第49話 権蔵の未練とは?
だいぶ謎が解けてきましたね( ̄▽ ̄;)
「あっ私達はこの電車だからまたな」
笹野さんはそう言って、光さんと電車に乗っていった。
しかし、笹野さんの巫女姿綺麗だったなあ。
「……」
権蔵はずっと部屋に帰るまで黙っていた。
僕達は部屋に戻った。僕は座布団に座って権蔵に向き合った。
「権蔵の未練は、はこべさんの生まれ変わりの光さんの方だろ? 権蔵はどうしたいんだ?僕はどうしたらいいんだ? 今更違う人と恋愛しろと言われても嫌だぞ」
ちょっと言いすぎたかな?
もう笹野さんが好きだから、違う人と恋愛したくない。
「ワシはとっくに、はこべのことは諦めとったのじゃ。だから、ワシの未練とは関係ないんじゃ。だから、権太も小豆沢光と恋愛しなくていい」
権蔵は下を向いたまま言った。
「じゃあ、何が未練なんだよ! 」
僕は権蔵の未練がわからなかった。
「思い出したことだけ話すぞ! 」
権蔵は昔話を話し出した
~14年前~
「どいつもこいつも私利私欲にまみれた願いをしおって……人助けという感じがせんのう」
ワシは同じことを繰り返す毎日に疲れておった。
ある日すごく可愛い女子がわしのところに来たのじゃ。その女子は特別に輝いて見えた。
それが小豆沢蔵子……つまり笹野ありすじゃった。
可愛いクマの人形を石碑に置いて、小豆沢蔵子はこう言ったのじゃ。
『橘権太君から私の記憶を消して普通に生きていってほしい。もし思い出しても二度と会わないようにしてほしい』と。くまの人形は、権太とやらから貰ったものらしい。
「ちょっとちょっとこないだと願いが違うじゃないか? 」
橘権太が回想の途中でちゃちゃを入れてきたのじゃ。
「まだ話の途中じゃろうが! 」
また回想に戻るぞ。
その健気で弱々しい小豆沢蔵子を見て、なんか事情があるのではないかと思ったんじゃ。
ただの私利私欲の願いとは違うとワシは思ったんじゃ。
ワシは小豆沢蔵子の記憶を読んでみたんじゃ。
すると、相手のことを思っての健気な願いじゃった。
それがワシの最期となんとなくかぶって見えたのじゃ。
自分が悪者になっても構わない。
そんな気持ちも見受けられた。
もしかしたらはこべも、そんなことを考えていたのかもしれない。
小豆沢蔵子がはこべにも重なって見えたのじゃ。
さらに、小豆沢蔵子の記憶を読み取って気づいたのじゃ。
昨日ワシのところに来た男がこの『橘権太』と同一人物だと。
橘権太も小豆沢蔵子に関する願いを言っていたことを思い出したのじゃ。
2人は想い合っているのにすれ違っているだけみたいじゃ。
ワシとはこべもすれ違っていただけなのかもしれない。
ワシはこのまま小豆沢蔵子の願いを叶える気が起きなかったのじゃ。
「小豆沢蔵子よ。ワシと取引をせんか? 」
ワシは思わず、小豆沢蔵子に話しかけていた。
「きゃあ。誰ですか? 」
この時の小豆沢蔵子は笑うぐらい驚いていたぞ。
「ワシは柊愛長じゃ! 」
ワシは祈りを捧げる、小豆沢蔵子の前に姿を現した。
「ひ、柊愛長様? 」
小豆沢蔵子は口を開けてぽかんとしていた。
「見れば、お主らはお互いに想い合っているではないか?昨日権太と言うやつもここに来てお主のことを願っていったぞ。そんな願いは皆が不幸になるだけじゃ」
ワシは小豆沢蔵子を見据えながら言った。
「権太くんも? しかし、私はもう疲れたのです。相手も自分も傷つける日々に。ならばもういっそ無かったことにしてもう会わなければいいのです」
小豆沢蔵子はため息をついた。
「それならば、なぜ自分の記憶を消さないんじゃ? 」
