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新星間戦記CIVILIZATION  作者: RYUJIN
第一章 地球圏奪還編
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14/20

宇宙港での戦いと出会い

 ラビッシュ出発からおよそ十五時間後、機動戦艦シルフィードは地球衛星軌道宇宙港に接近していた。


 地球衛星軌道宇宙港は地球から外宇宙へ向かう玄関口として、全宇宙で一番民間利用者数が多い宇宙港である。


 主には惑星リソラへ向かう民間跳躍宇宙船や月面定期就航便などの民間船が利用する宇宙港だが、連合国家宇宙軍の艦隊が停泊して補給などを行うことも可能である。


 宇宙港構造体は五百キロ四方程度の大きさがあり、それが幾層か重なって十五キロほどの高さになっている。


 大型軍用艦一個艦隊が停泊でき、概ね二日程度で補給整備をする能力を持つ宇宙有数のメガポートである。


 速力の早い機動戦艦シルフィードはいち早く宇宙港に到着した為、集結までの時間を宇宙港で待機することとなった。


 船橋(ブリッジ)の全天球スクリーンには巨大な宇宙港の構造体が映っていた。


「艦隊集結までは数時間程度かかるはずだから、本艦は停泊して待機することにする」


「やったー!久しぶりのお買いものなのです!」


 民間船も多数入港する地球の玄関口であり、超巨大構造体である宇宙港は内部に小規模の都市が存在し、ショッピングモールや娯楽施設も多数存在する。


 クラリスはしばらくアマテラスに滞在していたので久々の宇宙港停泊に期待で胸を膨らませていた。


「でも、月で有事になっているから休業しているお店がほとんどじゃないかしら」


 そんなクラリスの期待をイリアスはバッサリ切り捨てた。


「む・・・無念なのです・・」


「・・・・まあ、しかしながら宇宙港に住んでいる住民もいるわけだし、何か少しくらいは営業している・・と思う」


「そうなのです!クラリスは宇宙港で有名なカフェでケーキセットを食べるのです!」


「まあ、行ってみるといいさ。俺はデビッドに何かいいワインでも買っていくか・・」


「火星の艦隊を撃退したらデビッドの艦に戦勝祝いに接舷して持って行ってやろう」


「それはいいですね。お供します」


 セレナは久々の三人再会を期待して微笑んだ。


「ジェス、宇宙港管制より入港許可が下りました」


「ドック侵入路情報を受電、自動航行で接舷します」


「居住区に近いドックだといいな」


 宇宙港のドックは地球のように箱型ではなく桟橋が伸びており、それに直接艦を接舷して宇宙空間上に停泊した艦船に宇宙機やロボットアームを用いて補給を行うようになっている。


 また、宇宙港構造体は非常に大型である為、停泊場所によっては居住区や商業区まで数十キロ離れる場合もあるのだ。


 しばらくして、自動航行した機動戦艦シルフィードは無事に宇宙港桟橋に接舷した。


 機動戦艦シルフィードの艦内交通システム(オートラス)は混雑していた。


 セレナは月までの航路設定の為艦内に残るらしく、クラリスとマープルは接舷して早々に二人仲良く宇宙港へ向かった。


 どうやら調べたところ話題のカフェは営業しているらしい。


 それにしても似たもの同志なのか二人の仲良くなる速さにジェスは驚いた。


 ジェスはタイミング的に一緒になったイリアスとともに宇宙港へ向かった。


 艦隊司令官であるジェスと少尉であるイリアスは艦内でも上官にあたる為、艦内交通システム(オートラス)の座席を譲られたが固辞して立ち乗りをした。


「イリアスは宇宙港に入港したらどこか買い物でもするのか?」


「ええ、電動二輪の部品を見に行くのよ。ここの商業区にあるお店がなかなか品ぞろえが良くってね」


「へえ、イリアスは電動二輪に乗っているのか」


「ええ、宇宙港とか停泊時の移動にも便利だし、いざというときは乗りながら戦えるしね」


「電動二輪に乗って戦う時なんかあるのかよ」


「・・・あら、前大戦のリソラでの戦いの時は降下強襲してきた革命軍のSA(スレイブ・アーマー)とハイウェイを走りながら戦ったわよ」


「電動二輪で走りながらSA(スレイブ・アーマー)と生身で戦うやつがいたんだな・・・」


「生身でSA(スレイブ・アーマー)を切り捨てた『紅蓮の貴公子』さんに言われたくないわよ」


「・・まあそうなんだけどな」


 二人が話をしている間に艦内交通システム(オートラス)は艦内駐車場に到着した。


 しばらくイリアスに続いて歩いていると、銀色の大型バイクが停まっている場所まで来た。


「どう?よかったら乗っていく? 商業区まで送るけど」


「本当か? ならお言葉に甘えようか」


 そういうとイリアスは電動二輪に颯爽と跨って後ろのタンデムシートをポンポンと叩いた。


 ジェスもすぐにタンデムシートに跨る。


 するとイリアスの綺麗な銀髪から甘いような何とも言えないいい香りがしてきた。


「飛ばすからしっかりつかまっていてね」


 ジェスは言われたとおりにイリアスの細い腰に手を回した。


(なんかすごいいい匂いがするし、細いけどなんかやわらかい感触だ・・)


