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ネモアとの会話を終えてライシャは一息ついていた。椅子に深く腰掛け、薬草パイプの紫煙をくゆらせる。数か月前に負った傷が痛んだがこれでもずいぶんよくなった方だ。
(やはりあの娘は筋がいい)
ネモアとの会話を思い出す。演技や変装の腕だけではない。もちろん<転移>という強力極まりないスキルを持っているだけでもない。追放屋として必要なものを持っている。
例えば一見ライシャを慕っているように見えるが、いや恐らくそれは事実だろうが、その実出し抜いてやろうという気概もある。根本的に屈折しているようだ。それもまた資質の一つ。まっすぐな人間には追放屋は務まらない。
だがまだ足りない。
例えば何故依頼人が一人だと思い込んだのか。
今回の依頼はいい仕事だといった。良い追放とは明らかな悪役以外誰にとっても利益がなくてはならない。
アルは新しい仲間を見つけることができた。ついでにおバカな兄貴を捕まえ、優秀なユッカを相応しいリーダーの下につかせることができた。
セクトは自分では持て余し、足手まといに貶めていることにさえ気づかなかった仲間と別れることができた。今回得てしまった悪名に釣り合うかどうかは本人次第だ。
サフィは愛しい人間を独占できた。一番傷を負っていないのは彼女だろう。
なら――ナナは?
数日後、サフォルの町にあるギルドに問い合わせるとこう返答がきた。ナナは新しいパーティーに加わったと。
パーティーメンバーが負債を抱えた時。予想よりも使えなかった時。逆にその能力をねたんだ時。追放を望む動機は色々あるが、追放の理由としてもっとも多く依頼人が挙げる理由はパーティーメンバーとの性格の不一致である。
依然、追放屋への依頼が止むことはない。




