8話-② 消えた吸血鬼
「ねぇ、ねぇってば」
誰かが俺を呼んでいる?
身体を優しく揺すられるのは久しぶりだ。
心地の良い揺れに思わずまた寝てしまいそうだ。
だが、俺の気持ちとは裏腹に、この快感をもっと感じたいと思う俺の脳は覚醒していく。
木陰で寝ていたはずだが、時間が経つのが早く今では、俺を守る日陰がなくなっており、俺を揺すっている人が逆行で姿が見えない。
「目が覚めた? ここ熱くない?」
目が段々と慣れて相手の顔がハッキリ見えた。
髪は黒髪で、胸元にアーマープレートをつけた、穏やかそうな女性だった。
「貴方は誰?」
ぼんやりする意識の中、俺は女性に尋ねた。
「私? 私はこの街の冒険者だよ!」
冒険者、噂では聞いた事があったが、こう話すのは初めてだ。
「ねぇ、君はここで何をしているの?」
不思議そうに俺を見る女性は、俺に尋ねた。
「あぁ、俺は…… 人を待っているんだ」
まだ、覚醒仕切っていないのか、呂律が上手く回らない俺は、歯切れ悪く答える。
「そうなんだ! 良かったよ! ここで行き倒れているかと心配してたの」
まぁ、こんな森の端で誰か倒れていたら、誰だって心配するよな。
現に俺も、以前、師匠が倒れていた時に助けたな。
「お姉さんは今から街に入るけど、その誰はすぐくるの?」
どうだろうな。 俺としても早く来て欲しいとこだが、一向に来る気配が無い。
むしろ、あの時後を追えば良かったと、今更になって後悔している。
「もし良かったら、ジュース位なら奢ってあげるよ?」
「いや、俺は多分…… 街には入れないんだ」
「どうして?」
一瞬、魔族だからと素直に答えそうになったが、その事を押し殺し、俺は避難民だからだと答えた。
一般的に言えば、避難民などに自ら率先して関わりたいとは思わないだろう。
宛があるならともかく、宛もなくどうする事も出来ない赤の他人にどうこうするのは大変な事ぐらい俺でもわかる。
だが、彼女は違ったようだ。
「じゃあ、宛が見つかるまでお姉さんが面倒見てあげるね」
え……
「とりあえず、ここは暑いから街に入ろ?」
「い、いや俺は認証書持ってないけど」
「大丈夫だよ! 避難民って言っても君だけじゃなくて他にも何人か居るんだけど、身元保証人が入れば街に入れるからね」
そうだったのか、知らなかった。
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