08:森での採取とマヤ
「おい! 元気になったんならさっそとそいつをうちに返しなよヴィル!」
そんな苦情を申し立てて来たのは、ワタシを引き取りに来た、アビィーおばさんだった。
ワタシは海に行くために、危険な森を抜けるための、訓練を受けていた。そんな訓練の最中、あのアビィーおばさんが乗り込んできたのだ。
もともとワタシはアビィーおばさんの、カワード家に引き取られていたので、取り返しに来たとでも言いたいのだろう。
そして再びあの家に連れ戻して、馬車馬のごとく、ワタシをこき使うつもりなのだろう。しかも毎回少ない食事で・・・・
せっかく最近、徐々にふっくらとしてきたというのに、またあの酷い生活で、痩せぎすになっていくのは御免願いたい。
「こいつは村のために、あの【無敵の死神】を倒すって言ってんだ。その意思を組んで俺が鍛えてる。だからお前の家に戻る気はないと思うぞ?」
「なんでうちの労働力をそんな死地に向かわせなきゃならないんだい!?」
どの口で言うのか? あの家も【無敵の死神】も、ワタシにとっては変わらぬ死地だ。
「えっと・・・ワタシあの家には帰るつもりはないいんですが?」
「あんたは黙ってな! あんたなんかに何も聞いちゃいないんだ!」
相変わらず有無を言わせずだなこのおばさんは・・・・
アビィーおばさんは村長の妹で、この村ではヴィルおじさんよりも立場は上だ。だからヴィルおじさんも、命令されれば逆らえない。
「そう言えば今日は森での実地訓練でしたよね?」
「ああ・・・・。そうだがそれがどうした?」
「あの森には多くの木の実があって・・・確かそれを村に持って帰る訓練でしたよね」
今日の訓練は本来、森での探索を行う訓練だった。その木の実の採取事態、ワタシが勝手にでっち上げた方便なのだ。
なぜそんなことをでっち上げたかというと、目の前にいるアビィーおばさんを追い返すためだ。
「なに? 木の実だって? 本当かい?」
「あ、ああ・・・。村の皆にも配るかもな・・・・」
「ふん! うちにも当然分け前はあるんだよね! 頑張って沢山取って来な!」
そう言うとアビィーおばさんは、踵を翻し、その場からのしのしと去っていった。
なんという現金なおばさんだろうか? 木の実欲しさに態度を180度変えるなんて・・・・
でもヴィルおじさんがワタシの意図をくみ取り、話を合わせてくれて良かったよ。おかげで無事にアビィーおばさんを追い返すことが出来た。しかもワタシも甘い木の実が食べれてラッキーだ。
ピ~ピ~ピ~・・・・・ ギャ~ギャ~!
森へ入るとすぐに、奇妙な鳥のような鳴き声が聞こえて来た。それがこの森の不気味さを、よけいに引き立てている。その薄暗い森の上から、時折太陽光が線のように差し込み、それが幻想的にも見える。
そして周囲を見渡すと、食べられそうなキノコや野草などが、あちこちに生い茂り、それがワタシの興味を引いた。
そして森の木々は、そのどれもが巨大で、遥か高所に実を付けていた。だが【身体強化】を使えるワタシにとって、そんな木をするする登ることは、容易いことだった。
森にはワタシとヴィルおじさんの他にも、冒険者のダイソンさんとモニカさんも来ている。その中でも身軽なワタシと、モニカさんが木の実採取を担当する。なおヴィルおじさんとダイソンさんは、主に見張りを担当し、こちらにやってくる魔物に対して、目を光らせるのだ。
「うわあ! 見てくださいよこの洋ナシ! ものすごく大きいですよ!」
「そいつぁあペーダの実だ。重いから気を付けて運ぶんだぞ。後魔物が寄ってくるからでかい声は出すな」
ワタシが下にいるヴィルおじさんに、そう伝えるとそう返してきた。
そのペーダの実は、見た目は洋ナシだが、かなり巨大だ。直径50cmはあるのではないだろうか? それは前世で見た、あの大玉のスイカより、さらに大きなサイズだ。
ワタシはそのペーダの実を、背中に背負った籠に放り込んだ。
森の木の実はペーダの実以外にも、赤くバレーボール程の大きさのビーラーの実、同じく巨大なクルミの見た目をしたムスパオなど、他にも多くの種類の木の実を見付けることが出来た。
「うあ! もう籠がいっぱいだ!」
