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ドルクの追放を仔細なく終えると、ネモアとライシャは二人で語らっていた。
「ライシャさん。結局、これでよかったんですか?」
「次善ってところだね。リンクスは惜しかったが、抜け道には代えられないよ。ネモア、あんたから見ればあんな風に魔族を毛嫌いする奴は滑稽だろう?」
「そうですねー。私らの国とは普通に交易してますし。二十年前のことはともかく大昔の戦争のことを未だに引きずってるのこの国ぐらいじゃないですか?」
「理由についてはわかるだろう?」
「どうせ例の建国神話ですよね?」
「そうだね。徹底的に嫌うように教育されてるのさ。向こうだってそれは同じだろうけどね。それに知られちゃまずい真実ってものがあるんだよ」
「何ですそれ?」
可愛らしく首を傾げる。その仕草は演技なのか素なのか。
「実はこの国で魔族って呼ばれてる連中は肌や目の色のせいで昔この国から追放された人間の子孫……らしいよ」
「あー……それは言いづらいですねえ。まさか追放された人間が勢力を拡大して自分とこの国以外にも攻め込んだら、責任問題くらいじゃ済まないですよねえ。でも何でそんなことを知ってるんですか?」
「魔族の国じゃ普通に知られてることだよ。向こうの建国神話さ。南から追放されて北の大地に辿り着いたってね。いつか必ず戻ってみせるってね」
「……どこもかしこも似たようなもんですねえ」
この国では魔族の侵攻によって新たに国が興ったという建国神話に今でも縛られている。北の魔族の国では追放された国を取り戻すという過去から南の国を憎んでいる。
どう違うというのか。
「とはいえ最近は少し様子が変わってきているね。どうもこの国が他種族と不仲になっているのは連中が何らかの工作を行っているみたいだね」
「……それ、大丈夫なんですか?」
「よくはないね。ただ、結果的にこの国も他の国と協調していくように舵を切っているからね。上手くいけばそう大きな問題にはならないが、それさえも妨害されればこの国は本当に不味いことになるね」
「あちゃー。何にせよあのダンジョンの抜け道はまだ必要だってことですね」
「そういうことだね。結合しないはずの遠隔地のダンジョン同士が結合したことで生まれた魔族領とこの国を繋げる抜け道。色んなものをここから向こうに運ぶためには必要さ」
この国に潜入していた魔族は捕まっても口を割らなかったし、恐らくは抜け道を発見したと思しき新米も始末してくれた。あえて山に逃げたのは抜け道の存在を隠しておきたいからだろう。
つまり魔族側もあれを重要視しているということだ。
「ところで、抜け道って他には誰が知っているんですか?」
「さあね。少なくともお偉い方はだいたい知っているんじゃないかね」




