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翡翠の魔女2

「あはは、先輩、いい感じですね。でも、ここからですよ。」

翡翠は余裕の顔、一方の有紀は魔術の処理限界なのか苦しそうだ。

俺は彼女が苦戦する所は今回初めて見る。

と、翡翠が先ほどまで組んでいた腕を解く。

「先輩、知ってました?魔女が使う魔術、人間の中では『古式魔術』って言われてるんですよ。」

「へ、へえ…。そうなんだ…ね。」

「もう、先輩久しぶりに会ったんですから、もっとキリっとしてくださいよ、昔みたいに。」

「残念だけど、ボクの限界ってやつだよ。思い出と違ってごめんね?」

「ふう…まあいいや、聞いてください先輩。今魔術士の中では魔術の構築をより効率化させた『新式魔術』が主流なんです。」

そう言いつつ、手を有紀に向ける。

「…うっ!」

慌てて有紀が飛びのこうとして失敗する。無数の稲妻が有紀に落ちてくる。

「うああああ!」

幾つかはウォールで防ぐが、それでも防ぎきれない分が有紀を直撃する。

「む、勝負が動き出した。」

陽光が身を乗り出す。

「え?…え?」

俺はまだついていけてない。まだ有紀が被弾しただけじゃないの?

「違うんだよ修司君。有紀は処理量で負け始めたんだ。先ほどまで拮抗してた応酬を超えて翡翠の魔術が発動した、ということだからね。」

「しかも、龍眼の魔女はウォール…防御に処理を回し始めましたから、更に翡翠の魔女の魔術を妨害するために処理能力を割けませんし、ここからは一方的な展開になってしまいますね。」

エミリーの解説に加え新月の魔女(ネコミミ)が付け加える。

モフモフしたい気持ちはさっきまであったけど、それどころじゃないな。有紀が押されるっていうのは俺は想像もしたことなかったな。

「あはは、先輩!古式魔術は場所の指定も術式に組み込んでましたけどね、こうやって手や杖を使えばその部分が省略出来るんですよ。分かります?処理量が同じなら新式魔術のほうが発動が早いってことですよ、先輩!」

更に稲妻を落す、落す、落す。

有紀も避ける、ウォールで防ぐ…。健闘するも防ぎきれない分は全て食らう。

「ぐうううううう!!」

一通り攻撃を終えると、翡翠の魔女は手を下ろす。

有紀も有紀の周りも焦げたようになって煙を上げている。魔女がこれだけのダメージを負うのは要するにそれだけの威力を大量に食らった証拠とも言える。

「有紀…!」

俺はそんな有紀を見て辛いと思う。こいつは小さい頃からピンチのときは俺が助けてたから、やっぱり今も助けに行きたい。…まあ俺の力じゃ無理なんだけどね。

「はあ、先輩…いや、龍眼の魔女!貴女、その程度なんですか?私がその程度の女に敬意を持ってた、というのが我慢ならないんですけど?ねえ!」

翡翠の魔女は今度は足を上げ、そしてドン!と下ろす。

有紀の倒れてる場所が一気に盛り上がる。

ロック、初級魔術だけど魔女が全力で使えば10メートル近くまで隆起するようだ。

勢いよく盛り上がった岩に有紀は吹き飛ばされる。

「ぶは…!」

顔面を打たれて鼻血を出しながら吹っ飛ぶ。

高く舞い上がった有紀は受身も取れず地面に叩きつけられてしまう。

「はあ、龍眼の魔女…龍…、私が欲しかった綽名なんですよね…。」

翡翠の魔女はもはや有紀には目を向けない。

エミリーに目を向けて言う。

「ねえ、次元の魔女様。私が勝利したらこの魔女の綽名、私にください。」

「うーん…、どうしようかな。」

エミリーは考えているようだけど、何を考えてるのか俺にはわからない。

「今の彼女に『龍』は似合いますか?こんな弱小魔女に!」

なおも翡翠はエミリーに食い下がる。

この魔女、相当有紀に恨みを持っていたようだ。でもそんなに「龍眼」の綽名が良いのだろうか?

欲しかった綽名も相応の強さを有紀が持っていたからこそ、翡翠の魔女は自分を納得させられたし、敬意を持って接することが出来たのだろう。

だが今の有紀は、翡翠の魔女にボコボコにされてるわけで…。

「うーん、困ったな。修司君。有紀からあの子に龍眼の名を与えようと思うんだけど、パートナーとしてはどう思う?」

「え?…え?」

そこで俺に話を振るの!?

ザワザワと周りの魔女の視線が痛い…。俺がどんな答えを出すのか気になっているようだ。

俺としてはこのまま勝てない勝負をされるよりは、綽名よりも有紀にはこれ以上苦しんで欲しくない。

「俺は…。」

と言いかけたところで、エミリーが更に言う。

「そうだ、勝った方には『龍眼の魔女』の綽名と共に、彼のパートナーとなる権利を上げようかな。彼はヴィルヘルムから来た男でね、翡翠の魔女、キミのクランに入れれば将来有望な冒険者になるよ。」

「…なるほど。確かに召喚された異邦人は女神から加護を貰ってますよね。クランとしてはランク0並の期待が出来るなら欲しいですけど。でも彼、加護貰ってないですよね?」

「だから、だよ。女神の加護がないからこそ、魔女の加護を与えられるでしょう?キミの望む能力を与えれば良い。」

「ちょ、ちょっと待」

待ってくれとも言い切る前に会話が展開されてしまう。なんだよこれ。

「うーん、良い提案ですね。綽名と異邦人、どちらも手に入れられるわけですからね。」

翡翠の魔女はニッコリとする。俺を見る目は興味と言う目じゃなくて…。

「俺、道具みたいに扱われそうなんだけど。」

「いやあ、流石にそれはないと…思うけどね…。」

俺がボソっと言った一言に対するエミリーの返答もなんか自信なさげだった。

マジか…俺は有紀と居たいんだからこういうことされるのすげえ嫌なんだけどな!

と、腹を立てたところで陽光がボソっと耳打ちしてくる。

「大丈夫、龍眼が勝つよ。」

勝った方が龍眼の綽名なんだからそりゃ「龍眼が勝つ」だろうさ!

「いや、そうじゃなくて。えっと…ユウキが勝つって事。」

陽光が言い直す。そういう意味か。というか俺が考えが整理されなすぎて意味分からないことになってただけか。

ボロボロの有紀、そして俺の処遇…平常心で居られないような事態が立て続けに起きてるけど、陽光は「有紀の勝利」を予想しているわけだ。

新月もコクリと頷く。

分かった。俺はこの2人の予想を信じることにする。

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