第3話 START
扉が開き、暗闇に眩しい光が差し込んできた。
紅夜手で目を覆い隠す。目が慣れてくると、紅夜は手を離した。目の前には人が群がっていた。見る限り2・300人はいそうだった。密度的には1平方メートルあたり5・6人くらいだ。部屋の材質は木材で豆腐のような形をしており、扉の真反対側にはホワイトボードのようなものがあった。紅夜の入って来た扉は部屋で言う後方側だった。縦に長いテーブルが3台、それと平行に長椅子が机の両側に設置してある。
「うおぉぉー…」
そこには筋肉が盛り上がっている者。体型が肥満な者。背が高い者や低い者。若い者や老いている者など、様々な人が、何かを待っているようだった。
「強そうなやつがいっぱいいるなぁー…」
その時、椅子に座っている一人の人に目が止まった。
「あっ、女もいるんだ…」
人口を減らす、という面を考えれば女性を殺る方がある程度早目に終わらせることができる。それをふまえて政府は第1回目、その作戦で男女比1:1になるよう調節し、殺人ゲームを行った。しかし、女とは怖いもので、様々な手を使った。そして、殺人ゲーム終了後、男は女の5分の1しか生き残ることができなかった。その結果もふまえ、今では男女比5:1となっている。らしい。
(あ〜うん。かわいいなぁ。)
と、紅夜が思った瞬間、目があった。
確かに可愛い、少し美人が混ざっている、と紅夜は思った。しかし紅夜はここ何年かで、[性に興味を持たないようにする訓練]をしてきた。そのため可愛い、と思ったとしても、それは興味ではなく、人としての薄っぺらい感想だった。
(訓練する前の俺ならどストライクなんだけどねー)
殺人ゲームの参加対象年齢は18歳以上となっている。
その女の見た目ではおそらく10代、紅夜より背は低いくく目が大きい、髪はセミロング程度【肩にかかるくらい】といった感じだ。
(まぁ、見た目良くても中身がどうかやけどね〜)
もしかしたら10代のくせにタバコ吸ってるようなやつかもしれない、などと考える。
紅夜は再び辺りを見回した。すると
「おぉ‼︎紅夜じゃん!!」
紅夜が遠い昔に聞いたことのある声。
身長178センチ、体はガッチリ、髪は刈り上げの男。
紅夜はこの男の事をよく覚えている。
「原鎚じゃん‼︎何してんの⁉︎」
彼は和歌山原鎚。動物に例えるなら、見た目ゴリラ、性格ナマケモノ。
ハートはガラスのハートだ。
「フッ…バイトだよ。殺しのね。」
「バイト?何を殺すの?」
「さぁ?分かんねぇけど殺したら成果によっては1000万円貰えるらしくってさ。というかお前、なんでバイト知らずにわざわざこんな所まで来たの?えっ、ここだろ?バイトの会場。」
「えっあっ…いや…まぁ……」
「あっ、これいいハンマーだろ?」
「えっおっおう……」
原鎚は紅夜にも負けないほどのマイペースな奴なので、平気で話題を変えてくる。
原鎚はハンマーを見せびらかした。
「え、ハンマーって売り場にあったっけ。」
「あぁ〜うん、一つだけしか売ってないらしい。」
フフンッと原鎚は自慢気に花を鳴らす。
紅夜の武器を見た。
「お、お前も重そうだな……」
「うーんなんかね、2・30キロはあるって言われた。
「何故それをさらっと言える⁉︎俺18キロって言われたぞ⁉︎」
「いや、多分それ嘘だわ「え」それ50くらいは普通にあると思う。支配人がお前のことウザいと思ったからションボリさせてやろうと思ったのかも。」
「ま、まじか……重。まぁ、いいか、お互い頑張ろうぜ。」
「ん、おう。ま、敵になるかもしれんけど。」
「敵?なんで?」
なぜか原鎚はとぼけたように紅夜に尋ねた。
「はぁ?お前コレあの〔kill game〕だぞ?」
『ええええええええええええええええ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎⁉︎⁇⁇』
オーバーリアクションのように見えるが、これは原鎚の本当のリアクションだ。
「おま…まさか、赤紙も貰わず自主参加したのか⁉︎」
「いや…賞金しか見てなくて…で待ち合わせはここだって……」
