13:獣人と魔法それからマヤ
「聖獣様・・・・。私にも魔法を教えてくれないかな!?」
そう切羽詰まった様子で切り出したのは、セリアちゃんだった。
ワタシはボーロ村の様子を窺い、知恵の実の木を回収した後、猫砦に帰還したのだ。猫砦の畑の付近にカロンは着陸し、丁度ワタシがカロンから降りたその時だった。少し様子が変なセリアちゃんとメルちゃんが駆けて来て、挨拶済ませると、セリアちゃんがそう切り出したのだ。
『・・・・・』
カロンはセリアちゃんの、その頼みごとの内容を聞いて黙り込んでしまった。その表情には少し含みがあるようにも見えた。
「えっと・・・・なんで魔法を?」
とりあえずワタシがカロンの代わりに、対応することにした。
「私・・・! 強くなりたいの! 妹を守るために・・・もう何も失わないために!」
セリアちゃんは目に涙を浮かべながらそう訴えかけて来た。
『君は獣人が魔法を使ったという話を耳にしたことはあるかい?』
そんなセリアちゃんに向けて、カロンは静かにそう口を開く。セリアちゃんはカロンのその言葉を聞いて、表情が曇り、今にでも泣き出しそうだ。
この国の獣人が、魔法を使ったなんて話は聞いたことがない。それどころか獣人は、魔法には適さない種族とされているのだ。
「試してみるだけならいいじゃないですか?」
『君はこの国での獣人の立場を理解しているかい?』
「立場ですか?」
『この国で数少ない獣人は、弱者で汚れた存在だとされているのさ。魔法はこの国では力の象徴だよ? そんな魔法を獣人が使いこなせばどうなると君は思う?』
弱者が力を持った途端に、豹変するという話は良く聞く話だ。その結果起こるのが反乱だ。つまりカロンは、それが戦争の引き金にならないかと、言っているのだろう。
戦争ははっきり言って、ワタシも嫌いだ。だからと言って力を奪い、押さえつけるようなやり方はワタシは嫌いだ。戦争や反乱なんて、起こさせなければ良い。この国に不満があるなら、戦争や反乱以外に、何か手段を講じればいいのだ。
ワタシはそれをカロンに、熱烈に語って聞かせた。
『君は人というものがわかっていない・・・・。でも君は・・・・君がそう願うなら、そうなるのかもしれないね・・・? 君は神のお気に入りだからね・・・・。でもそれはそれで、道を誤らないように、考えなければならないよ?』
道を誤る・・・・。その言葉は前世で紆余曲折した人生を送ったワタシの心にはよく響いた。
『セリアに魔法を教えるなら君がやるといい・・・マヤ。君ならそれが可能なはずさ・・・』
そう言うとカロンは子猫の姿になり、そのまま姿をくらませた。
「あの・・・・。マヤちゃんは聖獣様に魔法を教わったんだよね?」
やっぱりそうなるか・・・・。セリアちゃんはワタシが使う魔法を、カロンから教わっていたと思っていたようだ。
「ワタシには色々と複雑な事情がありますので、魔法に関しては説明しづらいというかなんというか・・・・」
セリアちゃんに森羅万象のことを明かすのは、危険な気もする。彼女はまだ子供だし、どこでうっかりと口を滑らすかわからないからね。
「魔法はワタシが教えますよ・・・・というか目覚めさせてあげられるかもしれません・・・」
ワタシは知恵の実を食べて、魔法が使えるようになった、ペトラちゃんのことを思い出していた。はっきり言って、知恵の実を食べたからと言って、魔法に目覚めるかどうかなんてわからない。それでも試して見る価値はある。
「お姉ちゃんだけ狡い! メルにも魔法教えてよ!」
するとメルちゃんまでもが、そんな我がままを言い出した。
「仕方ありません・・・・。2人まとめて面倒を見ますよ・・・・」
「やったあああ!!」
だが問題は知恵の実の木をどこに植えるかだ。うかつに人の目に触れる場所に植えれば、それこそ何が起こるかわからない。なるべくこの猫砦のどこかの、目立たない、見付からない場所に植えるのがいいだろう。
「2人にはまずこれを食べていただきます・・・・」
翌朝ワタシは、セリアちゃんとメルちゃんの目の前に、知恵の実の切り身をのせた皿を置いた。知恵の実の切り身を食べて、魔力を増やさないと、魔法を使う以前の問題だ。
知恵の実は一切れだけでも効果があるし、それ以上は食べても、その日は効果がない。一切れ食べた後は、一日あけて食べるのがベストだ。
「これってあのリンゴだよね?」
「少し赤く光っているよお姉ちゃん・・・・」
リンゴはこの猫砦でワタシが何回かご馳走したので、2人ともよく知っている。だが知恵の実を食べるのは初めてのはずだ。
「まあ・・・光ってはいますが普通にリンゴですよ・・・」
ワタシは知恵の実の名は明かさず、2人に知恵の実を与えることにした。
「シャリシャリ! 甘~いやっぱりリンゴだ!」
「そうね・・・・。ただのリンゴね・・・・」
躊躇なくそれを口にするメルちゃんに対し、お姉ちゃんのセリアちゃんは、恐る恐るという感じだ。まあ知恵の実の味は、リンゴとそう変わらないからね。
そして魔法の訓練といっても、ワタシに出来ることはそれ以外にない。後は適当にこの世界での生活の仕方や、狩りの仕方を覚えてもらおうと思っていた。
「狩りならお父さんに教わりながら、それなりにやったわよ」
ところがワタシが彼女らに教えられることはあまりないようだった。彼女らは父親から、この世界での生活の仕方を、それなりに教わっていたようなのだ。
「たまにお父さん持って帰る鳥の卵がとても美味しかったね!」
なんですと!? もしかしてこの子らは、マヨネーズの原料であり、ワタシの求めてやまない、卵の在りかを知っているのだろうか!?
「き、君達は・・・・た、たたた卵の在りかをご存じで!?」
余りの興奮にワタシは、口調がおぼつかなくなってしまう。
「え、ええ。鳥の卵の探し方なら・・・時々お父さんから教わっていたから・・・・」
そのワタシの落ち着かない様子に、躊躇しながらセリアちゃんは答える。
どうやらワタシはこの子達に何か教える以前に、教わることが出来てしまったようだ。
そして卵が・・・ついにワタシの手に・・・・!!
『えっと・・・・。随分とまったりしているようだけど・・・・聖騎士軍がいつ攻めてくるかわからないのは覚えているよね?』
するとカロンがそんなワタシの気持ちに、水を差すようなことを言って来た。
「勿論覚えていますとも!! ただワタシにとっては聖騎士軍より卵が重要ですから!!」
『さすが美食の聖人だよ君は・・・・』
呆れた様子で、そんな風に厭味ったらしく言われても、ワタシにとってマヨネーズは最重要事項なのだ。
奴らがどんなに邪魔しようと、卵だけは必ず手に入れますとも! 絶対に・・・・!
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