 ジェスがそんなことを思っているのをよそにイリアスは電動二輪に手をかざして電源を入れる。


 イィィィィィィィィンー。


 スピードメーターが投影されると同時に前後ホイールに内蔵されている超伝導モーターの高周波音が響いた。


目為(メナス)・・・起動っと・・・オーバードライブ!」


「・・・・・へ?」


 戦闘でもないのにイリアスの口から洩れた物騒な言葉に驚いたのは一瞬であった。


 ギュゥゥゥゥゥン!


 まずすさまじいスピードでバックして車庫から飛び出す。


 思わぬ不意打ちにジェスはイリアスの背中に顔面を打ち付けた。


 再び髪の毛に埋もれていい匂いがしてきたがそんなことを言っている場合ではない。


 ズギュゥゥーーン!


 そして今度は吹き飛ぶような勢いで電動二輪が加速しながら前進した。


 ジェスはとっさにイリアスにしがみつく。


「っち、ちょっと!どこ触ってるのよっ!」


 動揺しているイリアスの背中越しにスピードメーターを見てみると、三百八十キロも出ていた。


「ちょ、おま・・・スピード出しすぎ!」


「だから事故らないように目為(メナス)とオーバードライヴを駆使しているでしょ」


「いや、使いどころ・・・・おかしいだろーーーーーーーーーー」


 ジェスの声を置いていきながら銀の電動二輪は爆走した。


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 商業区に到着したジェスは電動二輪ショップに向かうイリアスと別れて青い顔をしながら歩いていた。


(イリアスの電動二輪には二度と乗らないからな・・・・)


 そう心に誓いながらとぼとぼと歩いていると、商業区でも比較的入り組んだ地域に到着した。


「ここらへんに珍しいワインがおいている店があったはずなんだが・・・・」


「・・・こら!きさ・・・・・大人し・・・ろ!!!」


「・・・・たちごときに捕まる・・んですか!」


 そう一人言ちながら歩いていたら、何やら男女の不穏な声が聞こえてきた。


(ん?揉め事か・・・?)


 ジェスも軍人である以上、民間人へのトラブルを見過ごすわけにはいかない。


 ジェスはその声の元へすぐに向かった。


 向かった先は袋小路になっており、一人の少女が十人くらいの怪しい男たちに追い詰められている。


 追い詰められた少女は黒色のつややかなセミロングの髪をサイドテールに束ねており、きれいな青色の瞳をしていた。


 そして地球連合国家の軍服を着ており、その意匠からSA小隊長クラスのものであると見受けられる。


 少女の両手にはトンファーのような武器が握られていた。


 軍人であれば多少体術の心得はあるはずだろうが、少女はどう見ても追い詰められている状態だったのでジェスは加勢することにした。


「大丈夫か!?」


 ジェスの声を聞いて少女を追い詰めていた男たちが一斉に振り返った。


「くそ!仲間がいたのか!」


「多少計画は狂ったが一人でも拘束できたらそれでいい!皆、かかれ!」


 そういいながら全員慣れた手つきで武器を持ち、攻撃してきた。


 統率された動きから戦闘慣れしていると思われたが、そのさらに上を行くジェスにとってはわざわざオーバードライヴを使わなくても良いくらいの速度であった。


 ドガッバキッ!!


「ぐあっ!」


「うわっ!」


 ジェスは手早く体術で大半の相手を無力化した。


 シュィィィィィン!


「はっ!せい!」


 ズバッ!ズシャ!


