9話-② 奴隷吸血鬼
俺が次に目を覚ました時には、既に明るい時間帯だった。
陽の光を、直接見た訳ではないが、外の蝋燭の明かりが消えているのに、微かに明るい。
つまりは、蝋燭の明かりが要らない時間帯になったのだ。
だが、それでも部屋は薄暗い。
(昨日の怪我は治ったな)
俺は、拘束されている両手の指を動かし感覚を確かめる。
逃げよう。とにかくここから逃げよう。
昨日みたいな目に合うのは御免だ。
ティムも助けないと行けないのに、ここに居ては一向に進展しない。
となれば、俺がとる行動はただ一つだ。
力ずくで、この枷をぶち破る事だ。
俺は後ろで、組まされている手に最大限に力を入れて、引きちぎる事を試みる。
思いっきり、引っ張ったり、捻ったりと。
だが、俺が手こずっている間に、コツンコツンと、甲高い足音が聞こえたで、破るのを一旦止めた。
足音は、またしても俺の部屋の前でとまり、物音と共に、扉が開いた。
現れたのは、メイドだった。
「朝食をお持ちしました」
飯だと? 一体何の冗談なんだ。
「おい、アンタ。 俺をここから逃がしてくれ」
俺の必死な懇願に、メイドは入った時と同じように、凛とした表情で否定する。
「無理です。 逃がせばアイゼス様に、私が殺されます」
あの糞デブが!! まぁ、分かっていた事だ。
俺を逃がせば、もちろん逃がした奴に罰が下る、だが、殺すなんてあんまりだろう。
そう言うと、メイドは持って来た飯のうち、まずスープを匙ですくい、俺の口に運ぶ。
幸いにも、アイギスとかいうデブは、伯爵公と言うだけあって、食ってる飯が上手い。
だから、あんなに太るんだよ。
「その手枷は貴方では壊せませんよ。 その手枷は別の貴族様が捉えた凶暴な魔物ですら、捉える事が出来る特注品らしいですから」
そう言うメイドの視線は、俺の手元を見ていた。
あぁ、そういう事か、意外にも俺は目立つ抵抗をしていた様で、手枷に滴る血液を感じとることができた、
「怪我は治るのですよね? そのままにしておくと、アイギス様に酷い罰を与えられますよ」
その後、飯を全て食べ終わったのを確認すると、メイドは、入ってきた時と変わらず、凛とした、佇まいのまま、部屋を後にした。
メイドの足音が聞こえ無くなった俺は、逃げ出す為に、枷を引きちぎろうとする。
だが、背を向け壁に叩き付けようともビクともしない、手枷はメイドが言った通りかなり頑丈だった。
参ったなこりゃ、手枷が外れないのは予想外だった。
もちろん、外れない可能性は考慮していたが、俺の今の力が、あればいずれ壊れると思っていた。
だが、それもまるで不可能な現実を実感した。叩きつけようが何を使用が、傷一つ着いている形跡が無い。
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