*フェリス・マルカティス
僕はお姉様が好きだ。
滅多に笑わないけど僕の名前を呼ぶ声が雰囲気が柔らかくて優しくて大好きだ。だからもっと僕の名前を呼んでお姉様ーーー
僕はある程度、裕福な家庭に生まれた。お母様は僕を産んで死んでしまったけどお父様は僕が寂しく無いようにと僕をとても愛してくれた。
僕は幸せだった。
だけど僕が8歳の時にその幸せは崩れ去った。お父様が事故で死んでしまって、でも不幸はそれだけじゃなかった。父の親戚を名乗る奴らが僕から全てを奪っていった。住んでいた家を、父が残した物を何もかもを奪った。唯一残ったのは父の指輪だけだった。
憎かった、でも幼い僕にはどうする事も出来なかった。
僕は住む所を奪われ孤児院に追いやられた。そこには僕の様な親を亡くした者、親に捨てられた者が居た。そこは裕福とは呼べなかったけど孤児院の皆は優しかったでも愛してはくれなかった。
僕は知ってしまった、知りたくもなかった人の醜さを汚い感情を人は綺麗なだけじゃ無いことを。
孤児院に居たのは一月にも満たない短い期間だったけど僕にとっては何年にも長く感じた。
ある日僕は院長に呼び出された。僕が応接室に行くとそこには院長と一目見ただけで貴族だと分かる身なりの良い男が居た。
(...貴族が僕に何の用だろう)
そんな思いが顔に出ていたのだろう
「ああ、いきなりですまない。私はユリウス・マルカティスだ、君がフェリス君だね...ヴィートによく似ている」
亡くなった父の名前を告げられ驚く。
「...どうして父の名前を...」
どうして父の名前を知っているのだろう。自分はこの男を知らない。父の知り合いだったのだろうか。
「私は君の父とは友人だった。君の事もある程度知っている...何があったのかも、気付くのが遅くなってすまない」
この人は僕に何があったのかも全て知っている。でも、それでも僕に何の用があるというのだろうか。
「それでだな用と言うのは、フェリス君...家に来ないか?」
その言葉に目を見張る。
「それに...友の忘れ形見をこのままにしておけない」
「だからもう一度言う、家においで」
...この人は手を差し述べてくれるのか、誰も助けてくれなかったのにこの人は、だったら僕はーーー
「...はい」
この人の手を取ってみようと思う。
ユリウスさんは忙しい人らしく、幸い僕には父の形見の指輪しか無かったから準備は必要が無かった。僕は孤児院の皆に別れを告げユリウスさんの屋敷に連れて行かれた。馬車の中でユリウスさんには娘さんがいる事を知った。そしてユリウスさんが公爵家当主という事を知って驚いた。
「私はプリシアよ」
ユリウスさんの娘さん、プリシアさんは僕より二つ歳上ですっごく可愛いくて人形みたいな人だった。プリシアさんは近寄り難い雰囲気だけどその雰囲気は柔らかかった。
「お姉ちゃんと呼んでちょうだい」
プリシアさんはそう言って微笑んだ。
その姿は今まで見た何よりも綺麗だと思った。
ーー僕はプリシアさんの、お姉様の傍に居たいと心から思った。
もしもプリシアがフェリスの事をいじめてたらフェリスは病んでいました。