06:マヨネーズの懸念とマヤ
「このマヨネーズとやらは・・・・十分に争いを引き起こす要因になるかと・・・・」
マヨネーズ入りのロールパンサンドを口にした、執事のラルフさんは、怪訝な顔付きでそう口にしたのだ。
マヨネーズごときで争いが!? そんな馬鹿なと思うが・・・・以前そのようなことをカロンに言われた記憶はある。
それはここらの強欲な王や貴族が、自己顕示欲を満たすために、このマヨネーズを利用することで、争いが起こるという話だ。
「貴女・・・・このマヨネーズのレシピをもう誰かに伝えたかしら?」
「いえ・・・その・・・・。そちらの獣人の姉妹には伝えましたけど・・・それ以外には・・・・」
そのフェリ姉ちゃんの、あまりに真剣な眼差しに躊躇し、ワタシの口調は、しどろもどろとなってしまう。
「そう・・・・それじゃあ・・・・」
フェリ姉ちゃんは一度、ラルフさんと目を見合わせ、何かを納得しあうように頷き、そして再びワタシを見て口を開いた。
「そのレシピ・・・・私のお父様に託してみる気はない?」
そう言えばフェリ姉ちゃんも、強欲と言われた貴族の一員であるし、マヨネーズを出したのは早計だっただろうか?
『もしかして君の父親というのは、オルレアン・オルブラント公爵なのだろうか?』
するとカロンがここで、口をはさんだ。
オルブラント公爵家? もしかしてオルブラント公爵家とは、カロンが以前話していた、平和的な思考の為政者だっただろうか?
だとしたらマヨネーズのレシピを託すには、うってつけの相手となるはずだが・・・・
「そのとおりです聖獣カロン・・・・私の父はオルレアン・オルブラント公爵その人です・・・・」
この国で公爵家と言えば王族の親戚にあたり、貴族の中では最も高い地位をもつ家柄でもある。そうなるとフェリ姉ちゃんは、公爵令嬢ということになる。そんな公爵家のお嬢様が、まさかこんな辺鄙な場所に、現れるとは思いもよらなかった。
そしてこれはワタシにとって、またとないチャンスでもある。
「はい・・・・。マヨネーズのレシピを託すなら、ワタシも貴女のお父さんが・・・オルブラント公爵が相応しいと思います・・・・」
「決まりね・・・・。それではマヨネーズのレシピは、この日以降秘匿してちょうだい。セリアもメルも頼んだわよ?」
「「「はい!」」」
フェリ姉ちゃんの言葉を聞いたワタシ達3人は、フェリ姉ちゃんにそう返事をした。どうやらこれで、マヨネーズを広めるための未来が、見えて来たようだ。
「問題は避難民の森での移動についてよね・・・・」
昼食を終えた後、フェリ姉ちゃんは、そんなことを呟いた。
ラザ村の避難民20人は、この猫砦で引き受けることで話はついている。だが問題は森を抜けてここまで、どうやって彼らを護衛して連れて来るかということだ。
ラザ村の避難民20人の移動ついては、フェリ姉ちゃんとラルフさんで、護衛することに決めているようだ。だがそれでは護衛の数が足りず、その足りない護衛を、どうしようかとフェリ姉ちゃんは悩んでいるのだ。それだけの人数を護送するなら、最低でも10人は、護衛が必要ではないかと思われる。
『ボクがその護衛に加わってもいい・・・・』
「本当ですか聖獣カロン!?」
まさかあまり人の事情に、首を突っ込みたがらないカロンが、避難民の護衛を買って出るとは思わなかった。いったいそこにどんな魂胆が、あるというのだろうか?
『ボクなら人の護衛数人分の働きはできるけど・・・それでも避難民20人の護衛にはまだ心もとないよね? 出来ればあと3~4人くらいのメンバーが欲しいところだ』
カロンなら瞬時に敵を凍らせて、排除することが可能だ。だがそれも限られた範囲でのことなので、離れた位置に敵がいた場合、瞬時に対処が可能かどうかは疑問だ。
「そうですね・・・・。今の護衛ではとても足りませぬ・・・・」
それを察していたのか、ラルフさんも同意した。
『それじゃあやっぱりマヤに力を借りるべきだよね?』
「はあ!? そこのちびマヤにですか!?」
フェリ姉ちゃんのワタシに対する当たりがたまに強い件・・・・
どうやら唐突に出たカロンの提案に懐疑的なようだ。まあこんな幼女が戦力になると言われても、否定したくなる気持ちはわからなくもない。
『マヤは見た目に寄らず強いんだよ?』
「聖獣カロンがそうおっしゃるのなら・・・そうなのかもしれませんが・・・一度マヤ殿の実力を見せていただいてもよろしいですか?」
『ボクはそれでも構わないさ・・・・』
カロンはまるでワタシの意思を確認するように、ワタシに意味ありげな視線を向けた。
「貴女はどうかしらマヤ? 避難民の護衛に協力する気はあるかしら?」
そしてフェリ姉ちゃんは今度はワタシに向き直り、ワタシの気持ちを聞いてきた。ワタシの実力を見せるも何も、まずはワタシの意思を、確認してからと思ったのだろう。
「避難民の方々を、放っておけないという気持ちはワタシにもあります。できれば護衛には参加しようかと思っています」
ワタシにも避難民のことは、放っておけない気持ちはある。正直怖いし面倒だという気持ちもあるが、そこで放置すれば気に病むのは自分だ。
「それじゃあラルフ・・・・お願いできるかしら?」
「御意に・・・・」
どうやらワタシはラルフさんのお眼鏡にかなえば、護衛として参加できるようだ。大方ワタシの剣の実力でも、試すつもりだろう。
「私もその護衛に参加したい!」
「メルもだよ!」
するとセリアちゃんとメルちゃんが、自分達も護衛に参加すると言い出した。同じラザ村の出身者である避難民達を、放っておけない気持ちはわかる。
「いいでしょう・・・・。一度貴方達の実力も、この老骨が拝見いたしましょう。その上で適任と見ることが出来れば、貴女達も護衛に加えるとしましす」
「「わあああい!!」」
するとあっさりと2人の実力も、ラルフさんが見ることになった。2人の魔法はお世辞にも、戦闘に役立つとは言えない。だが最近2人は身体強化を使えるし、ラルフさんに対しても、それなりに善戦できるのではないだろうか?
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