明星の翼①
「そうだセイン、どんなフィールドだ?」
「さっき第11階層でスライムの群れと戦った場所と同じだよ。2階建ての吹き抜け構造、中央に広場と枯れた噴水のあるお洒落な空間さ」
「そんなお洒落な庭にスケルトンがいるんじゃお得な物件だな」
レオンとセインの軽口に、
「そんな庭じゃお茶出来ません~」
とフィリアが困り顔で応えるとミレイアが溜め息を吐いた。
「お前さんが破壊しなきゃ、スケルトンがいるなんて幾分マシな庭だろ」
「ひどいですさっきみたいな事はしませんからぁ~」
「だとよリーダー」
「頼むよ本当に、フィリア」
「は、はいっ、レオンさん!頑張ります‼︎」
「⋯⋯ 開けるぞッ」
スケルトンウォーリアがいる空間への入り口が見え、レオンとミレイアが加速した。同時にセインが矢を数本弓に掛けて魔力を練る。
「風魔法、ウィンドアロー・コントレスッ」
未だこちらの存在に気付いていないスケルトンウォーリアに向けて、探知魔法で探知したスケルトンの密集した箇所へ、セインは風魔法を纏わせた矢の雨をお見舞いする。10体程のスケルトンの頭部を一発で魔石ごと破壊したが、残りのスケルトンは頭部以外に当たり再生されたり、盾で防がれた。しかし矢が刺さった周囲に瞬間的に小さな竜巻が発生し、幾らかのスケルトンウォーリア達が姿勢を崩した。
「流石だ、セイン‼︎」
レオンは下の階に飛び降りると、周囲のスケルトンを炎の斬撃で一蹴した。頭部を残したまま崩れるスケルトンの頭部を切り裂き、剣の突きで次々に破壊していく。
「たぁ‼︎お前が親玉かぁ?」
ミレイアは2階から枯れた噴水に飛び移り、噴水を踏み台にしてボス個体に飛びかかった。ボス個体はかなり巨体で、この空間の1階半分の背丈があり、もはや筋肉があるのと遜色無い程に太い骨と立派な装備を身に付けている。4本の骨太な腕を生やし、丸盾、剣、斧、メイスをそれぞれ手にしていた。
「ははっ、おもしれぇ。生前はエレメント・ジャックとか何かか?」
「カラカラカラカラッ」
ボス個体がミレイア目掛けて盾を構えながら武器を次々に凄まじい勢いで振るう。しかし、ミレイアはその猛攻を空中で槍一本で正確に捌き切る。
ガガガガガガガガガッ‼︎‼︎
「やるな、間違いなくB以上だ。レオン達にやらせても良いが、まぁ、次の階層で良いか」
「カラカラカラッ」
「黒岩竜槍、一式ッ」
パッカアアアアン‼︎
ミレイアの強烈な突きの一撃により、ボス個体の盾の上半分が粉砕。ボス個体の右半身が下の腕と脇腹の部分ごと骨にヒビが入り、数本の肋骨が砕け、後ろの石壁にも衝撃が走って大きく凹んだ。ミレイアは技の反動で背面に宙返りすると、噴水の上に着地した。
「ちっ。やっぱ空中じゃ腰が入らない。頭狙ったんだが、盾で逸らされたな」
ボス個体がよろめきながら吠えると、地面の石畳に黒い泥のようなモノが現れた。そこから次々にスケルトンウォーリアが這い出てくる。
「すまんリーダー、撃ち漏らしたっ。ハウリングもされた、気を付けろ‼︎」
「ミレイアさん気にしないで下さい‼︎その調子で削って下さい。今のミレイアさんの一撃で粉砕出来なかったんだ、奴の強度が相当なんでしょう‼︎」
「気を使わせたなリーダー。次で墜すッ」
レオンはシールドバニッシュで数体のスケルトンウォーリアを壁に押し付け、まとめて頭部を薙ぎ払って破壊した。そして、噴水の上でボス個体と間合いを図るミレイアを見上げる。
