22:マークベンとマヤ
「はあ・・・・はあ・・・・」
ワタシは大きく息を切らせながら、再び正眼に構えなおした。
ワタシと男の剣とでは、明らかに大きな経験の差があった。目の前のそいつを倒すためには起死回生の何かが必要だ。
「やっかいだね~・・・・。その異常なまでの丈夫さと、運動能力は・・・・」
目の前の男は息一つ切らさず、ゆっくりと今度は、正眼のような構えをとる。正眼の構えとは、攻防に優れた、最もバランスのとれた構えと言ってもいい。攻防一体の構えに切り替えることで、長期戦に持ち込む算段だろう。こちらの傷を徐々に増やし、消耗戦に持ち込むつもりだ。こちらはすでに数か所の浅い切り傷があるが、一方男の方には、傷1つどころか、体力の消耗すら見えない。このまま長期戦に持ち込まれれば、不利になるのはワタシの方だろう。
このままでは徐々に削られ、負けるのはワタシだ・・・・
この場面で状況を覆すとしたら、やはりあの【森羅万象】のスキルしかないだろう。ただ【森羅万象】のスキルは、使用時にしばらく動けなくなるため、それが大きな隙を生む。使うとしたら戦闘前の準備段階での使用がこの好ましい。だが目の前の男を、口車に乗せることができればあるいは・・・・
「実はワタシにも1つ・・・・スキルがあるんですよ・・・・」
「ほう? その異常なまでの丈夫さと運動能力は、スキルの影響ではないのかい?」
「これはただの身体強化にすぎませんから」
「身体強化? 魔力が高いものは、身体強化も強いと聞いたが・・・・なるほど・・・・だが身体強化もスキルの1つなんだがね?」
身体強化がスキルの1つ? 目の前の男は、いったい何を言っているのだろうか?
ワタシの習得魔法一覧には、確かに身体強化が記述されている。しかも身体強化は、生命魔法に分類されているのだ。もしかして普通は違うのか? ワタシの方が可笑しい?
「ああ・・・・ワタシのスキルは、身体強化だけではありませんから」
とりあえずここは、男に話を合わせておくのがいいだろう。スキルの詮索云々は、あとでカロンにでも確認すればいい。
「ほう? それでそのスキルとは・・・どんなスキルなんでぇ?」
喰いついてきた!
目の前の男は戦闘狂で、剣が大好きだと見た。ならスキルの話でもすれば、必ず食いついて来ると思ったのだ。
「ちょっと出す前に隙が大きくて、迂闊に出せないスキルなんですよ・・・・まあ、出せば確実に貴方くらいは倒せるでしょうけどね?」
「ほう!? そいつぁあ面白そうだ! では待ってやるからよぉ・・・そのスキルとやらを見せてくれねえかい?」
この男馬鹿なのだろうか? いや・・・この男には絶対的な自信があるのだ。どんなスキルも見破り、跳ね返すほどの自信が・・・・
『マヤ止すんだ! そのスキルは今使うには危険すぎる!』
するとカロンがワタシの行動を悟ったのか、そんな念話を送って来た。
『君は自分を過小評価しすぎなんだよ! 君にはそんなスキルに頼らなくても、その男を倒せるだけの力はあるんだ!』
そんなことを言われても、ワタシにはそうは思えない。
「本当にそうでしょうか? 目の前の男は・・・・思った以上に修羅場をくぐってきています・・・・。あのスキルなくしては・・・・どうあがいても勝ち目はないように思えます」
『はあ・・・聞く耳は持ってくれないみたいだね? そのしりぬぐいはボクがするんだろうけどね・・・・。まあいいだろう・・・・。遠慮なくその厄介なスキルを使うといいさ・・・・。やれやれ・・・・。その頑固さを直さないと、君はいつか本当に命を落とすことになるよ?』
するとカロンは思ったよりもあっさりと引き下がった。まるでこうなることを、予測でもしたいたような感じだ。
「ありがとうございますカロン・・・・」
「どうやら聖獣との話し合いは終わったようだなぁ? それでスキルを使う許可は出たのかい?」
目の前の男は、ワタシとカロンの会話を、見抜いていたようだ。まあワタシのバレバレの行動が原因だろうが・・・・
「ええ・・・・。それでは遠慮なく・・・・スキルを行使させていただきます!」
「ほ~う! ぞくぞくするねえ!」
ワタシの言葉を聞いた男は、正眼のような構えをとったままで、こちらに対する警戒を強める。
「スキル・・・森羅万象!!」
そしてワタシは【森羅万象】のスキルの、行使を開始した。
一撃でいい・・・目の前の男を倒せるような、そんな手段がワタシは欲しい・・・・
するとそのワタシの願いに答え、【森羅万象】のスキルが、そのイメージを描いていく。
それはある達人が一生のうちで、ただ一度だけ放つことができた、奇跡の一撃だ。
その名も【突きの達人】という。
【突きの達人】は精神魔法と生命魔法の合成魔法であるようだ。そして【突きの達人】がワタシの魔法に追加された。
習得魔法一覧
水魔法 【操水】
土魔法 【操土】【操鉄】【結晶抽出】
生命魔法 【身体強化】【治療】
光魔法 【浄化】
闇魔法 【黒渦】
精神魔法 【思考加速】
植物魔法 【植物改良】
合成魔法 【魔石操作】【突きの達人】
そしてワタシの残り奇跡ポイントが消費され残り4となった。
残り奇跡ポイント4・・・・
ワタシが【突きの達人】を使うと、大きく魔力が消費され、その疲労感が一気にワタシに押し寄せる。
だがここで倒れるわけにはいかない!
ワタシは歯を食いしばり、足をしっかりと地に付ける。
その突きは霞の構えから繰り出される究極の突きだ。本来霞の構えは攻防一体の構えで、特に左面と正面からの攻撃に、有効な構えである。だが今回のこの構えは、その本来の目的とは違うようだ。攻撃面に重点を置き、ただ突きのみに特化した攻撃を繰り出すのだ。
「ほう? それはオックスだね・・・・。実力を隠していたわけではなさそうだが・・・これはどういったわけだ?」
男は困惑しつつも、ワタシの構えを見つめる。オックスの意味はわからないが、男がこの技についての、何らかを知りえたのは理解できる。だが今更この【突きの達人】を止めることなど到底できない話だ。
「最後に名前を伺っても?」
殺すことへのためらいからか、ワタシの口から、そんな言葉がついてでた。
「はは! 最後かい? 怖いねえ・・・・。あっしはマークベンてんだ。冥土の土産にもするといいさぁ」
「ワタシは・・・マヨネーズです・・・」
その名を口にすると同時に、ワタシのその突きは繰り出された。
その突きは不思議な突きだった・・・・
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