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100/112

100.再び不穏

 セオルに部屋まで連れて行ってもらった私は、そのまま身体の上に下ろしてもらって、肉体に戻った。

 夢のせいか、魔力の使い過ぎか、そのまま眠りに落ち、目が覚めたときには空はうっすら白んでいた。


 すっきりとした目覚めだ。

 千里眼で身体を抜け出して、ぐぐっと伸びをする。


『今日は、空気が冷たいなぁ』


 窓をすり抜け、バルコニーに立つ。

 するりと頬を撫でる風のひんやりとした感触に、思わず肩をすくめる。


 まだ朝も早いから、屋敷内は静かだ。

 

『あれ』


 裏庭の方へ、メイドが駆けていくのが見えた。

 首を忙しなく動かして、あたりを警戒しているみたいだ。


 栗毛色の髪がふわふわと揺れている。

 小柄な体をより小さくするように背中を丸めている姿は、まるで小動物のようだ。 

 屋敷内に、栗毛色の髪の小柄なメイドは一人しかいない。


『ロザリー……こんな時間にどこへ?』


 セオルを起こしに行こうかとも思ったけれど、この時間だとまだ眠っているだろう。

 何かあれば、すぐに助けを呼べばいい。

 そう判断して、私はバルコニーの手すりをすり抜け、ふわりと地面へ降り立った。


 裏庭を抜けると、その先には裏門がある。

 ロザリーがレイドと密会していた、あの裏門。


 確か、お父様が屋敷の警備強化を理由に、レイドが一人で職務に当たらないよう手配すると話していた。

 それならば、今裏門に行っても、ロザリーとレイドが内緒話をすることは叶わないはずだ。


 ロザリーは想像した通り、裏門へ張り付くように立っていた。

 門からひょこっと顔だけすり抜け、会話の主を確認する。


『……レイドじゃん~~』


 しかし、以前と違い、レイドの隣にはもう一人騎士の姿があった。

 しかしロザリーもレイドも、彼のことは気にせず会話を続けている。


「神殿には?」

「明日行ってくる」

「お願いね」

「なぁ……もっと、いいやり方があるんじゃないのか?こんな方法」

「もう引き返せないわ」


 また不穏な会話をしている。

 ロザリーは眉を寄せて、苦々しそうに吐き捨てた。


「私だって、こんなことしたくはない。でも、仕方ないじゃない」


 ロザリーの目尻には、うっすらと涙が滲んでいた。

 誰かに脅されているのだろうか。

 その誰かを突き止めてとっちめてやれば、悪いことから手を引いてくれる?


 それにしても、以前はあまり冷静に話を聞いていなかったが、ロザリーよりもレイドの方が消極的な姿勢だ。

 逆に言えば、ロザリーの方が覚悟が決まりすぎている気がする。

 若さゆえに突っ走っているのかもしれないが、レイドの方がずいぶんと年上なのにと思わずにはいられない。


「お前らも大変だなぁ」


 呑気な声で言ったのは、もう一人の騎士だった。


「でもさ、ま、いざとなったら俺らみんな協力すっから。とくに団長なんて張り切ってんぞ」

「あぁ、恩に着る」

「そのときは、よろしくお願いします」


 ……は?

 俺らみんな?とくに団長?


 騎士が話を聞いても無反応なのが不思議だったけど、共犯ということなら納得だ。

 でも、違和感がある。

 少人数ではあるけれど、我が家の騎士団を篭絡することなど、容易にできるだろうか?

 団長はお父様の乳兄弟で、何十年もともに過ごし、信頼も厚い。

 そんな人が、平気な顔をしてお父様を裏切り、その娘に呪いをかけた人間と結託するとは考えにくい。


『もしかして……何か思い違いがある、とか?』


 なんにせよ、このまま放置できることじゃない。

 足早にロザリーが屋敷に戻っていったのを確認して、私も自室へ戻ろうと踵を返す。

 そのとき、騎士の一人がぽつりと呟いた。


「神殿ってのも、恐ろしいもんだよな」

「あぁ……そうだな」


 レイドが肯定する。

 話がまだ続くのかと思ってその場にしばらく立ち尽くしていたが、結局会話はそこで終わってしまった。

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