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冒険者編⑥

地下空間に張り詰めた空気。


壁の術式が淡く光り、魔力が床を伝って流れていく。

そのすべてが中央の水晶玉へと集まっていた。

三人はその様子を見つめる。


**ピシッ**


鋭い音が響いた。

水晶玉に、細いヒビが走る。

ノエルが息を呑む

「……!」


まるで内側から何かが押しているかのようにヒビがゆっくり広がる。


**ピキ……ピキ……**


細かな音を立てながらヒビは蜘蛛の巣のように広がっていく。

アルマが大剣を構える「来るぞ」


その瞬間


**バキィン!!**


水晶玉が砕け散った。・

破片が床へ落ち光が一瞬だけ強く弾ける。

そして――


中から現れた。


**黒い核。**


拳ほどの大きさ。


**ドクン……**


低い鼓動。

生きているかのように脈打つ。

周囲の空気がわずかに歪む。

壁の術式から流れてきた魔力が――

その核へ吸い込まれていく。


**ドクン……ドクン……**


鼓動が大きくなる。

アルマは大剣を構える。

ノエルも杖を握る。

レオナの指先に紫電が走る。

三人は完全に臨戦態勢になり黒い核が震えた。

周囲の魔力が――


**形を作り始める。**


黒い霧のようなものが広がる。

それが集まり骨格を作り、筋肉を形作り。毛皮を生む。


巨大な影が立ち上がると――


**トラのような魔獣**が現れた。


人より一回り大きい体。

鋭い牙、長い尾。

胸の中央には――


**黒い核が埋め込まれている。**


それはまだ脈打っていた。


**ドクン……ドクン……**


レオナの声が震える

「クマの時と……」


少し前の熊型魔獣。


胸の核と同じ異様な気配「同じ……?」


魔獣がゆっくり顔を上げる。

赤い目が三人を見る


**ガァァァァァァ!!**


地下空間を震わせる咆哮。

空気が震え、瓦礫が小さく揺れる。

大剣を肩から振り下ろすように構える

「トラだろうが!クマだろうが!」


地面を蹴る

「ぶっ飛ばしてやる!!」


その言葉と同時に。

トラ型魔獣が――


巨大な体が宙を裂く。

爪が空気を切り裂く音。


**ブンッ!!**


アルマは瞬時に動いた

(これ系の魔獣は――)


頭の中で、今までの戦いの記憶が走る

(ひっかき、噛みつき、飛びかかり……)


床を蹴り横へ跳ぶ。

爪がアルマのいた場所を切り裂く。

石の床が削れる(重さはクマと同等!)


巨体、筋肉。

衝撃は重い。

だが――


(でも)


アルマの目が細くなる

(オオカミほどの速さじゃない)


背後から声

「凍れ!」


ノエルの魔法が走る。

床を氷が這いトラの足元へ広がる。

それと同時に

**バチィッ!!**


レオナの紫電が弾ける。

空気を裂く電流。

魔獣の動きを縛るように走りトラが唸る。

アルマはその瞬間を逃さない。


踏み込んで体を回すドワーフの剣技。

踊るような動きで横へ跳び、回転し刃を振るう。


**ザンッ!!**


毛皮が裂ける。

続けてもう一撃。


**ガッ!**


トラが後ろへ下がるがノエルの氷が脚を止め、レオナの紫電が筋肉を痺れさせる。

アルマはさらに踏み込み回転し連撃。


**ザシュッ!!**


**ズバッ!!**


刃が何度も魔獣の体を裂く。

トラが低く唸る。

アルマは感じていた

(押せている)


呼吸は乱れていない。

クマの時のような、死ぬかもしれない感覚はない。

動きが見える。

避けられる。

切り込める

(クマの時みたいなギリギリさはない)


剣を振りながら思う

(いける)


その瞬間、わずかな油断。


トラの体が沈みアルマの目が一瞬遅れる。

トラの前足が振り上がる

**ブンッ!!**


強烈な猫パンチがアルマの顔面に直撃した。


**ドォン!!**


アルマの体が吹き飛ぶ。

石の床を滑り、瓦礫にぶつかる。

ノエルが叫ぶ

「アルマ!!」


レオナも叫ぶ

「下がって!」


アルマは瓦礫の中で体を起こす。

口の端から血を流しているが笑っていた

「いてぇ……」


頬をぬぐい大剣を拾う。

そして立ち上がる

「今のは」


肩を回す

「ちょっと効いたな」


トラ型魔獣が低く唸る。

胸の核が脈打つ。


**ドクン……**


地下空間の空気が再び張り詰めた。

瓦礫の中から立ち上がるアルマ。

だが、その目はまだ戦意を失っていなかった。

トラ型魔獣は低く唸ると胸の核が脈打つ。


**ドクン……ドクン……**


そのたびに、魔力が周囲の空気を震わせる。

レオナはそれを見て、胸の奥で冷や汗をかいた

(肉球だから良かった……)


アルマの頬を見ると赤く腫れている。

だが骨は折れていない

(もし……)


あの一撃を…


**爪で受けていたら。**


(顔が無くなっていたかもしれません……)


レオナは強く言った

「アルマ!」


声が鋭くなる

「油断しない!」


アルマは大剣を握り直す

「おうよ!」


口の血を拭い体勢を低くする。

そのとき――


ノエルの頭の中に、ニールの言葉がよぎった。

**凍結。**


氷を作るのではない

対象を――

**凍らせる。**


ノエルの目が鋭くなる

(氷で敵を包み込め)


魔力を集中して杖を掲げる

「はっ!」


空気が急激に冷えた。

ノエルの魔力が放たれる。

冷気がトラの顔へ走る――


**ピキィッ!!**


目、まぶた、顔面が瞬時に凍りつく。

トラが咆哮する


**ガァァァ!!**


視界を奪われた巨大な体が暴れ始める。

爪が空を裂き、尾が床を叩く。

その暴れ方は――


**盲目の動き。**


レオナの目が光る

(今です)


手を掲げ術式を組む。

紫電が空間に弾ける。


**バチバチバチッ!!**


トラの胸にある核の周囲。

そこに――


**放電体が出現した。**


空中に浮かぶ電気の球。

そこから電流が放たれる。


**バチィィィッ!!**


レオナは集中する

(回復魔法の流れを逆に……)


過剰に、より過剰に細胞を活性化する。

**過剰回復。**


それは――

**破壊。**


電流が核を焼き核が震える。


**ドクンッ!!**


効いているトラが暴れる。

レオナが叫ぶ

「効いています!」


アルマを見る

「今です!」


アルマの目が燃える。

大剣を両手で握る。

床を蹴り踏み込み、体が回る。

遠心力、筋力のすべてを乗せる。

アルマが叫ぶ

「はぁぁぁぁぁあ!!」


渾身の一撃。


**ズガァァァン!!**


刃が核に叩き込まれる。

黒い核にヒビが走る。


**バキッ!!**


さらに砕ける。


**パリンッ!!**


核が粉々に砕けた瞬間、トラの体が硬直する。

赤い目の光が消え巨体がゆっくり崩れる。


**ドォン……**


三人の呼吸だけが響く。

アルマは大剣を肩に担いで笑った

「トリニティ」


ノエルとレオナを見る。

誇らしそうに

「初勝利!」


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