見ると背中の籠の中は、すでにいっぱいになっていた。この森では、どの木の実も巨大で、少し籠に入れただけで、すぐにいっぱいになってしまうのだ。
だがあちらこちらに、まだ手を付けられていない、欲しい木の実がわんさかあった。
こんな時こそ、【森羅万象】のスキルを、使うべきなのかもしれない。
この先持ちきれない持ち物に、苦戦する場面は、いくらでもあるだろう。そんな時ゲームで見た、アイテムボックスのような魔法があれば、随分と助かるだろう。
だがさすがにこんな危険な森で、スキルに失敗して、気絶するような事態は避けたい。
「一度村に戻って、収穫物を置いて来るぞ!」
「はい・・・・」
ワタシは泣く泣く、村に収穫物を預けに、帰還することにした。
ドン! ドド~ン!! メキメキ・・・・
「なんの音です!?」
すると帰る道すがら森の奥から、破壊音のような音が響いた。
「ああ。お前は初めてだったな? あれは人里には滅多に近付かないからな」
「まさかあれは・・・・・?」
森の奥の方に目を凝らすと、そいつは徐々にその姿を現してきた。
「アパトサウルス!!?」
それは前世でワタシが図鑑などで見た、あの恐竜で首長竜の、アパトサウルスだったのだ。
見るとその巨大なアパトサウルスは二頭いて、首を伸ばし、高所にある草や木の実を、貪っていたのだ。
そのアパトサウルスは、図鑑に記してあった体長20mを遥かに超え、30mはあるような感じだ。
「うそ!? この世界には恐竜がいるんですか!?」
ワタシは興奮気味に、ヴィルおじさんに尋ねた。
「キョウリュウ? アパト・・・? お前はいったい何を言っているんだ?」
さすがに世界が違えば、その呼び方も違うようだ。もっともあのアパトサウルスが、過去に地球に存在したあの恐竜と、同一の生き物とは限らない。外見は同じでも、まったく違う生き物の可能性の方が高い。
「あれはアースドラゴンとよばれる竜種の魔物だ。群れで移動する際に、地震を引き起こすことからそうよばれている。ここらでは滅多に見ないが、あの2頭は群れからはぐれたやつらだろうな」
「近付いても大丈夫でしょうか?」
「やつらは基本草食だ。人間には興味すら示さない。だがあいつらみたいなはぐれは、キラードラゴンの標的になることがある。念のために近付かないのが無難だ」
「キラードラゴンですか?」
「キラードラゴンは同じく巨大な体を持つ肉食の竜種の名前だ」
ティラノサウルスみたいなやつだろうか? ならうかつに近付いたりしない方がいいだろう。だがいつかあんな巨大な獲物を狩って、持ち帰るなら、絶対にアイテムボックスは必要となる。
ここはリスクを冒してでも、アイテムボックスのような魔法を、習得してみるべきだろう。
「ほら見て! こんなに木の実があるわよ!」「甘味なんていつ以来かしら?」
「これはあたしんだよ!」「先に目を付けたのはあたしだ!」
木の実を村に持ち帰ると、すぐにおばさん連中が詰めかけて来た。それはもう争奪戦も辞さない構えだ。
「全員には行き渡らないだろうから、持ち帰るのは切り分けた物だけにしてくれ!」
そのヴィルおじさんの掛け声とともに、いっせいにおばさん達が、木の実に向けて殺到する。その様子を眺めながら、ワタシは配当された、ペーダの実の切り身と、ビーラーの実の切り身を口にする。この2つの切り身は、今回のご褒美にと、前もってワタシに分け与えられたものだ。
「シャクシャク・・・・やっぱ洋ナシか・・・・しかも甘くないやつだ」
ペーダの実は、見た目通り洋ナシの味で、甘みは薄く、酸っぱみがある。実に含まれる水分が多く、噛みしめると、口の中に果汁が溢れる。
「モギュモギュ・・・・こっちはぶどう? いや少し違うか?」
ビーラーの実は、酸っぱみと、ほのかな苦みがあり、甘みは微妙に感じる。食感はぶどうみたいな感じだ。
どちらも前世の甘味に慣れてしまうと、物足りないと感じてしまうレベルだ。
料理の付け合わせに使うか、ドレッシングの材料にも使えるか? 干してさらに甘みを増すのもいいかもしれない。
ワタシは目の前の、おばさん達の争奪戦を眺めながら、一人、未来の料理に、思いをはせるのだった。
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