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05:ボーロ村とマヤ

 先日ワタシは、この村の食事の不味さを、身をもって知ってしまった。

 昨晩食べたあの肉は、本当に不味かった・・・・焦げ臭くて、獣臭くて、すごく硬くて・・・・


 それは調理技術の乏しさもあるが、村が貧しく、塩などの調味料が手に入りにくいことが、原因でもある。だが今のワタシには、願いを叶えてくれるチートスキルがあるのだ。


 それが奇跡ポイントを消費して使う、【森羅万象】のスキルだ。

 

 残り奇跡ポイント2・・・・


 現在ワタシはヴィルおじさんの家の前の庭で、草むしりをしながら、色々と思案中だ。

 ビッグボアとの死闘で倒れたワタシは、寝かされてばかりいた。だが元気になったワタシは、退屈になり、何か仕事がないかと申し出たのだ。結果、この仕事を割り振られた。

 この村では子供も普通に働いているし、正直ワタシだけ寝ているのは気が引けた。相変わらず右手は腫れたままだが、草むしりくらいは片手でもできるしね。


 森羅万象のスキルは、使用者の願いを叶えるための、魔法を授けてくれるスキルだ。だから一度叶えた願いは、魔法として習得することが可能なのだ。そしてあの時習得した魔法が、ワタシのステータスには、確かに記述されていた。


 習得魔法一覧

  

  土魔法 【操土】

  生命魔法 【身体強化】


 【操土】の魔法は、土を操る以外にも、砂や石も操ることも可能だ。そしてそれらを接合させて、粘土のように固めて、何かを造ることも可能なのだ。これからは食器や鍋なども、【操土】で造ることができる。どんな物を造ろうかと、今から想像が膨らむ。


 【身体強化】を使えば、膂力と丈夫さを、向上させることが可能だ。全力でやれば、あの巨大なビッグボアを、殴り飛ばせるくらいには強くなれる。これからは自分で、魔物狩りや、森での採取も行えることだろう。  


 だがその2つをもってしても、あの調味料の完成は、困難と言ってもいい。

 ところがワタシは、今非常にあの味に飢えていた。肉に振る塩も勿論欲しいが、今一番欲しいのは、やはりあの白い調味料の他にない。


「よ~し! さっそく森羅万象を使って、あの調味料を・・・・」


 そう思ったワタシは、あれが手に入る魔法を、【森羅万象】を使い願ってしまったのだ・・・・


 そう・・・・あのマヨネーズを・・・・





 現在ワタシが住んでいるこの村は、ボーロ村とよばれている。

 ボーロ村の人口は50人程と少なく、それはもう、集落と言ってもいい程小さな規模だ。

 主に麦を育てており、その大半が領主の土地で育てられたものだ。この村の村人は租税対象として、領主の畑で、その麦を育てることを義務づけられている。


 各々村の空いた土地で、作物を育てることは認められているが、その土地がまた狭い。村の周囲が魔物巣食う森で囲まれているため、ほとんどその土地が、得られないのだ。下手して森なんて切り開けば、最悪魔物の餌食にされてしまう。勿論森に入れば実りはあるが、危険が伴うため、森に進んで入る村人はまずいない。


 村長はこの村では暮らしておらず、身内にこの村の統治を任せているカワードという準貴族だ。いつ魔物が襲撃してくるか、わからないような危険な村なので、城壁のある安全な、シムザスの街で暮らしているという話だ。


 そんな危険があるにも関わらず、この貧しい村の防壁は、せいぜい木材をつなぎ合わせただけの、ボロい柵を設置するので精いっぱいだ。

 先日もその柵を破って、ビックボアが侵入し、大惨事になったばかりだというのに・・・・


 ワタシはそんなボーロ村の、カワード家の親戚の家に引き取られ、いつもこき使われてきた。それはワタシが両親のいない、拾われ子だからだ。ところが現在、怪我を負い働けないワタシに、あの家での居場所はない。

 

 そこで現在ヴィルおじさんの家に引き取られ、怪我の静養中なのだ。

 そんな中、張り切って草むしりを買って出たワタシは・・・・





「ぶはっ!?」


 気付くとワタシは再び、敷物の上に寝かされ、毛皮を掛けられていた。


「おう? 気が付いたかマヤ・・・・」


「ヴィルおじさん?」


 見るとワタシの側には、ヴィルおじさんがいて、ワタシを看病していた。

 どうやらここはヴィルおじさんの家のようだ。


 倒れて運ばれた? またこの家に?


