明星の翼③
しばらくして⋯⋯
モンスター避けの魔石を周りに置き、明星の翼の4人は休息を取りつつ、今の戦闘の反省会をしていた。皆それぞれ装備を適度に外して身軽になり、武器や防具の手入れ、魔石や宝箱の中身の仕分けなどをしながら意見を交換しあう。
レオンは敷物の上に座り、剣を簡易砥石で研ぎながら皆を見渡す。
「さて、反省会のまとめをしようか。皆、反省するべき点があるが⋯⋯フィリア」
「ふぅあい⋯⋯」
鍋をかき混ぜながら、フィリアは三角座りで深く項垂れた。隙間から涙目でレオンの顔を伺う。
「すいません、頭では、わかって、いるんですが」
「君の後方支援にはいつも感謝しているんだ。だけど、ほぼ毎回あんな感じになるだろう?まぁ今回は助かったが、いつどんな状況を誘発するのかわかったもんじゃない」
「はぁい⋯⋯」
「君は落ち着いて行動すればセインにも劣らない立ち回りが出来る筈だと、俺は思っている」
「レ、レオンさぁん」
顔を上げて涙目で見つめてくるフィリアに、レオンは苦笑いを浮かべた。
「せめて魔法杖とメイスの使い分けは覚えような?」
「はぁい」
ミレイアがボス個体の腰骨の上で寝転びながら、フィリアに薄ら笑いを浮かべる。
「フィリア。その魔法杖の名前、なんだっけ?もう一度教えて?」
「ツ⋯⋯」
「ん?」
「ツヨツヨビーム23世です⋯⋯」
「あはははははは‼︎これ大好き」
「はははっ」
笑い声を上げるミレイアと一緒に爽やかに笑うセイン。眉間を指で押さえるレオン。
「叩きつけて壊した杖が過去22本、これが23本目です⋯⋯」
「30本目で故郷の里に強制送還なんだろう?」
「ふぁい、多分めちゃくちゃ怒られます。毎回杖に同封されてる手紙も内容が段々エスカレートしてますし」
「この間のは、呪符みたいだったよね⭐︎」
楽しそうに笑うセインにレオンはジト目を返すと、セインは「笑おうよ⭐︎」とウィンクしてきた。
「セイン、お前もフィリアには肝を冷やしているだろう?」
「だが君もフィリアの事情は把握しているだろう?光攻撃魔法は制御が効かずに里とギルドから規制が掛けられてる」
「あ、ああ」
「それにフィリアはエルフとラブラドールの犬獣人の半エルフだ。姿形は完全にエルフだが、身体的な能力は寧ろ獣人に近い。特殊な体さ、エルフの高魔力と獣人の高身体能力が上手く噛み合っていないんだろう」
「わかってるさ。フィリアは充分、頑張ってる」
セインは自らの片眼を手で覆い、悲しげに微笑んだ。
「少し、気持ちは分かるからね」
「⋯⋯すまない」
「謝らないでくれリーダー、別に君を責めたわけじゃない」
矢筒に矢を補充しながら、セインは爽やかに笑った。レオンも「ああ」と頷いた。
「やっぱり私、近接職の方が向いているんでしょうか?」
「話がややこしくなるからその話はやめてくれ」
「わわわ、すいませんレオンさんっ」
「は、は、は。わぁ、フィリア。今日も君の煮込み料理は美味しそーだー」
「そうなんですよ。ホーンラビットと、ミレイアさんが眼圧で黙らせたマンドラゴラのシチューです」
「わーおいしそー」
ミレイアが干し肉を齧りながら、
「さて、リーダーが思考を放棄した所で、飯の時間かな」
と骨の山から降りてきた。セインも矢筒を置き、レオン達の所へ集まる。
レオンはシチューの器を置き、鍋を囲んでいる皆に視線を移す。
「明日15階層に挑んで、階層のボスに挑んだら帰ろうか。けど、その前に消耗したなら帰ろう。あくまで今回はBランク昇格試験前の肩慣らしだ」
「ああ、それ以上は危険だろう。賛成だ」
「賛成さ」
「賛成です!」
「ミレイアさん的には、次の第15階層をどう見ますか?」
豪快にシチューを飲み干し、空の器を組んだ脚の間に置くとミレイアは腕を組んだ。
「今回のスケルトンウォーリア戦しかり、やはり君達はCランクとしてはかなり上澄み。 パーティーでは、Bランク中位と遜色は無いだろう」
「それは、ミレイアさんがいるからでは?」
「私抜きで考えてもだ。資料で見たし、セインの魔法でもわかってた事だが、そもそもこの階層付近のスケルトンウォーリアはCランク以上だ。ボス個体は見かけのランクより実際戦うと強い事も多いし、今回はそれだったんだろう」
「なるほど」
「それらの群れとまとめて戦えている時点で、君らは個々の実力でも、Bランクには届いているだろう」
レオンは顎に指を当てた。セインも何か考えていたが、レオンとセインは同時に顔を合わせた。フィリアはラビット肉を頬張りながら、
「ふえ?」
と2人をきょろきょろ見る。セインはミレイアの背後のボス個体のガラクタに視線を向けた。
「このスケルトンウォーリアのボス個体が Bランク相当だとすると、少なくとも次の階層のボスは同じかそれ以上の強さ⋯⋯」
「しばらくはBランク帯だから、Aまでは行かないにしろB+はあり得る。リーダー、どう判断する?」
レオンはミレイアの問いかけに深く頷いた。
「今の俺達の実力では、次の第15階層が限界一歩手前でしょう。連日の泊まり込みにダンジョン探索の疲労もある。明日で攻略は取り止め、一泊した後に脱出します」
「ああ、それが懸命だな」
「冷静な判断、痛み入るよリーダー」
「ふぁ、ふあい。私もそう思います!」
「⋯⋯それはそうと」
「あ、私の返事だけ無視した気がします‼︎」
パンを頬張りながら、レオンは天井を見上げた。
「ルタイス、無事かなぁ」
「そうだな」
「日程的には僕らがこのダンジョンに着いている頃には、ルタイスも村に着いてるんだっけか?」
「私達もお力添えしたかった所ではありますが⋯⋯」
4人は天井を見上げる。レオンは頬張っていたパンを飲み込むと、息を吐いた。
「彼の話を聞いた時には俺達、カリョナ村に居たからな。流石に間に合わない。今は、彼と村の無事を祈ろう」
「そうね」
続く。




