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凶兆  作者: 黒駒臣
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・グロ、残酷描写、後半に災害描写あり閲覧注意

          

  

  

 台風が接近しているわけでもないのに、外では何日も降りやまない雨が激しい音を立てている。

 だが、蓮仙寺住職、西方蓮生(にしかたはすお)の耳には微かな雨音しか届かない。

 今西方のいる場所は庫裡の一番奥にある、防音を施した隠し部屋のソファの上だからだ。

 その部屋には大画面のテレビにBDプレーヤー、パソコンや最新のゲーム機にVRゴーグルまで置かれてある。

 壁面に設置した棚には美少女アニメのBDやゲームのソフトがびっちりと並べられ、きわどいポーズの幼女や少女を模したフィギュアも所狭しと飾られていた。

 それらを鑑賞している時が西方の最も至福の時であったが、もちろん檀家衆に知られては一大事で、父親の先代住職が存命中はその性癖を隠すことにも必死だった。

 五十歳をとうに過ぎているのに妻帯していない大きな理由はそれだ。

 一応理性が保たれているのは、住職の立場を考えてということもあるが、この趣味部屋があるおかげだと西方は思っている。

 部屋の存在に罪悪感を覚える時もあるが、もしなければ、人としてやってはいけないことをしでかしていた可能性を考え、やはり造って正解だったと自分を納得させていた。

 遠く電話の呼び出し音が鳴っているのに気づいて、西方は尻を上げた。急いで趣味部屋を出ると壁に似せた扉を閉め、埋め込み型の隠し鍵を掛けて電話のある居間まで廊下を走った。

「もしもし、蓮仙寺です」

「もしもし――」

 小さくて聞き取りにくいが、大倉善太郎の声だった。ひどく震えていて、息も荒い。

「ああ大倉はんかいな。法要のことでなんど用でもあるんか? 十日後やったなぁ」

「今す――法――せんと――ん」

「え? なんて? 声小そうて聞こえん」

「今すぐ法要――鎮めんとえらいことに――」

 さっきより強められた声にいくらか聞き取り易くなったが、わけがわからない。

「大倉はん? なに? 今すぐてどういうことや――」

 善太郎からの返事はないが、荒い息遣いだけ聞こえてくる。その向こうで孫の圭吾だろうか、子供の笑い声が重なっていた。

 その笑い声が近く大きく聞こえたと同時に、

「じ、住職っ、法要やっ、法要してくれっ、はよっ、はよせなあかんっ」

 いきなり善太郎が大声で叫び出し、その後ぎゃあという悲鳴が聞こえて電話が切れた。

 こりゃ、えらいことや、なんか知らんがえらいことになってる――

 西方は受話器を置くと急いで居間を出て本堂に向かった。鎮魂法要に使用する袈裟や数珠などの必要な道具類をすでにまとめて本堂に保管していた。

 庫裡と本堂を繋ぐ渡り廊下に下り、沓脱石に置いた草履を履く。屋根があるにもかかわらず雨が降り込み、石畳の廊下には流れができるほどの雨水が溜まり足元を濡らしたが構っている余裕はない。びちゃびちゃと水を()ね飛ばしながら本堂に向かっていると中庭のヤツデの陰に少女が二人立っていることに気づいて西方は足を止めた。

 大雨の中で二人とも真っ裸だった。自分たちより背の高いヤツデに向かってうつむき、白い尻を見せている。

 善太郎の電話と今のこの状態も含め、村に異常事態が起きていることは頭で理解できていた。できてはいたが、西方は二つ並んだ尻を見てくらくらと歓喜の眩暈を起こした。

 二人が身体ごとゆっくり振り返る。

 邦子と多恵だった。二人を見かける度に妄想を膨らませていたその実物が手の届きそうなところにある。

 二人の身体を上から下までじっくり眺めた後、生唾を飲み込んだ西方は、それでも自分の立場を思い出し、

「な、なにしてんのや、そんな恰好で――風邪ひくかい、はよ家帰り」

 と注意した。だが、二人の胸の小さな膨らみから視線を外すことができない。

 邪まな心を見透かしたように邦子と多恵はにたにたと嗤いながら一歩一歩近づいてくる。

「あかん。こっち来たらあかん――親に迎えに来るよう電話するよってそこで待っとり。今すぐ電話するよって――」

 そう言いながらも、まったく足を動かせずにいるうちに二人に囲まれた。

「あかんあかんあかんあかん――」

 読経するようにつぶやき続けるも、押し付けられる身体の柔らかさに、とうとう西方は二人の裸に手を伸ばした。


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