3 貯蓄を「国全体が成長する投資」へ/現状の最善手は「理想と分離」
◇年金を上げるだけでは思ったより解決しない事が濃厚
筆者:
前の項目では現状のNISAのシステムは「国富の流出による円安」であり、「真の意味では投資とは呼べない」という状況が問題であると述べたと思うのですが、ここでは改善案について語っていこうと思います。
質問者:
そもそもの話として、NISAが老後の生活不安が原因だとするのなら年金を充実させることで解決出来ないんでしょうか?
筆者:
勿論、国債を原資にすれば財務省などの障壁はあるものの年金を引き上げることは不可能では無いですが日本には供給力が不足しているために、むやみやたらに消費力だけを上げようとするとインフレが加速する恐れがあります(しかも年金受給者だけで4000万人ほどいるため)。
そうなるとインフレと年金引き上げのイタチゴッコ状態になり、本質的な意味で豊かになるイメージが湧きません。
年金を引き上げることと食品などの生活必需品の供給力(輸入以外で)をリンクさせないと危険であると考えます。
その上で年金上昇によって「貯蓄」されている預金が使われるとも限りません。
政府への信頼度がそもそも低い状況なので「今だけ年金が上がってもまたカットされるんじゃないの?」という疑念が出ていたら意味が無いですからね。
質問者:
なるほど……仮に国債を原資にしても一筋縄ではいかない問題なんですね……。
筆者:
年金上昇とともに貯蓄を放出させるのなら相続税を上げるという方法はあると思います。
ただ、これも一筋縄ではいかない要素があります。
まず、タックスヘイブンの土地に資産を移動させれば税金をかけることが出来ません。
仮想通貨などで追いかけにくい状態にして移動させれば比較的簡単に移動させることは出来ます。
次に農地や宅地などどの程度まで課税するのか? という議論も慎重に行わなければいけません。
農家が解体されるために農地を分けることは危険ですが、かといって富裕層が相続税対策の資産として耕さない農地ばかりを保有すると言った可能性もあります。
質問者:
本当に色々な問題が複雑に絡み合っているという感じなんですね……。
筆者:
年金制度に着眼するのであれば、任意加入制度にするか自己積立制度に改革することが重要なのかなと思います。
現状において将来の見通しが立たないのもどれぐらい貰えるのか? の信頼制が全く無いためです。自分がいくら負担し、積み立ててどれぐらい貰えるのかがハッキリと分かるだけでも、将来の見通しに関して違いは大きいのではないかと思います。
負担が増え続け、将来貰う額が減ることが予測される賦課方式は即刻廃止するべきだと考えます(勿論、権利がある方が存在し続ける限り清算は続ける必要はあります)。
質問者:
確かに今の国の年金制度の信頼度の無さは凄いですからね……。その分貯金した方がまだマシなんて酷すぎます……。
◇「真の意味での投資」を促進させるためには?
筆者:
という事で話を戻しますが、NISAを違った方向に拡充する方法が預貯金を「真の意味での投資」に繋がると僕は考えているわけです。
「NISAを国内株式だけにする」以外の改善案について述べていこうと思います。
質問者:
前回の項目でNISAのほとんどが「GDPに含まれない投資」という事は分かったんですけど、
逆に「GDPに含まれる投資」ってのもあると思うんですけど一体どういうものがあるんですか?
筆者:
良い着眼点ですね。
GDPの計算式における投資は、企業が新しい工場を建てたり、機械を買ったり、R&D(研究開発)をしたりすることが「設備投資」に含まれます。
例年では全体GDPの15%前後を占めており、これはコロナ以外では極端に増えることも減ることも無いという感じですね。
質問者:
うーん……でも、今挙げられた投資って普通の方が行うにはハードルがあまりにも高すぎますよね?
