第48話 やっと見つけた
桂からのTOINが届いていた。
TOIN 桂
『この間の橘先輩が朝まで残業した時に橘先輩に毛布かけて、仕事を手伝った人は桃井ちゃんではなく笹野課長らしいっすよ! 笹野課長が桃井ちゃんに代わりにやったことにしてくれって頼んだらしいっす。色々フォローしたんすから今度奢ってくださいよ』
TOIN 橘
『えっ? そうなの? わかったわかった。今度奢るよ! 』
桂のが稼いでいるくせにすぐ奢ってもらいたがるんだな。困った後輩だ。まあ悪い気はしないが。
笹野さんが、代わりに?
あんなに褒めていたのに自作自演じゃないか。
何で僕の仕事を笹野さんが?
毛布までかけて?
《小豆沢蔵子という人はおまえさんのことが好きだったんですよ! そして、今も想い続けているんです! 》
ふと、西園寺さんが言っていたことを思い出した。
やっぱり笹野さんは僕の事をずっと想っていてくれてたのかな。
「あーあ。権蔵みたいにチート能力が使えれば悩まずに済むのにな」
僕はなにげなく呟いた。
「何を言っておる。権太は魔法が使えるのじゃろう? 」
権蔵は悪意の笑顔で言ってきた。
「えっ? 僕は普通のサラリーマンだよ? スーパーマンじゃないぞ」
僕も実はチート能力使えるのかなあ?
「最近では30歳まで女性を知らないと魔法使いになれるらしいのう」
権蔵! どこでそんなことを……。
「それ、意味分かってるのか? なんで僕30までチェリーなんだろ? 」
僕がやっぱりモテないからかな?
「ああ、それ邪魔したのワシ。ワシ! 」
権蔵がニヤニヤしながら言った。
「えっ? 」
僕はきょとんとした。
「ホントに魔法使いになるか見てみたくてのう。なんか、女性に対して諦めができて理想が高くなっただけみたいじゃな」
権蔵は悪気もなく、笑いながら言った。
「そんな理由でいらんことするな! 」
僕はお守りにきつく念じた。
「ぎゃあ! お主には純潔を貫いて欲しかったんじゃ! 儀式の願いがどうなるかまで見届けるのがワシの仕事じゃ! 平等に邪魔したから笹野ありすも男性を知らん」
権蔵は痛がりながら言った。
「えっ笹野さんも? 」
僕は念じるのをやめた。
笹野さんもなのか。安心した。
「まあ、笹野ありすはワシが邪魔しなくても良かったがな」
権蔵は僕達のことをずっと見ていたんだ。
ということは……権蔵は、笹野さんについて知ってるんじゃないか?
「他に笹野さんについて覚えてることはないか? 」
「うーむ。ない! 」
権蔵は即答した。
まったくそんなどうでもいいところ思い出さなくていいのに。個人的にはどうでもよくないけど……
権蔵へのさっきの怒りがこみ上げてきて、お守りに念じた。
「ぎゃあ! 今は何もしとらんだろうが!」
権蔵が半泣きで言う。
「これが、魔法使いの力だ! 」
僕が嫌味たっぷりに言ってやった。
「まだ、根に持ってたんか? 」
権蔵が僕の方を見ながら言った。
「当たり前だ! 」
僕はまたお守りで念じる。
僕達がゴタゴタしているのを西園寺さんと高梨先輩はボーゼンと見ている。
「本当に偉い侍だったんですかね? 西園寺さんは喧嘩止めないんですか? 」
高梨先輩は愛想笑いをしながら西園寺さんに尋ねた。
「きっと愛長様は今の方が楽しいんですよ」
西園寺さんは笑いながら僕らを見ていた。
そして、僕達は、家に帰ることにした。
「橘! 送っていかなくていいか? 」
高梨先輩は車に乗り、窓を開けて心配そうに言った。
「駅近いから大丈夫ですよ」
僕は高梨先輩に遠慮して言った。
「ワシは車がいい……ぎゃあ! 」
もうお守りに念じるのも慣れてきたな。
僕は駅のホームまで歩いて行った。
なんか江戸時代やら戦国時代のコスプレをしてる人が
ちらほらいるな。ハロウィンにはまだ早いはず……
まさか! 権蔵のように僕もタイムトラベルしてしまったのか!
「なんかコスプレ多いね~」
「近くで歴史フェスやってるんだって~」
近くのカップルが僕の妄想を打ち砕いた。
「真似にしてはなかなか出来が良いではないか」
権蔵が感心している。
僕がホームで立っていると隣の人もコスプレをしている。農民と巫女だ。よく見ると、小豆沢光さんと笹野ありすだ!
「あれっ笹野さんと小豆沢さん何してるんですか?」
僕は思わず声をかけていた。
「ああ、橘くんか! 光ちゃんが歴女でな。近くの歴史フェスに参加していた」
笹野さんが顔色を変えずに言った。
「2人でいくと特製マフラータオルが貰えるんです」
光さんは嬉しそうだ。
なんか強い目眩がする。
「は、はこべ……はこべではないか?! 」
権蔵が、驚いてその場に固まっている。
やっぱり笹野さんは……権蔵の初恋の人の生まれ変わりなのか……正直権蔵とは好きな人をめぐって争いたくない……
権蔵はふらふらと近寄った。農民の格好をしていて、黒くて長い髪の毛のかつらをした小豆沢光さんの方に。
「はこべ……? 」
光さんも何やら思い当たる節があるようだ。
「こいつは本当は柊愛長って言う名前で初恋の人の名前が『はこべ』さんと言うんですよ」
急に光さんが怯えだした。
そして、巫女の格好をして黒くて長い髪の毛のかつらをしている笹野さんの後ろに隠れた。
「柊愛長……様? たまに夢に出てくるお侍様とおなじですね」
光さんはひょこっと顔を出しながら言った。
「ということは、光ちゃんが生まれ変わり……」
笹野さんも流石に驚いているようだ。
「愛長様とは一度お会いしてみたかったです」
光さんが権蔵を見つめる……。
「はこべ……ワシもじゃ」
これで権蔵の未練も消えるかな? ちょっと寂しいけど仕方ないか。
「もうどうしてくれるんですか? 毎日毎日夢に出てきてどんだけうなされたか!占い師に相談しに行ったら『前世のつながりが邪魔してあなた結婚できません』って言われたんですよ! はこべさんははこべさん、生まれ変わりでも私は小豆沢光で別人なんです!もう30ですよ! 何とかしてください! 」
小豆沢光さんはめっちゃ怒っている。
「はい。すみません……」
権蔵はめっちゃ(態度が)小さくなっている。
いやいや。前世で愛長をうらぎった罰が来てるのでは。でもそれははこべさんであって、小豆沢光さんには関係ないか?! うーん難しい。
まだまだ権蔵とは縁がありそうだ。いいんだか悪いんだか……まあいいや。
「物事はっきりいうところは、はこべそっくりなんじゃがなあ……」
どうやら権蔵は小豆沢従姉妹には頭が上がらないようだ。
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