8話-① 消えた吸血鬼
ここは一体何処だ?
真っ暗な中、地面が揺れている。
ヴァンパイアになってから、夜目が効く様になった俺は周囲を確認する。
手足がかなり痛むが、これは治癒で直ぐにでも治るだろう。
であれば、この違和感の正体は……
なるほど、手足が拘束されているのか、だが今の俺なら何とか出来そうだな。
と言うより、何故こうなったのかが一番の疑問だーー
師匠は結局の所帰って来る事は無かった。
だが、そうだとしても、俺はこの里を去らねばならない立場だ。
だから、せめてでもの願いとして、師匠に対しての置き手紙をさせてもらった。
内容は、エルフの里から行けると言う、北の町に向かっていると言う内容だ。
もちろん、里に居れなくなった事もきちんとかいた。
何処かで追い抜かされる事もあるかと思い、俺は寝ずに歩続けた。
その間も出来る限りに、頭上を確認しながらだ。
そんな事をしているうちに、あっという間に街に着いてしまった。
(さてと、どうするか)
元人間である俺は検問に引っかかる事は無くすんなり街に入れるだろうが、だが師匠はどうなのだろう?
日光には弱く、あの赤い瞳を持つ彼女はすんなり街に入れるのだろうか?
吸血鬼によく似た亜人が居れば問題無いだろうが、そんなに上手く行くとも思えない。
であれば、俺は中に入らずにここで待っているのが正解なのだろう。
そう思った俺は、街から少し離れた場所で、師匠の帰りを待つ事を決めた。
まだ日中という事もあり、街への往来はおおかった。
吸血鬼の目を使う事で、人間だった頃より、遥かに視力が良くなっていた。
行商人の様な格好の人間に、フルプレートの冒険者の様な人々まで、割とハッキリ見る事が出来た。
そして、唯一見慣れた姿だったのが、旅人だ。
だが、検問の前で旅人だけが、様子がおかしい。
検問を通過する事が出来ず追い出されていた。
俺が今後街に入る際に追い出されては困る。
そう思った俺は旅人に話し掛けに行ったーー
「あの、どうして街に入れないんですか?」
「はは、なんだい急に…… そりゃ、俺はアレを持って居ないからだよ」
アレと言ったが、俺には何の事かさっぱり分からなかった。
「あ、あの。 アレって何ですか?」
「そりゃ、認証書の事だよ。 君も持っているだろ? 俺の住んで居た街が、焼け落ちた時に無くしちまって、再発行するまで入れないだよ」
認証書…… とはなんだ? 聞いた事が無い。
つまりは、俺も街に入れ無いんじゃないか?!
色々聞きたい事はあったが、疲れきった旅人の顔を見るからに、これ以上話掛けてはいけない気がした。
というか、本当にどうする?
師匠はそもそも、どうやって入るつもりだったんだ?
確か空から飛んでとか言っていたような?
と、俺は街の城門を見上げた。
俺の十倍位の大きさもある壁は、ハーフヴァンパイアの俺では、超える事が出来ない壁だ。
マジで脳がパンクしそうだ……
この数日で色々な事があり過ぎた俺は、ひとまず、木陰で休む事にした。
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