40 一条帝崩御、敦成が東宮へ。賢子と双寿丸の出会い
ドラマのネタバレをしてますので、お嫌なかたは回れ右を。
私見がかなり入ってますので、それも嫌な方は回れ右を。
第四十回 君を置きて
ようやく。
「ホワイトチョコのケーキですよー」
「おお」
オイルベースのケーキだとバターベースのパウンドより重量感が少ないのも少し気になったので、ホワイトチョコ増量。なんだけど、カットしたら、刻んだチョコが焦げて茶色になっていた…。焼き時間…
「このつぶつぶは?」
カットしたケーキを見て、まさに焦げた状態のホワイトチョコを指さす。
「焼き時間が長すぎたようで焦げてしまいました。レシピ通りだと、長すぎるみたいです」
オーブンの性能の問題なのだけど、うちのオーブンだと少し短めにしたほうがよくて、でもまだ短いほうが良いらしい。
「へえ……」
飲み物はコーヒーだ。緑茶でも合うかもしれない。
「ん!」
口の中に入れて数回咀嚼したところで声を上げる。それから飲み込んで。
「ホワイトチョコの味がするな」
「そうなんですよ。そこは嬉しいな、と」
持った重さとは違い、食べた時の重さはわりとずっしりだ。焼き時間を調整したいけど、もう少しアクセントが欲しいなあ。うーん。課題課題。
「さて今回のメインは、帝……一条帝の崩御だ」
「え、おいくつくらいなんですか?」
「ええと、二十五年の在位ということだから、確か即位が六歳で、三十一、か」
「若いですね…」
「胸を押さえていたから、心臓かもしれぬな。体調がどんどん悪くなっていって、道長は占いをさせる。崩御の卦が出ていると言うのを、帝は立ち聞きする」
過去にもあったよね。初めての場面ではないから不自然ではないという…
「帝は即位を決意する。次の東宮は、敦康(あつやす)を、と願うが、行成(ゆきなり)が説得する」
「説得されちゃったんですか」
「うん、敦康には後ろ盾がない、ということを強い理由に」
敦康は道長の甥だが、敦成(あつひら)は道長の孫。この差は大きい。
「敦康はむしろほっとしている様子で、脩子(ながこ)も同意している。隆家(たかいえ)も仕方ないといった風情だが、ききょうは怒り狂っている」
「通常は、第一の皇子である敦康が次の東宮なんですよね?」
「うん、そうらしい。だが、それを曲げることが許されるほど道長の権力は強かったらしい。そして、この道長の所業に彰子(あきこ)が怒る」
……うん、まあ、そうだよね。彰子は帝の側の人間で、敦康の母替わりだったのだから。
「道長に文句を言うが、道長は、政をするのは自分だと突っぱねる」
「うーわー……」
いくらなんでも、と顔をゆがめると、梅里様は大きく頷いた。
「じっと側に控えていたまひろに、道長が去った後、何故、女は政ができないのだと漏らす」
「まひろも同じようなことを考えていましたよね」
「うん、何も言えずに黙っていた。自分も同じようなことを考えていたからこそ、何も言えなかったのだろう」
「さて、報せをうけて喜んだのが、たびたび登場していた東宮だ。道綱(みちつな)が話を聞かされてはあいまいな返事をしていた相手なのだが、ひと癖もふた癖もありそうな御仁だ」
「ええと、前回、彰子の妹が后になったという人ですよね。息子が同年代」
「そうだ。口ではよけいなことを言わぬが、うきうきとした表情は隠しきれない。帝の在位が二十五年なら、東宮として過ごした時間も同じだからな。しかも、帝よりも年上なんだ」
「……なかなか、癖の強そうな人っぽいですね…」
「道綱なんか、これで縁が切れると喜んでいる」
梅里様はそう言うが、表情がなんかアヤシイです。
「いや、だってな。譲位することを、帝から直接告げられるために参内するんだが、長居しても体調に障るからとすぐに退出するその時の態度が、今にもスキップしそうな感じなんだ。表面に出さぬようにはしているがな。そういう人物が、自分に厳しいことを言わない人間を手放すと思うか?」
きっと楽しいんだな、うん。
「あとは、少し前の盗賊が出た回、追儺(ついな)の扮装をした男か」
「あ、また出てきたんですね。藤壺の女房の衣装を剥いで盗っていった盗賊ですよね」
「盗賊と、追儺の扮装の男は別人だぞ? たぶん」
「別人だってことが分かったんですね」
「うん、うん? おそらくな」
なにやら歯切れが悪い。
「賢子(かたこ)が乙丸(おとまる)と町に買い物に来ていてな、ひったくりに合うんだ。買ったばかりの野菜を奪われて、追いかける」
「……無茶な」
「うん、無茶なんだが、さすがまひろの娘といったところか。やっと追いついたところで、人相の悪い男たちが複数出てきて、へっへっへっと笑う」
ああ、ありがちな展開。
「そこへ助けに表れたのが、追儺の扮装の男だ」
「あー、なんかその展開知ってますー」
「うん。直秀(なおひで)を髣髴とさせるよな…」
何故か梅里様は遠い目をする。
「名を双寿丸(そうじゅまる)と言う。裏表のないようなはつらつとした若者だ」
「なんか、いとさんとか、乙丸とか、昔のまひろを思い出しているような感じがします」
「アタリだ。いとは身分の卑しい若者が姫様に近づいたと言って、さっさと追い出そうとするんだが、賢子はあっけらかんと食事をしていくように声をかける。双寿丸もくったくなく食べていくことにする」
「なかなかの大物ですね…」
「まあ、為時(ためとき)がいなければ、あの家で一番偉いのは賢子だからな。誰が主人で誰が使用人か分かっているということなのだろう。単に厚かましいだけかもしれんが」
うん、厚かましいに私も一票入れたい。
「そこでバタバタしているところに、まひろが帰ってくる」
「盛沢山ですねえ」
「うん。まあ、この回はここで終わるだがな」
「あ、待て次回、なんですね」
「なかなかカオスな状態ですね…」
「食べるとそれなりの重さだが」
いつものとおりお代わりを所望されたのでカットして皿を差し出すと、フォークを横に置いて指でつまんで重さを確認する。
「軽いのは、オイルのせいですよね」
「妙にちぐはぐな感じもあるが」
指でつまんだままそのままかぶりつく。うん、そのくらいの手頃さのケーキでいいかもしれない。
「うん、うまい」
「なによりです」
横で私は緑茶をすする。私もしっかりお代わりをしたので、甘い口の中を濃いめの緑茶が洗い流すのがとても良い。うん、コーヒーよりも合うような気がする。
「ああ、緑茶に合うな」
「もう少しホワイトチョコを増やしてしっとりと焼き上げるのもいいかもしれないですね」
「なるほどなー」
返事をするが、そこはどうでも良い感じだ。もうひと切れを今度は皿ごと持ち上げ、フォークで食べる。梅里様は梅里様で何かを考えているようだ。
問題点をレシピノートに書き込んでおかなくちゃと思いながら、お茶をもうひと口飲んだ。