原鎚の家はあまり裕福ではない。それも原因としてあげらるかもしれない。
「確かに優勝者7人には1000万円渡されるけど……」
「ぞ、ぞんなあぁぁぁ‼︎」
昔から金に目がない奴なので、紅夜は懐かしいなと思いながら、途中脱退は出来ないと伝えると
「ゔわぁぁぁああんまりだよぉぉぉおお‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
と、どこかで聞いたことのあるようなセリフを言いながら、別れた。
パン パン パン パン パン
前の方で手を叩く音がなった。音のなる方を向くと、あの謎の男がいた。
「今回は殺し合いのためによく来てくださいました。私はここ最高の扉の管理人兼支配人です。みなさん…………………私のことは〔支配人様〕と呼びなさい!」
シーーン……………………
「ゴホン…今のは冗談です。…えーと、306名しか居ませんね。312名呼んで1名は自主参加だから…7名来ておりませんね。取り敢えず死刑は確定ですね。」
殺人ゲームに招待された場合、参加しなければ死刑となる、という法律がある。まるで昔のようだ。無慈悲である。
「306名なので…1班51名の6班作ります。その後、政府指定の会場が6エリアあるのでそれぞれ班ごとに分かれます。エリアごとに鉄の壁で囲われています。逃げようとすれば、こちらには有能なスナイパーがいるので、撃ち殺されます。気をつけてください。今回の会場の大まかな説明は以上です。」
大まかすぎじゃね、と言う声もあったが、支配人は無視して続ける。
「51名で殺し合い、5人になれば第1回戦は終了です。終了した場合、放送を流すのでそのエリアでの殺し合いはその時点でやめてください。殺してしまった場合はその人の責任として頭を銃弾で抜かれます。
備考として、死んだ人の武器を盗ることもできます。
以上で説明を終わります。
それでは今から班決めをします。」
と、支配人は大きな箱を取り出した。くじ引きと言う名のボール引きである。
「そーですね……あなた引いてください。」
と、一番後ろにいたはずの紅夜が指名された。
「え、おれ?」
「そーです。」
「じゃあ…」
みんなの視線が紅夜に集まる。
運も実力のうちである。弱い者と当たればと言う願いは誰の心にもある。
ガサゴソ
「あ…Aです。」
紅夜はA。
ある人は思う(絶対A引いてやる。細いし、武器多いから動きが鈍そうだ。)
ある人は思う(武器が多いなぁ…強そうだからAは引きたくないなぁ…)
意見は様々である。
「次は……自主参加の人。」
ということは原鎚だ。震えないように歩いているのか動きがギクシャクしているし、先ほど泣いたのか、目が真っ赤になっている。
ガサゴソ
「オラァ‼︎Dだぁ!」
ある人は思う(体格ガッチリだ)
ある人は思う(ハンマーか、すごい自信だ。強そー」
紅夜は思う(「オラァ‼︎Dだぁ!」ってどこ弁だよ。強がってるねぇ…)
「えぇ、次はそこの女の人。」
「はい」
入り口付近で見かけたあの女だった。
ガサッ
「Cです。」
(おいあいつ可愛くね?)
(一緒に住みたい…嫁にしたい…)
大半の男どもは思う。
実際、今回勝ち抜くと、エリアごとに分かれた班ごとに分かれてこの施設で寝泊まりする【部屋があります】男たちはそのシェアハウス企画を狙っている。
「オラァ次は俺だぁ!」「イヤ俺だぁ!」「テメェら俺を誰だと思っている俺が引くんダァ‼︎」「知るかボケェ!次は俺なんだぁ‼︎」
という具合で進んでいく。
なんとか班決めが終わった。支配人も少し安心している様子だ。いよいよあの忌まわしいゲームが始まる。
「それでは皆さん………
Let's START‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
いよいよSTARTです‼︎
次回、様々なグロテスクな表現が入ります。読む上では十分に気をつけてください。
おそらく1・2話分で終わると思います。
短い!と思うかもしれませんが…すみません(′°ω°`)
よろしくお願いします‼︎