筆者:
そうなんですよね。
だからこそ国策で行う必要があるんです。
現状は家計貯蓄の預貯金を外国株式に注ぎ込んでいる状況ですから、これを国内の成長企業に出資させるシステムが必要と言えます。
海外の例においては既にこの動きが出ているんですね。
韓国の「ニューディール基金」などと呼ばれているものは、デジタルの技術開発、クリーン技術な技術開発に関するものは
国民参加型国民成長ファンドに一定期間以上長期投資すれば投資金額は所得控除を行い、ファンドで発生する配当所得は低率分離課税が適用されるそうです。
更に、ファンドに赤字が生じても2割までであれば国が赤字補填を行うというシステムだそうです。
質問者:
筆者:
ただ、2020年から始まってはいるが資金がまだ集まっていないファンドも多く、実施されていない部門も多いようで、状況としては今後の推移を見守る形になりそうですね。
イギリスでは1995年からEISと呼ばれる中小企業投資促進税制として、個人投資家が成長性の高い企業に直接的に投資できるようになっています。
フランスでは2014年からPEA-PEMと呼ばれるフランスの中小企業に限った投資を行い、かつ所得税が非課税になる運用資産があります。
ただ、イギリスとフランスのものには元本保証が無く、ゼロにもなりかねないようです。有益であるとされてはいるものの「お金持ち専用」なのかなと思います。
質問者:
確かに、投資した会社が潰れてしまってゼロになったら悲しすぎますからね……。
筆者:
こういった利益があがれば大きく儲かり、下がるとき大損するリスクが高い商品を「ボラティリティが高い」というのですが、そういった商品を国策でやるのはどうなのかな? というのがあります。
そこで僕が新しく提案したいのが、
「イギリスEIS式のインデックス商品」です。
インデックスというのは指数における分散投資です――現状はそう言った設備投資の指数は存在しないので「完全なる妄想」なんですけどね(笑)。
この構想では新規プロジェクトに対しての投資で利益が出れば分配、マイナスでも分散――プラスなら配当のような制度である程度の損失までは国が補填にすれば良いと思います。
さらに韓国のようにお金が集まらないと始められないようなシステムでは無く、軌道に乗るまでは国が補助金を出して後を引き継ぐ形で民間から募る形が良いと思います。
これが実現すればGDP成長と国民の貯蓄から投資、そしてリスクを低くすることの3つを両立させることが可能なプランであると言えます。
質問者:
筆者:
特に成長産業ごとに指数を作れば国民が興味がある分野を事実上支援することにもなります。
何種類か簡単に考えましたが、
・国産重要資源インデックス――国内のレアアース開発や都市鉱山、リサイクル企業に絞った投資。
・次世代半導体R&Dインデックス――日本の半導体素材・装置メーカーの研究開発、その利益から分配。
・ロボットインデックス――介護ロボット、工業用ロボット、家庭用ロボット、ドローン配送など多岐にわたる。
・インフラインデックス――特定の地方自治体のインフラ更新に直接投資し、利用料から分配。
・農業生産力向上インデックス――農業の生産力向上、耕作放棄地の改善に投資。利益率が低く赤字の可能性が高いため、国が補填することがメインで売上トン数で配当を行う。
・軍需産業インデックス――国産オンリーの生産に投資。自衛隊の施設など待遇改善にも費用を投資。配当は世界的な技術水準と比較してどのレベルになれたかで決定。
ざっとこんな感じでしょうかね。
海外株を買うNISAは「資本の流出」ですが、国内のこれからの必須な項目の技術支援はGDPの構成要素である「設備投資」を直接増やすことで生産力向上にも繋がるのです。
しかも自発的に選ぶことが出来れば、国民がどれを重視したいのか? も明白になります。
質問者:
なるほど……それらはどれも必要な気がしますが、国民側からの序列が分かることも大事ですよね……。
筆者:
高市総理は所信表明演説で成長のスイッチを押しまくる――とおっしゃっていましたけど、既存の枠組みからは出ていないので日本に巣食う根本的な問題を解決するには程遠いという事です。
別に僕のプランで無くても良いですけど、既存の枠組みを飛び越えるだけの画期的な方法を考えて欲しいところですね。
◇取りあえずは、「現状最善手」を取るしかない。
質問者:
こういう提案をされている際にいつも思うんですけど、筆者さんが政治家になった方が良いんじゃないですか……?
筆者:
僕は上下関係とかそう言うのが凄い嫌いなんで、上の方に対しても物申してすぐに決裂して終わると思います(笑)。
大学で研究者になろうかなとも思ったんですけど、教授に媚を売るのが嫌すぎてやめました(笑)。
提言して、同じように疑問を持つ方と議論をするぐらいで丁度良い感じですかね。
現実的な問題としては、物価高は引き続き継続するでしょうし、現預金は目減りし続けている――この事実だけは揺るがないと思います。
個人の視点で長期的な視野で見た場合は、選択肢として乏しく、やむを得ず「資産同志のの移転」でしかしていない「悪夢の循環」を続ける課題が山積しているNISA制度と言えど、利用しなければいけないという事です。
質問者:
なるほど……いつも筆者さんがおっしゃっているようなマクロの政策面での最善とミクロの個人レベルの最善というのは全く異なるということなんですね?
筆者:
結論から申し上げますとそうなります。
NISA”税制優遇については”完璧であることは間違いないので1の冒頭に話しました「NISAに全力して一見すると貧乏にすら見える」状況ぐらい頑張る価値はあると思いますからね。
なぜなら個人レベルで例えば「NISA拒否」のような反対活動をしたところで何ら全体としては意味はありませんから、ここら辺は妥協して個別の事柄は切り離して物事を捉えるべきなのかなと思います。
株式投資推進は「価値の創造」という点において本来の投資では無いという事、
引き続きNISA改善、年金制度を自己積立制度や任意加入制度に変更することなどを訴えていければと思いますね。




