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あの日凍える霊山で異世界人と出会った僕は………  作者: 青井銀貨
第2章 異世界から大都会東京へ
35/35

35話

 

 夜景の美しい高層階のホテルの一室で土門は口をぽかんと開けた。


「どうやって運ぶって、そりゃあ担いでいくしかないんじゃないの?」


「何言ってんだい。そういうことじゃなくて量のことを言っているんだよ。一生分の酒を持っていくって言ってたけど一日一瓶の酒を飲むとしたら365本、十年で3650本だよ。それだけの量はリュックサックなんかには入らないじゃないのさ。トラックにでも詰めないといけないだろ」


「あ、そういうことか。けど3人で分担すれば何とかいけないかな?」


「何自分だけ持っていくつもりでいるんだい。私は米と味噌と醤油は持っていきたいね。あんたと同じく一生分はね。私ももうすっかりこの国の味に慣れちまって一日一食は和書を食べないと落ち着かない体になってるんだ」


「米と味噌と醤油か、それも結構かさばりそうだな」


「あんたの酒よりはましさ。倫理は何を向こうの世界に持っていくつもりなんだい?金はあるから何でも好きなものを持って行っていいんだよ」


「とりあえず思いつくのはお菓子、だな」


「倫理さんお菓子好きなんだ、何だか意外だな。そういうのはあんまり食べなさそうに見えるな、体もしゅっとしてるし。なんかフランス料理とかが似合いそうな感じがする」


「フランス料理よりは駄菓子の方が好きだな、美味い棒とか」


「うわーそれを聞いて思ったんだけど美味い棒なんか最近食べてなかったな、懐かしいから俺も持って行こうかな」


「お菓子ね、重さは無いけどかさばりそうではあるね」


「思ったんだけどさ、俺お知り合いの奴らに頼むっていうのはどうかな?バイト代を払えば荷物を持つくらいはやれそうなんだけど」


「なにいってんだい、富士山の山頂まで行くんだよ。何度か登山の経験があったとしても普通の人間は自分の体を運ぶだけで精いっぱいだろうよ。それなのに大量の酒も担いで山頂まで行けるわけないだろ」


「うわっーそうかーそれは考えてなかったよ。確かに無理かもなーテレビとかで見るとものすごい大変そうなイメージあるしなー」


「逆に足手まといになったりしてね」


「そうか、それじゃあ持っていくのは全部諦めるしかないのかな」


「一番重くて嵩張るのはどう考えても酒だからとりあえず酒は諦めることにしようか」


「なんで!?」


「理由なら今言ったじゃないか」


「そうだけど俺のだけ持ってけないとなるとなんか悲しいよ」


 土門は残念そうな、それでいて諦めたような表情をする。


「しょうがないね………」


「何か策があるのか?」


 倫理が聞く。


「どうやって運ぶかは今の所何も考えは無いんだけど、知り合いに相談してみるよ」


「知り合い?」


「占い師なんて言う仕事をしていれば社会的に立場のある人間と知り合うこともあるのさ、社長、政治家、女優、アイドル………偉そうな顔してテレビに出てくるような人間も心の中は不安で溢れていて自分一人じゃ抱えきれないっていうことはよくあることなんだ。それであたしみたいなのに悩みを打ち明けたくなるのさ」


「そうなんだ、悩んでいるのは俺だけじゃないんだね」


「私たちには思いつかなくてもそういう人間を辿っていけばきっと何かいい解決策が出てくるんじゃないかっていう気がするね」


「それではこの件はレイラに頼むとするよ」


「任せておきなよ。その代わり駄目でも文句は言わないでくれよ」


「もちろん。その時は自分が持てる分だけ持っていくことにするよ、それなら酒を持って行ってもいいんでしょ?」


「それじゃあそういうことにしようか………」


「何か心配事があるのか?」


「心配事というよりもせっかくこの世界のものを向こうに持っていけるならもっと価値のあるものを持って行った方がいいんじゃないかと思ってね」


「価値のあるもの?」


「当たり前のことだけれどもこっちでいくら金があったとしても向こうでは使えない。つまり向こうに行ったってあたしたちは無一文なわけだ。どうせなら価値のあるものを持って行ってそれを売れば金に困らないで済むんじゃないかと思ってね」


「確かにな………」


「けどあんまり嵩張るものは持っていけないけら、できれば軽くてそれでいて価値のあるものがいいいから宝石とかがいいとは思うんだけど、こっちの世界で価値のある宝石が果たして向こうの世界でも同じように価値があるとは限らないと思ってね」


「なるほどーそうか、そうだよね」


 何も考えていない顔で相槌を打つ。


「そこら辺のことは相談するのも難しいんだよね、まず向こうの世界のことを全く知らない人間に相談しても意味がない気がするしね」


「そうだよね、俺なんか全然何も思いつかなかったもん」


「土門、あんたの答えは最初から期待していないよ」


「うーわひっど!さっきのお土産を持っていくっていうアイディアは俺のやつなんだよ、もう忘れちゃったのかよ、ひどいよ俺だって役に立ってるのにさ」


「わかった、謝るからそんなにむくれないでおくれよ」


「俺にだっていいアイディアは思いつくんだよ。例えば………ベッドだろ、それから羽毛布団なんていいんじゃないの、後は水、紅茶、カーテン、フルーツの盛り合わせ………」


「この部屋の中にあるものを言っているだけじゃないのさ」


「枕、テーブル、椅子、シャンデリア、ライト、花、テレビ、コップ、皿、クッション、時計、観葉植物………」


「わかったわかった、もういいからそんなに意地にならないでおくれよ」


「時計か………」


 倫理が呟いた。




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