「うぁぁぁぁぁ!」


「ぐはっ!」


 どうやら追い詰められていた少女も手持ちのドンファーからビーム状の刃を展開し、高速回転させながら相手を斬りつけていた。


「く・・・やはり軍人を人質にするのは無謀だったか」


 そういいながら最後に立ち上がった一人が腰に装着した対人ビームソードを構える。


 このひとりだけは他よりもかなり手練れな様子に見えた。


「はぁぁぁぁ!」


 ジェスに向かって男が向かってくるが、素早くエーテルソードで応戦する。


 もちろん手練れとはいえ常人が持つビームソードとエーテルソードが切り結べるわけがなく・・・・

 男が展開したソードごと相手の体を何の抵抗もなく袈裟斬りにした。


「ばか・・・・・な、エーテル・・ソード・・だと」


 斬られた男は両腕がぼとぼとと落下し、上半身が斜めにずり落ちていきながら驚愕の顔を浮かべて絶命した。


 それを見ていた少女もジェスを驚いたような表情で見ていた。


「・・・・あ、ありがとうございました! おかげで助かりました!」


「いや、もしかしたら俺の手助けもいらなかったかもしれないけどな」


「そんなことはありません、不意打ちとはいえ不利な状況であったことは変わりませんし!」


「それより()()()()()()エーテール兵器が使えるんですね!やはり『紅蓮の貴公子』の名は伊達じゃありません!」


 そういいながら少女は目を輝かせていた。


 どうやら向こうはジェスのことを知っているらしい。


()・・というと君もエーテル兵器を使えるのか?」


「はい、普段はエーテル兵器としては使いませんがこのトンファーがそうですよ」


 そういいながら少女が手持ちのトンファーをみせる。


 このトンファーはグリップを持つと筒状の本体の先からブレードが出てきて回転する機構がついているようだった。


 よく見るとグリップエンドから伸びたケーブルが腰の目為(メナス)本体へと伸びていた。


 確かにエーテル兵器らしく、それを使えるということはかなりの戦闘能力を持っているのは間違いなさそうであった。


 すると少女は思い出したかのように敬礼をした。


「このたびはありがとうございました、ジェス大将!私はマオ・ヤンウェルン少尉です!機動戦艦シルフィードSA(スレイブ・アーマー)小隊長をしております!」


「・・まさか同じ艦の乗組員だったとは・・世間は狭いもんだな」


「・・・ひとまず気絶している人たちは拘束して軍警察に引き継ごう」


「しかし、なぜ襲われていたんだ?」


「はい、実は私この宇宙港に珍しいお酒がたくさん置いてあるお店があると聞いて買い物に向かっていたのですが・・」


「私の服装を見て軍人とわかったんでしょうか、おそらく拘束して何らかの方法で停泊している艦隊の旗艦の場所を聞き出して潜入の手筈を整えようとしたのだと思われます」


「ということは、火星の人間である可能性が高いな」


「はい、現状月で睨み合いをしているうちにこのような工作員が多数潜入している可能性が高いと思います」


「確かに、地球側が増援を手配していることはすぐにわかることだし、確実かつ安全に増援艦隊を無力化するには工作員を送るのは十分に考えられる」


「いずれにしても、こいつらを拘束して尋問すればわかることだろう・・」


 マオと話をしているうちにすぐ軍警察がやってきて、ジェスを見ると驚いたような表情を浮かべながらもてきぱきと男たちを回収していった。


「そういえば・・・ジェス大将」


「ジェスでいい・・大将なんて柄じゃないからな」


「・・はいわかりました・・・そうしましたらジェスさん、ジェスさんはこんなところまで来てどちらへ向かう予定だったんですか」


「・・おれは友人への土産にワインをね・・」


 それを聞いた瞬間マオの目が輝いた!


「ワインですか!私お酒大好きなんです!自慢じゃないんですがワインも結構集めていて詳しいんですよ!よかったら一緒に行きませんか!おすすめのワインがあるんです!」


「お、おう」


 お酒の話になった瞬間にマシンガンのように話してくるマオにジェスは驚きながらもうなずいた。


 こうして思わぬ同行者と一緒にお酒探しのお買いものへ戻ることとなった。






~設定資料~


イリアス専用電動二輪 シルバーアロー改


イリアスの愛車でありもともとは市販のものであるが、イリアスの趣味ということもありすでに原型を留めていないくらいの改造が施されている。

ジェスが『紅蓮の貴公子』になるきっかけとなった惑星リソラでの戦いではこのバイクを駆りながらグラビティーマグナムで革命軍のSAを撃破していた。



K.Cモーターサイクル製 大型電動二輪 シルバーアロー イリアスカスタム

全長 2800mm

全幅 820mm

全高 1170mm

ホイールベース 1720mm

車両重量 210kg

乗車定員 2名

原動機 ホイール内蔵超伝導モーター(イリアスカスタム) 両輪駆動

最高出力 280kw

最高速度 420km/h

電源 ニ型液化グラビディウム電池1本

最高航続距離 4000km(60kg 1名乗車時) 



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