 そうか・・・ワタシは草むしり中に、【森羅万象】のスキルを使って・・・・気絶して・・・・


「うそ!? たったの一回で!? しかも、もしかして失敗に終わった!?」


 ワタシが【森羅万象】に願ったのは、あの・・・マヨネーズを出す魔法だ。しかし残念ながら魔法一覧を見ても、それらしき名称が、記述されている様子はなかった。


「うわ~・・・・。奇跡ポイント損した・・・・」


 そして失敗したにも関わらず、奇跡ポイントは、消費されてしまっていたのだ。


 残り奇跡ポイント1・・・・


「なんという世知辛いスキルだろうか・・・・」


 ワタシはその失敗に、ただ戦慄する他なかった。


 ワタシは気絶する前の記憶を呼び起こし、何があったかを思い出す。二度と同じ過ちを繰り返さないように、事実を確認するのだ。


 ワタシが願った魔法はマヨネーズを出す魔法で・・・・その結果、【????】の魔法を、習得することになったが失敗・・・・。その原因は【????】の魔法の消費魔力が、ワタシの魔力を大きく凌駕していたことに他ならない。


「ヴィルおじさん、ワタシどれくらい気を失っていました?」


 心配そうにワタシの顔を覗き込む、ヴィルおじさんに尋ねる。


「3刻程だ・・・・」


 どうやらワタシは再び、6時間も気絶していたようだ。


 前回使った時には、ふらつきはしたものの、1回ぐらいの使用では、気を失うことはなかった。

 いったい前回と今回の使用には、どんな違いがあるというのだろうか?

 

 先ほどのワタシの願いを、実現させるには、おそらく無からマヨネーズを創る必要があった。それはもしかすると、ワタシが魔法で実現するには、大きすぎる願いだったのかもしれない。

 マヨネーズをつくるためには、やはり地道に素材を、集める他ないようだ。


 そしてこれまでに、【森羅万象】のスキルについて、わかったことが3つある。

 1つ目は、連続で使うと気絶すること。

 2つ目は、スキルが失敗に終わると気絶すること。

 最後に奇跡ポイントがなければ、このスキルは使えないということだ。


 そして現在の奇跡ポイントは、1ポイントしか残っていない。


「う~ん・・・・。とりあえずこの最後の1回分は残しておこう・・・」


 ワタシは最後の奇跡ポイントを、とっておくことにした。

 この最後の1ポイントは、もしもの時の切り札にでも、使えるかもしれない。


「マヨネーズは今回は諦めますか・・・」


 だがマヨネーズは今は無理でも、他に手に入る調味料はあるはずだ。その中でも一番重要な調味料が、全ての味の基盤と言える塩だろう。だからまず手に入れるとしたら、塩からだ。塩はかけるだけでも、食材の味が引き立つし、調味料の味を調えるのにも塩は必要だ。


 なら塩はどこへ行けば、手に入るだろうか? 塩は岩塩や海水から、手に入れることが可能だ。岩塩なら削って塩にできるし、海水は天日干しにすれば、なんとか塩が手に入るはずだ。だがこの辺りに、岩塩のある場所か、海などはあっただろうか?


 これは村を周り、情報を集める必要があるだろう。


「ヴィルおじさん! この辺りに岩塩はないですか!? 海はありますか!?」


 とりあえず近くにいた、ヴィルおじさんに尋ねてみる。

 

「だめだ・・・・お前には教えられん・・・・」


「ええええ! なぜですか!?」


「お前が隠れてこっそりと行きそうだからだ・・・」


 どうやらワタシの魂胆は、ヴィルおじさんには、見え見えだったようだ。


「それにお前・・・ちゃんと元気になるまで外出禁止な」


「そんな・・・・」


 どうやら【森羅万象】を使い、再び寝込だことで、ワタシの体力が本調子でないと、思われてしまったようだ。その後ワタシは、腕の怪我が完全に回復するまで、外出禁止を余儀なくされた。


 お読みくださりありがとうございます!!


 マヨネーズが好きな方★

 冒険が好きな方★

 食べるのが大好きな方★


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