14話
「ここは街の入り口だな」
アーサーが騒動の中心地を知ることはそこまで大変なことではなかった。街の中での急激な爆発音のその正体を探ろうと近づくにつれて人が群がっていたからだ。
「離れていろ!この宿舎に近づくんじゃない、危険だぞ!」
そんな人々を制服を着た兵士たちが高圧的な声でそれより先に侵入することを制している。アーサーは感じる。この兵士には多少の苛つきはあるがそこまで感情的になっているわけではない。
つまりあの高圧的な態度は任された仕事を全うするために必要な演技というわけだ。そうでもしなければ興味津々の人々を少ない人数で制することは出来ないだろう。
「ここからでも濃密な魔力の臭いを感じます」
ヘルエイムが注意を促すように言ったが、アーサーにとってそんなことは百も承知だった。神の力の欠片と言われる魔法、またはスキルと呼ばれるものは使えば必ず独特のにおいを発する。時間が経てば消えてしまうし距離が離れれば感じ取れなくなるが、いま間違いなく感じ取れる。
「かなりの使い手のようだな」
笑っている自分に気が付いて笑う。やはり自分と言う人間はどうしようもなく戦いが、騒動が好きなのだと実感する。王と言うもっとも動き回ってはいけない立場にして、動き回るのが好きな性分の不一致が面白い。
「おい何をしている近づくな!」
その中心へ踏み出すとすぐに兵士に強い口調で呼び止められた。まあ当然そうなるだろうと分かっていたので腹も立たない。
「君、ちょっといいか」
相棒のように横にピタリと寄り添っているヘルエイムがその兵士に向かって声を出す。それほど大きくもないが存在感のある声だがどこか圧力を感じる声、人の上に立つ立場であることが分かる。それを感じ取ったらしい兵士も怪訝な顔をしながら近づいてくる。
「我々はこういうものだ」
ヘルエイムは取り出した深い赤色をしたプレートを提示する。
「これは………」
兵士の顔色が変わる。
「我々は国王直結特級調査員だ」
国王直結特級調査員とはあらゆる組織から独立して王の命令によってのみ動く役職。主な役割としては王都から離れた地方において、その地を治める貴族や領主たちが適切な自治をしているかを調査することだ。
そういった者たちは王から与えられた権力を自分のものであるかのように勘違いして横暴に振舞うことが多々あるから、人々がそういった悪しき権力者たちの犠牲にならないように抜き打ちで調査して回るのだ。
「魔力使用による爆発音を確認した。調査させてもらう」
淡々と言い切った。国王直結特級調査員は王以外の誰にも許可を得る必要は無いのだ。必要だと思ったことを直ちに調査する権限を持つ。
「わ、わかりました。どうぞ」
若い兵士はあっさりと先へ進むことを認めた。多少の問答はあるかもしれないと予想していたのだが思いのほか簡単だった。恐らくはこの街を守る兵士たちは組織として優秀なのだろうとアーサーは考える。
国王直結特級調査員が身分を示して行動するということは年に何度もあることではない。それなのに何をするべきなのかをしっかり弁えていた。リーダーが普段からしっかりと教育をしているに違いない。興味深そうにこちらを見てヒソヒソ話をする人々の視線をその背に浴びながらアーサーは騒動の中心へ向けて進んだ。
進むにつれてにおいが強くなる。
倒壊した兵舎。
「間違いないあいつだ」
その真ん中にひときわ目を引く一人の男が立っていた。
アーサーは走り出していた。