「あんな猛攻、今の俺じゃ凌げない。防げても反撃の隙を作る事は出来ないだろう。やっぱあの人は凄い⋯⋯ 。だが、頼ってばっかじゃ不甲斐無しッ‼︎セイン、畳み掛けるぞ‼︎」
レオンの呼び掛けに、曲射をしていたセインが微笑み返す。
「はいリーダー」
「今のハウンドで呼び出されたスケルトンウォーリアは鎧や兜の無い下級のスケルトンの割合が高い‼︎セインは下級のスケルトンを優先的に排除しろッ」
「任せろリーダー。寂しい頭蓋骨を着飾ってあげましょう」
「フィリア‼︎」
スケルトンを纏めて薙ぎ払って吹き飛ばしながら、レオンは2階の何処かにいるであろうフィリアに声を掛ける。
「は、はい~」
「あ、セインの横か」
「はいっ、あの、一応、頑張ってます‼︎」
「わかってる。さっきから火球やアイシクルランスに助けられているよ」
「えへへ」
盾の先端をスケルトンウォーリアの頭に突き刺し、頭蓋骨と魔石を粉砕しながら地面まで叩き割り、巻き込まれてすっ転んだ下級スケルトンの足を掴むと宙にぶん投げた。その宙を舞うスケルトンの頭部を、セインの矢が正確に撃ち抜く。
「フィリア、近接攻撃を許可する」
「え⁈」
「セインは今から俺とミレイアさんの援護に注力するッ、セインを守りながらスケルトンを追い払え‼︎溢れた奴は俺が倒す‼︎」
「わ、わかりました‼︎頑張ります‼︎」
フィリアは腰に掛けていたメイスを取り出した。片手で魔法杖、もう片手でメイスを握ると目を瞑る。
「我が神よ、光よ。愛しき我々に加護を授けたもう。光補助魔法、ライトブレイズ」
魔法杖が光ると一瞬、4人の体が光に包まれ髪が靡いた。光補助魔法・ライトブレイズ。一定時間、対象の基礎的な身体能力を少し底上げする中位の光魔法だ。セインが歯に矢を挟みながら、フィリアにウインクした。
「良いね、助かるよ」
「えへへ」
「ほらフィリア、来たよ」
「えへ、へあ‼︎」
よじ登ってきたスケルトンウォーリアの頭を、フィリアは鎧ごと殴打した。
「あっ」
魔法杖の方で。
「ああ~‼︎」
「フィリアアアアアア‼︎‼︎」
見えてはいないが、フィリアのリアクションで全てを察したレオンがフィリアに雄叫びを上げた。セインはやれやれと首を横に振り、ミレイアは横目に笑った。
「また杖を駄目にする気か⁈何度バフをかけ終わったら魔法杖は背中に戻せと、なん、なんで近接職の俺が魔法使いの君に魔法使いの戦い方の説教をあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、邪魔だ骨っころ、説教中だっ」
「レレレレオンさん、す、すいませぇん~」
「わかったんなら、すぐしまう‼︎」
「は、はいっ」
フィリアは慌てて頭がこんがらがって、メイスを背中にしまい、魔法杖でスケルトンウォーリアの頭を突き刺してしまった。気付いて「逆じゃないかい?」と指摘するセインの声は彼女の耳に入らず、階段を登ってきたスケルトンウォーリアを魔法杖でぽかぽか殴ると、目を回して汗を掻きながらメイスを取り出し、メイスからファイアボールを発射し吹き飛ばした。続けて横から飛び出してきたスケルトンウォーリアを魔法杖で叩いて鎧を脱がせると、メイスからのアイシクルランスで頭部を破壊した。
「*÷々$☆$°〒*~~⁈」
「フィリア。落ち着いたらどうだい?君の役職が迷子だよ」
暴れ散らかすフィリアと困りながらも優しく対応するセインから目を逸らし、レオンは深呼吸すると改めて盾と剣を構えた。
「⋯⋯ さて、目の前に集中しよう」
続く。




