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『夜明けのゾンビ』 ―無職の俺とポメラニアンにも、世界の終わりがやってきた―改稿版  作者: 天本一三


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9月6日

 今日も相変わらず寝起きがダルい。最近は起きているのか、まだ夢の中なのかわからない時間が長くなっている気がする。それでも朝起きてすぐのSNSチェックをしていると、先週横浜で噛まれたあの女性が、再びニュースになっていた。 ただ今回は「彼女が」職場の上司の首に噛みついたのだ。

 噛みつかれた奴がまた誰かを噛むって、まるでゾンビ映画じゃんと俺は思った。

 みんなも同じように思ったようで、

『えぇ…まじでゾンビ発生事件じゃないよね?』『でも感染症とかだったらヤバくない?』とざわついている。

 その噛みついた女性はどうやら錯乱状態にあるらしく、とりあえず警察に保護されているらしい。噛みつかれた方の上司はただ噛まれただけではなく、肉を食いちぎられているようでかなりの重傷のようだ。

 そういえばこの前の噛みつき犯はまだ捕まっていないのだろうか。あれから続報は聞かないが…そんなことをなんとなく考えていると、プウが俺の足を噛みだした。こいつは自分が大型犬だと思っている節があり、要求があるとギャウギャウ言いながら足を攻撃してくる。

「ウチの噛みつき犯は、ご飯かな?」

 俺はドッグフードと水を用意すると、プウの前に置き、「待て」と言った。

 プウはクルクル回ったあとお座りをして待っている。「ヨシ」と言うとプウは急いで食べ出したが、少し食べると首を傾げている。また少し食べて、止めてを何回か繰り返していた。

 プウももう十歳になってシニアになってきたので、今までのフードでは合わないのかもな、と俺は思った。

「ご飯変えてみるか?」とプウに言ってみたが、知らんふりして水を飲んでいる。

 次は俺の番だ。トーストとゆで卵、それとコーヒーが俺のいつものメニューだ。俺は食事にはあまりこだわりがなく、いつも同じものでも平気だったが、今日は少し物足りなく感じた。

 なんだか肉が食べたい気分だった。ステーキとまでは言わないが、でかいハンバーガーを思い描いた。

 親父は逆に食欲が無いのか朝飯を少し残していたので、「どこか具合でも悪いの?」と母さんが心配していた。父はただ肩をすくめただけだった。夏バテが残っているのか、なんだか疲れ気味のようだ。

「あんたも最近顔色が悪いわよ」と母さんに言われた。俺は笑って誤魔化したが、ふと鏡に映った自分の顔を見てみると、確かに青白い顔をしている。 もしかしたら、本当に家の中にこもりきりになりすぎていたのかもしれない。

 そうだ、 明日からは早起きして、親父の代わりに俺がプーの散歩に行こう。 そうすれば、少しは何かの役に立てるだろう。 ここに住まわせてもらっていることへの「申し訳なさ」も、ちょっとは薄れるかもしれない。

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