炎の翼
そう言うと氷牙鬼は飛び上がり、手を上げると空に向かって冷気を放った。すると雲ができ、やがて雪が降り始めた。
「な、何をしてるんだあいつ……」
攻撃のつもりなのか?
モエルには何がしたいのか分からなかった。
「なにをしたのか分からんようだな。説明してやろう」
空中に浮いたまま何をしたのかモエルに説明する。余程の余裕がなくてはできない行為だ。
「我は雲を作り雪を降らせた。それによってここは冷え、氷の我が有利になるということだ。逆にお前の炎は火力が落ちていく……それをお前はさせまいと火力を上げる。だがさっきお前の実力をはかったとき火力を上げるのには体力を削って上げているのを知っている。刀で貫く前も体力がなくて炎を出すことができなかったようだからな……よってお前は常に体力を大幅に消費しながら戦わなくてはいけないということだ」
「何っ!?」
それじゃあここはあいつの有利な戦場になって私は不利ってこと?厄介だなと思ったモエルだが笑ってしまった。これであいつの全力、しかも私が不利な状況……これで倒せば私の怒りも皆の仇もとれる。
モエルは炎を燃え上がらせ氷牙鬼に向かって大声で叫んだ。
「逆に燃えるね。これでお前を倒せば仇も取れるし私の怒りも収まるんだからね!」
そんなモエルの叫びを聞いて氷牙鬼は笑ってしまう。倒せること前提で言っているからだ。こんな不利な状況、さらに我の力さえあれば必ず勝てると思っていたので勝つつもりでいるモエルをおかしく思ってしまう。
「こんな不利な状況で勝てると……だったらやって見せるがいい」
笑いながらもモエルを挑発する。
「あぁ、やってやる」
炎を燃え上がらせながら両手に炎を纏わせると氷牙鬼に向かって投げつける。相手は飛んでいるのだ攻撃手段は何かを投げつけるほかなかった。跳んで攻撃しようにも氷牙鬼がいる場所が高すぎて届かないからそうするしかなかった。
「くくくくっ、避けるのが簡単すぎるな」
簡単すぎる、と炎軽々と避けていく。炎が何処に向かってくるかが分かってしまい、さらに届くまでに時間がかかってしまい簡単に見切られて避けられてしまうのだ。
「あ、当たらない!? これじゃあ勝てない……攻撃が当たらないんじゃ倒しようがない。どうすれば」
あれだけ言ったのなら絶対に勝たなくてはいけないのに……お師匠様の仇、親の仇。
親? そういえば私の親は竜人と言っていた。なら……
竜人の子供っていうぐらいなら翼が出せるんじゃ?
モエルには炎の力以外竜人が使っていたものはない。さらに言えば竜を思わせる角や尻尾などは生えていなかった。
そう考えたモエルは翼を出そうと背中に力を入れてみる……が何も起きない。それもそうだ。翼がどんなものなのか、如何出すのか、そもそも元から生えているものなんじゃないか……モエルはそう思い始めたが空に飛べなくてはあいつに攻撃が届かないのだ。やるしかないのだ。
また背中に力を入れる。その様子を見ていた氷牙鬼は笑いながら問いかける。
「貴様何をしようとしているのだ? また何か新たな力にでも……まさか飛ぼうとしているのか?」
「あぁ、だから話しかけないでくれない?」
「くくくくくっ、貴様飛べるなんて思わないことだな。いくら竜人の子とはいえ最初から生えているものなのだぞ。翼と言うものはな。まぁ、我は元からそういう力があるから飛べるがな」
翼、飛べる力もないのに飛ぼうとするモエルの姿が滑稽で笑ってしまうが……
「あっ、できた!」
「何っ!?」
確かによく見ると背中から翼のように炎がメラメラと燃えているがそれで飛べるのか?
氷牙鬼は疑問に感じてしまうが死に掛けに状態から押し返してきたあの予想も出来ない実力を持つなら十分にありえる。氷牙鬼は警戒するがモエルのほうを見るとなかなか上手く行っていないようだ。
そこに氷牙鬼はチャンスとばかり氷塊を投げつけまくり攻撃する。
「うわっ!? 今飛ぼうとしてるんだから邪魔しないでっ」
「わざわざ飛ばれて不利になるのは御免なのでな」
モエルの発言を無視して攻撃を仕掛けまくる。するとモエルは崩れかけている城の中に逃げ込んでいった。城を盾にして時間稼ぎをするつもりだろう……だがもう城なんぞどうでもいい。
我はお前を殺すことさえできれば良いのだ。氷牙鬼は自分の城、モエルが逃げ込んだ城に大きな氷塊を投げつけまくる。その威力で城はどんどん崩れていき、瓦礫の山と化していく。
「くくくくっ、これだけやればさすがにやつも……」
氷牙鬼は攻撃をやめ瓦礫の山に目を向ける。もはや城の跡すら残っていないぐらいだ。きっと瓦礫の下敷きになっただろう。
そう思ったとき……瓦礫を除いて出てきた。背中の炎を燃やしながら出てきた。
「行くぞ。氷牙鬼!」
そう言うと何とモエルは背中の炎を翼を羽ばたかせるように動かし、氷牙鬼に向かって飛んできたのだ。




