スライム討伐完了
数分後。
規定数上限、20匹のスライムを討伐した2人は木陰に座り水分補給しながら木の実を齧っていた。
モグリは手のひらで輝く水色の魔石、の欠片の数々を眺めている。
「綺麗だね」
「まぁ、最初のモンスター討伐だしな。気にすんな」
「うん」
「最後の1匹は魔石ほとんど残ってたじゃねぇか。お前やっぱり、元の力が馬鹿げてるだけで体の使い方は上手いんだよ」
「ありがとうルタイス。君のアドバイスのお陰だよ」
「あ、あ?ああ、うん。そうだ、そうか?」
モグリは自分の人差し指を見つめ、親指で押して音を鳴らした。そのまま握り拳を結ぶと、先程までスライム討伐をしていた目の前の草場を眺める。
「また明日も同じようなクエストを受けたいな。次で必ず、最適な力加減を覚えられる気がする」
「うん。そーだなー」
ルタイスも目の前の草場に視線を移し、遠い目をする。
ひび割れて凹み、土煙を立てている地面。遠くまで穴の続く木々。スライムの弾けた肉体が周りの木々や地面に飛び散った箇所から、未だにシュワ~、と音を立てて薄い水色の煙が出ている。
モグリの強さは重々承知していたつもりだが、下級モンスターが相手だとこうなるのか⋯⋯と、ルタイスが更けている隣で、モグリは魔石の欠片を太陽の光に透かしてその輝きを愛でていた。
「この粉々の魔石って捨てるしか無いの?」
「ん?いや、だいぶ値は落ちるが引き取って貰えるし、使い道もまぁまぁあるぜ」
「なら無駄にならなくて良かったよ」
「そだねー」
「次は薬草採取かぁ⋯⋯」
「そだねー」
夕方。
薬草採取のクエストは何事も無く済ました2人は、アバルバントギルドに帰還していた。受付でクエスト完了の報告と証拠の魔石、採取した薬草を提出する。
「2件のクエスト依頼の達成を確認致しました。モグリさん、ルタイスさん。お疲れ様でした。こちら、報酬の7500ミリアルです」
「ありがとうございます。ルタイス、後で山分けしよ」
「あそう?じゃあ有り難く貰うぜ」
モグリは報酬が入った革袋を受け取った。受付のギルド職員は2人にギルドカードを返却しながら、モグリに微笑む。
「魔石が完璧な状態なら、もっと報酬は弾んでいたので次は頑張ってくださいね」
「はい。早速、同じような依頼ありますか?」
「あると思いますよ。今から私、探してきますけど」
ルタイスが「あーいや、待ってください」と手を横に振りモグリの背を押し、2人はそのまま受付を後にした。
「なんで?」
「俺が選んどくから、お前は大食堂で何か食ってろ」
「ん、わかった」
2人が大食堂に向かうと、誰かがモグリ達に席から手を振る。
「おーい、ルタイス‼︎」
「あ、ギャンストさん」
「ギャンストさん?」
「島で一緒に戦った人だよ。前に豪鉄の剣と揉めた時も助けてくれた人」
「へぇ」
ギャンストが自分の隣の席を叩くと、モグリはルタイスの顔を伺った。ルタイスが頷くと、モグリはその席に腰掛けた。
「お疲れ2人共。クエスト終わったのか」
「ああ、モグリの初クエストだったんだよ」
「はえ~、そりゃめでたいな‼︎どんなクエストだ」
「スライム討伐と薬草採取です」
「あのモグリさんがぁ⁈だははは、冗談みたいな話だ。今更スライム倒して何になるんだか‼︎」
「結構難しかったですよ。魔石が粉々になっちゃうし」
「は?」
すると談笑している3人の背後から、ギルド職員が声を掛けた。
「すいませんルタイスさん」
「え、俺?」
「副ギルド長がお呼びです」
「俺なんも悪い事してないですぅ‼︎」
ギャンストがルタイスの背中を笑いながら蹴飛ばし、
「早く叱られて来いッ」
と送り出した。
「叱られるとしたら絶対お前のせいだからなモグリ」
「ドンマイ」
「がっ、覚えてろよテメェ⋯⋯」
ルタイスは腑に落ちない様子のまま、ギルド職員と2階に上がっていった。
「⋯⋯なんかしたのか、あんた」
「気にしないでください」
「あ、ああ。おう、そうだ」
ギャンストは手を叩くと、店員を呼び付けた。
「初クエスト達成祝いだ。なんか奢ってやるよ」
「え、そんな悪いです」
「遠慮すんな。俺も昨日、割が良いクエストがあって気分良いんだよ。奢られとけ」
「では、お言葉に甘えて」
モグリはメニュー表を手に取ると、店員にメニューを指差しながら注文を始める。
「エビとエリンギのアヒージョとパンのセット、カニクリームグラタンとアジのカルパッチョ。あと冷たい炭酸水下さい」
「かしこまりました~」
店員が捌けると、ギャンストは豪快に笑い出した。
「マジで遠慮しないんだな。がははは‼︎」
「ご馳走様です」
「おうよ!そうだ、今日の初クエストの話、俺にも聞かせてくりゃ」
「良いですよ。まず、森でスライムを⋯⋯」
続く。




