↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オープン・ステージ  作者: 藤田 紗碧
PR
40/55

2-28

 視線をそらしたいと思うのに、まるで彼の瞳に吸い込まれていくような感覚に、抵抗できずに戸惑った。

 佳くんも、ずっと私を見つめている。

 私は今、一体どんな表情《かお》をして彼を見つめているのだろう。

 恥ずかしいから、そんなに見ないでほしいのに。

 すると、佳くんの表情から微笑みが緩やかに消えていき、その瞳が寂しげに揺れた。

「もうすぐ、僕の学生最後の夏休みが終わるよ」

 勢いの良かった花火が、燃え尽きて消えていった。

 それと同時に、鈴虫の声が物悲しく耳に戻ってくる。

「そうだね」

「……寂しいよ。二人に会えなくなるのが」

 私だって寂しい。

 でも、まだそんな気持ちにさせないでほしい。

「あ、でも、ほら、まだ夏祭りがあるしね! ね、俊太」

 不自然に明るい声が出てしまったような気がしたけれど、私はなんとか平静を装う。

「俺は行かない」

 え――?

 それはいつもの調子でさらりと発せられた言葉だった。

「え、どうして? お店が忙しいの? だったら、また佳くんとお邪魔し――」

「ホシケイと祭りに行くか、俺の家の手伝いに来るか」

 俊太が私の言葉を遮《さえぎ》って口を開いた。

「お前は、どうする?」

 俊太はまっすぐに私を見ている。俊太が私の言葉を遮ったことなんて、今までなかった。

「ふーん。そうか、俊太って、やっぱりそうなんだね」

 佳くんが普段と変わらない態度で明るく言った。

「どうして急にそんなこと言うの? 今日まで三人で楽しくやってきたのに」

 俊太の言葉に、私は少しショックを受けていた。

 すると、俊太がぽんと、自分の手を私の頭の上に優しく置いた。

「どうしてだろうな?」

 そう返した彼は、まるで、私がその答えに気付くことを待っているかのように見えた。

「螢ちゃん、僕も、君が来るのを待っているからね。待ち合わせ場所は僕が決めておくから、後で連絡するよ」

 そして私の顔を覗き込むようにして続けた。

「君との思い出がもっと欲しい。足りないんだ」

 暗くてもよく見える距離に二人が居る。

 どうして、三人でずっと仲良くしていようねって言ってくれないのだろう。

 私は、一体どちらへ向かえばいいのだろう。

 家に帰ってからもそんな事をぐるぐると考えていて、その日はよく眠れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。