明日は卒業式
明日は私達のドリミア学園の卒業式。
私とアメリアはこの楽しかった学園を去るのが名残り惜しくて、思い出話に花を咲かせていた。
「あの食堂の汚職事件がなかったら、中庭の素敵な屋根付きテラスは、私たちの憩いの場にはなっていなかったわ。何が良いように転ぶかわからないわね」
「あの憩いの場がなかったら、アメリアとエドも婚約するような仲になっていなかったと思うし」
「ほんとね、エリザ。婚約式には絶対に来てよね」
「もちろんよ」
2人の婚約式は卒業式の2日後に決まっている。身内だけのささやかな婚約式にするそうだけれど、私とウィリ様は学友として招待されている。
「あのサウスパール王国の2人も、このまま王都学園に進学するみたいね。」
「そのようね。」
「それでエリザ、アンソニー・フランクとは何かあるの?サウスパールの国王陛下や妃殿下に、とても気に入られていると噂で聞いたわよ」
「ウワサってすごいわね。でも、何もないわよ。サウスパール王国でお祖母様の浄化の力が必要な事件があって、こっそり訪問していたの。とっても良くして頂いたのよ」
「デートで国に行ったんじゃないのね」
「デート!?ないない。残念ながらないわ」
「ねえ、エリザ。誰か気になる方はいないの?ウィリ様なんて言わないでよ。ワーズの事は知ってるんだから」
「気になる方ねえ」
今はそんな方はいない。
前世の記憶を思い出して周りも巻き込んで、運命を変えていくのに精一杯だった。
そして、つい最近になって、前世の前の記憶まで思い出したのだ。
私は元の世界に帰ってきたのだと、時間が戻ってやり直せているのだと、気がついたのだ。
私の今があるのはお祖母様のおかげ。
せっかく新たにやり直せているのだ。同じ轍は踏まない。
私はこの人生を幸せに生きる事を絶対に諦めない。
「エリザ、どうなの?誰か気になる殿方はいないの?」
「気になる殿方と言えば、お兄様しか思い浮かばないわ」
「ああ、素敵すぎる兄がいるのも考えものね。他の男性が霞んでしまうわけね」
アメリアはお兄様が養子だとは知らない。
私も、アメリアがあまりにも真剣に尋ねるから気になる異性を思い浮かべたら、お兄様しかいなかったのだ。
(ファーザーコンプレックスだわ。お兄様が私を異性として見るはずがないもの。)
「明日の卒業式と、貴方とエドの婚約式。その次は、王都学園の女子寮への入寮。そして王都学園入学式。ワクワクする事が多すぎて、恋なんてしてる暇はないと思うわ」
「恋をしたら変わるわよ、エリザ。恋はいいわよ」
「アメリア、ご馳走様。貴方が幸せそうで良かったわ」
私達の話は止まらない。
ありがとうドリミア学園。
私達は明日卒業します。
話に出ていたお兄様も、先日、王都学園を卒業された。しばらくゆっくり休んだあと、魔法騎士団に入団する事が決まっている。
ドリミア学園の男子生徒の希望就職先のナンバー1は、毎年、魔法騎士団なのだ。
だから卒業前に、魔法騎士団の団員が学園に出向き、入団テストが行われている。
それは、ドリミア・王都・両学園の生徒、父兄、教師が楽しみにしている、イベントの1つにもなっていた。
その入団テストで、テストをしている側の魔法騎士団の誰もが、お兄様に敵わなかったのだ。
いや、たった1人だけ、紫の髪をなびかせてリアムを降参させたのは、第二部隊の隊長ベルトン・アラール。
「リアム・ノイズ。合格だ」
ベルトン隊長が言うと、観客席から大きな歓声が上がった。
「リアム、強くなったな」
そう言ってリアムの肩に手を置いたベルトン隊長は、彼の幼い頃を知っていた。彼を闇の使い手から守るように、アフレイド総団長から頼まれていた頃があったのだ。
(明るく笑えるようになったのだな。)
闇のように暗い瞳をして、それでも懸命に笑顔を作っていた幼い子供を思い出しながら、目の前の青年に声をかけた。
「ありがとうございます。以前は大変お世話になりました。僕はもう大丈夫です」
「これから鍛え甲斐があるな」
この日の観客達は、これから先、語り継がれる『隊長以外の全員を負かせたリアム・ノイズの入団テスト』を目の当たりにして、興奮冷めやらぬ様子で会場を後にしたのだった。
この入団テストでリアムを含む3名の、魔法騎士団への入団が決まった。
「銀髪の貴公子リアム様も、もうすぐ魔法騎士団の団員ね。社交界の噂好きの奥様達が放っておかないでしょうね。なんだか、今からワクワクするわ」
話が尽きない私とアメリア。
私たちは明日、思い出多いドリミア学園を卒業する。
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