ワシはそう言うと小豆沢蔵子は言い淀んだ。
「それは……」
「本当はいっそなかったことにしたいなんて思ってないんじゃろ?このような事態になったのはお主のせいではない。あまり思い詰めるな」
ワシは小豆沢蔵子を必死に励ました。
「はい。それで取引とは何ですか? 」
小豆沢蔵子は少し元気が出たようじゃった。
「ワシは同じことの繰り返しで私利私欲の願いを叶えるのは疲れた。だからお主らの本当の願いを叶えたいんじゃ。願いを『もし記憶を消しても覚えていたらもう一度会いたい』に変えてくれ。ワシは悲恋だったのでな。はつぴーえんどとやらが見たい」
ワシは最近覚えたはつぴーえんどと言う言葉を使ってみた。
「お気持ちは嬉しいのですが、しかし、今の私では同じことの繰り返しです。ハッピーエンドになるとは思えません」
小豆沢蔵子は寂しそうな顔をした。
なんだか放っておけぬかった。
「だから、時間を与えるその間にお主は変わるのじゃ。お主は賢いゆえ自分の何が原因がわかっておるのだろう? 」
小豆沢蔵子……今の状況を打開できるようなやつになるのじゃ!小豆沢蔵子はしばらく考え込んでいた。
「自分の弱さが原因です。なるほど強くなり今の自分から生まれ変われということですね」
小豆沢蔵子は決心したようじゃ。
「ご明察じゃ。10年後またここに来い。その日が過ぎ、どちらかが強く思い出したらワシはお主らの所に現れる。そして、相手を必ず探し当てる」
ワシは笑いながら言った。
「そうすると、どちらの元に現れるのですか? 私ですか? 」
小豆沢蔵子はわしの方を見て言った。
「強い未練を感じ取った方に行こうではないか。しかし、記憶がある分お主にいく可能性が高いのう。その時にお主らの強い念つまり魂の一部をもらう」
わしはこの時は確実に小豆沢蔵子の方に行くと思っていたのじゃ。
「分かりました」
小豆沢蔵子はいろいろ考えていたようじゃが、納得してくれた。
「ワシもただ答えを知っていると面白くないのう。しかもワシはすぐ表情に出るらしくわかりやすいと部下によく笑われた。それに柊愛長という人間を演じるのも疲れたのじゃ。だからお主らのところに行く時はわし自身の記憶を消す」
わしはここで自分の記憶を消すことにしたのじゃ。
「10年後もしお互い強く、思い出さなければそのままですが、それでもよろしいですか? 」
小豆沢蔵子は真剣に言った。
「その時はその時じゃ。人助けも好きじゃしな」
ワシは笑いながら言ったのじゃ。
「わかりました。私の願いを変えます」
小豆沢蔵子は不敵に微笑んだ。
~14年後~
橘権太が車にぶつかりそうになった時に小豆沢蔵子のことを強く思い出したのじゃ。そして、その車に乗っていたのは偶然にも小豆沢蔵子つまり笹野ありすじゃった。
これが思い出したこと全てじゃ。
~回想終わり~
「笹野さんの事情は? 僕の願いは? 」
まだわからないことが沢山ある。
「覚えておらぬ」
権蔵は即答した。
「僕の方が未練が強かったんだな」
僕は記憶がなくても心では小豆沢蔵子さんを好きだったんだな。
「そうじゃ。記憶が無いのに小豆沢蔵子よりも強く思っておった」
権蔵は微笑んだ。
僕、橘権太のことをそんなに想っていたのになぜそんな『なかったことにして欲しい』なんて願いを笹野さんは言ったのか?
いまの僕に対してはどう思っているのか?
笹野さん本人に聞いてみるしかないな。
しかし、翌日から会社で1週間桃井さんが総務課のピンチヒッターに来てそれどころではなかった………
読んでくださりありがとうございます!




