2話-④ 本当の絶望
どぅぉぉぉぉっっ!!
こんな変な声を出しながら、走っている薄汚れた少年は俺である。
どうして変な声が出るかって? そりゃバカでかい猪に追い掛けられたら出るだろう。
どうして走っているかって? 追い掛けて来てるから逃げるだろ。
どうして薄汚れてるかって? 必死なんだよ。
「やばいやばい!! マジでやばい!」
俺がこんなに慌てて逃げるにはきちんと理由がある。
まだ俺が10歳になった頃の話、家は基本的に農業を村でしていたんだが、山に入って獣を狩る連中もいたんだ。
そこの頭領、つまりは狩人の中のボスが、子供達が山に入る時に注意しないと行けない動物を教えてくれた。
まずは熊だ、熊は基本的に臆病であるが、絶対に逃げちゃいけない、ゆっくり、目を逸らさずその場から立ち去らないと行けないらしい、もし万が一誰かが喰われでもしたら、味を覚えた熊が他の連中まで襲うからだ。
そしてつぎは蛇だ、蛇にも毒を持ったのがいると、最悪死ぬからだ、だから見つけても慌てず、慎重に逃げなければいけない。
そして猪と言えば、とにかく高い所に逃げる。
基本的に動く物に敏感ですぐさま襲って来るからだ。
だが、何かに登ったりするのが苦手な猪は高い所に逃げればまず問題無いらしい。
少し話が脱線してしまったようだが、もしも読者の皆様が森に行く際は頭の片隅にでも入れて置いて欲しい。
そして話はナウス視点に戻る。
高い所って、あいつが登れ無さそうな所なんて無いんですけど?!
というか、全ての障害物をなぎ倒す事が出来る猪なのに、高い所に逃げるだけで何とかなる物なのか?!
だが、逆に言うと有難いことでもあった。
全ての障害物を薙ぎ倒す中でデカい猪は確実にスピードが衰えている。
そのお陰で何とか俺も逃げ続ける事が出来ているんだ。
それに明らかに、猪の息が荒れていて、確実に疲れている事が感じられる。
(よし、このまま逃げ続けて疲れさせてやる……)
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一体どれくらい走ってるんだ? もういい加減疲れ果ててくれてもいいだろ?
木々の隙間からこぼれる光が確実に少なくなり、橙色に変わり始めていた。
ガッッ
俺はつま先に何か引っかかる感触と共に地面を思いっきり滑り転げていた。
っっっァァァ?!?!
……最悪だ。
詰んだと言っても過言では無い。
俺がすっ転んだ様子に驚いたのか、猪はさっきまでの勢いを落として、様子を伺う様に近寄ってくる。
猪が今までなぎ倒すのに使っていた牙は、俺を追い掛ける時に色々な物をなぎ倒したお陰が鋭く、白く輝いている。
ここまでか……
そう思っていた時。
俺はエイミーの事を思い出していた。
(また会いたいな)
ん、待てよ。 俺が復活したって事はエイミー達の事も出来るんじゃ無いか?
いや、もしそうなら何故俺だけなんだ?
だけど、頼んでみる価値はありそうだな。
そうと決まれば後は……
ブォォッ
この猪をどうするかって事だな。
一か八かやってみるか。
昔、俺は頭領のおっちゃんに聞いた事があったんだ。
もし、万が一森で猪に出くわした時、もし逃げる場所が無い平地ならって……
うぉぉぉっっっ!!!!
俺は全身全霊を込めて、猪に一撃を放った。
まさにこの攻撃は俺の希望でもあり、同時に絶望にもなり得る一撃である。
そして、俺は賭けにかったのだ。
ドドッスッン。
鈍い土音と共に地面に伏せたのは猪であった。
猪の弱点は鼻である。
これは人間にも言える事ではあるが、それでも猪には効果てきめんであった。
「ほほぉ、エリュマントスの猪を拳で倒すとは中々やるのぉ」
「え、エリーゼ!?」
「せめて、様を付けないか、馬鹿者」
半日ぶりの再開ではあったが、俺に取っては長い1日に感じていた。
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次回更新は10月11日19時15分頃!
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