れないうちにカゴに脱いだ服をいれてドア前にカゴをだす。
その後は、首にかけてあるペンダントとハンカチ。それからライアスさんから貰った魔法記録の秘水晶と異世界のお金がはいった茶袋をベッドサイドの小さなテーブルに置いて、覆いかぶさるようにベッドにうつ伏せで倒れ込んだ。
「はぁ疲れた…」
今日は本当に色々なことがあったな。
異世界に勇者として転移させられて、いきなり魔獣に襲われたり、異世界の悪者に騙されそうになったり…。
でも、それ以上に大切にしたい出会いもあった。
「ガルラとアニカさんのこと、どうしようかな…」
何か良くする方法を考えなきゃならない。
ガルラは異世界で初めての友達なのだから…。
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「…今……!」
「任せ……封……」
「…この…れが……小娘…ときに……」
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ガヤガヤとした環境音で目が覚める。
どうやらうつ伏せの状態のまま寝てしまったみたいだ…。
少しボーッしながら、テーブルに置いた物を持って部屋を出る。
「おぉっ!アラタ!起きたのか!!」
ドアを開けるとガルラがいた。
「起こそうと思ってたんだぜ!!ちょうど良かったってやつだな!!」
「おはようガルラ」
「あぁ!おはようアラタ!一緒に朝食食べようぜ!」
ドアに鍵をかけた後、朝から元気いっぱいのガルラに若干引っ張られながら階段を降りる。
誰も座ってないテーブルにパンやスープなどの料理が置かれていた。
ホカホカと湯気が立っているので、出来立てなのだろう。
ガルラに促されるままに一緒の席に着いた。
「それじゃあ冷めないうちに食べようぜ!」
スプーンを持って食べようとするガルラ。
しかし、何かを思い出したかのように「あっ」と言うとスプーンを置いて手を合わせた。
「たしか…『いたらきます!』…こうだったか?」
自分が教えた食事前のあいさつをしようとするガルラ。
見様見真似な様子が面白くて、吹き出しそうになる。
「ガ…ガルラ…。『いただきます』だよ」
「あれ?そうだったか?じゃあ改めて、いただきます!」
「うん。いただきます」
和やかな雰囲気で食事を始める。
出来立てなこともあり、かなり美味しい。
料理に舌鼓を打ちながらガルラと談笑をしていると、奥からアニカさんがやってきた。
「おはようアラタ!よく眠れたかい!?」
「はい!ベッドに入ったら、いつの間にか寝てました」
「そうかい!なら良かったよ!ガルラも起こしに行ってくれてありがとね!」
「お安い御用だぜ母ちゃん!!」
ガルラとアニカさんはお互い笑い合っている。
一見仲良しで微笑ましいが、ジャックさんの話が脳裏によぎると少し気分が沈んでしまう。
「まぁ、慌てずゆっくり食べておくれよ。夜とは違って朝食はウチに泊まっている人にしかださないから、混むこともないしね」
そういえば、確かに夜と比べて人が少ない。
「あれ、サヤナさんもいないような…」
「サヤナ姉ちゃんは忙しい夜だけ手伝いに来るんだぜ」
てっきり泊まり込みで働いているものかと思っていた。
「朝くらいはゆっくりしたいからね。朝まで忙しかったら家族の時間がなくなっちまうよ。なんてねっ!」
アニカさんはガルラを見ながら腰に手を当てて笑っていた。
「さて、そろそろ厨房に戻らないとね。食べ終わった食器はカウンター横にでも置いといてくれればいいからね。それと出かけるときはくれぐれも気をつけるんだよ」
ガルラと元気よく返事を返すと、アニカさんは満足したように戻っていった。
「ハハハ。普段無茶ばかりしてるから母ちゃんに釘を差されちゃったな」
ガルラはヘラヘラと恥ずかしそうに笑った。




