16.献身
セオルが指さした箇所には、私以外の魔力の跡が記録されているらしい。
『つまり、誰かが私に魔法を使ったってこと?』
「うん。それも、ただ魔法を受けただけじゃない。内部に干渉する魔法を使われている」
『内部干渉?』
「そう。体内や精神に直接作用する魔法だよ。普通に攻撃魔法を受けても、こんな痕跡は残らないからね」
『えっと……』
「例えば治癒とか、魔力譲渡とか、洗脳とか」
『あー、なるほど』
ふわっとイメージを掴めたので、それ以上の説明は求めないことにした。
だって多分、また難しい話になっちゃうし。
それに、今はほかに気になっていることがある。
『一般人は存在も知らないレアアイテムでしょ?それを私に使ってよかったの?』
私の素朴な疑問に、セオルは「あ~」と気の抜けた声を漏らしながら視線をそらした。
反応が怪しい。
まさかーー
『え、無許可とか言わないよね?罰せられたりしないよね?』
「いや、大丈夫。長官から許可もぎ取ったから」
『ほんと?でも変な反応してた』
「えっと……お願いしたら断られた」
『は?じゃあ』
「から、それなら魔法省やめますって言った。スクロールは自作できるし、使った証拠なんていくらでも隠滅できるし。そしたら、渋い顔して許可された」
許可って、ただの脅しじゃないか。
面識のないセオルの上司に同情しつつ、頭を抱える。
「ただ、人前では使うなって条件出された」
『あぁ、だから部屋にあなたしかいないのね』
「うん。二人きりでうれしい」
会話がかみ合っていない気がするが、突っ込んだら負けな気がするのでスルーしよう。
でも、私にこうして説明しているのは、人前では使わないっていうルールを破ったことにならないのかな。
ふと疑問が浮かんだが、スクロールを見るのは楽しかったので触れないことにした。
「これで魔法による肉体干渉の可能性は高まったね」
『痕跡があるなら確定じゃないの?』
「うん。実際にどんな魔法が使われたかは、これではわからないんだ。だから直接的な因果関係は証明できない」
『ふうん……って、ちょっと!!何してるのよ?!』
そういうものかと納得している私をよそに、セオルが私の布団をまくり上げる。
そしてあろうことか、肩と膝裏に腕を回して抱き上げた。
『降ろして!今すぐ降ろしなさい!!』
「えぇ?でも」
『でも何?!とにかく降ろして!!』
触れられない身体をすり抜けつつも、何度も拳を振り回していると、セオルは不服そうに私をベッドに横たえた。
そのまま布団をかぶせてもらい、深いため息をつく。
『……で?なんで急に持ち上げたのよ?』
「家に連れて帰ろうかなって」
『はぁ?!』
「だって詳しく調べるには時間が必要だし、3ヶ月も会えなかったんだからアメリアを補給してたいし」
悪びれもせずにそんなことを言うセオルに、私はプルプルと拳を震わせた。
補給ってなんだ、補給って!
『絶対やだ!』
「えぇ~……なんで?隅々まで丁寧にお世話するよ?」
『そういうとこが嫌なの!』
「えぇ~~?」
『隅々って。もう!もう!!』
当たらないと知りつつも、何度も拳を振り上げる。
なんかまぐれで一発くらい当たらないものだろうか。
『デリカシーどこにやったのよ!バカ!!自分が逆の立場ならどう思うか考えてみなさいよ!!』
「えっ………」
『それでなんで頬染めるのよ!変態!!!』
「いや、アメリアにそんな重労働はさせられないけど、献身的にお世話してもらえると思うと、それはそれで」
『……お願いだから羞恥心を持って。あと、それ以上言ったら許さないから』
恨みがましい目つきで睨みつけると、降参とでも言うように両手をあげた。
でも心底幸せそうな顔をしているのが、意味わからなくて怖い。




