待っていたリアム
フレッグ王子は父王を前にして、自分の母親が闇魔法の使い手の愛人と組んで、このサウスパール城の実権を乗っ取っていると告げた。
国王の側近ほか殆どの重鎮は彼らの手の者であり、陛下には彼らが不利になるような情報は、決して届かないようになっていると告げた。
今まで陛下が信頼していた重鎮達は、彼らが様々な方法で排除して、そのポストに自分達の手の者がつけるように、言葉巧みに陛下を誘導したこと。
そして側室のスザンヌは、自分の息子のフレッグを次の国王にしようと目論んでいること。
その息子が自分達に反抗するので闇の魔法を使って縛りつけ、逃げないようにしていたこと。フレッグの発言が必要な時は、催眠魔法のような術を使って操られていたことを告げた。
「其方は母スザンヌと護衛のアデルが、愛人関係にあると言うのだな?
私の古くからの友や信頼できる者達に不幸が起こったのは、スザンヌ達の仕業だと?
今、私のまわりにいる重鎮の殆どが、スザンヌと護衛アデルの手の者だと?
そして其方は、彼らが私を監視していると言っているのだな?
その上、其方は、2人に怪しい術を使っ操られていた。と言うのだな?」
「はい父上。その通りです。サミュールが体調を崩していたのも、母とアデルが巧みに闇魔法を使ってサミュールの健康を害したからです。
子供の頃から虚弱体質だったサミュールを思いやるフリをして、彼らの術に陥りやすくなるような食べ物や薬を、サミュールに贈り続けていたのです。
兄上の通うドリミア学園に闇魔法の使い手を送り込み、兄上を失明させようとした事もあるようです。
父上、兄上とサミュールを亡き者にした後、彼らの標的になるのは父上です。彼らは私を国王にしたいのですから」
「!」
「母とアデル達の排除をお願い致します。そして、父上を脅やかす存在の私を、処刑して下さい」
「!」
「フレッグ、良く話してくれた。其方こそ辛かったであろう。大聖女レティシア様のおかげで、呪いのような束縛から解き放たれたと聞いた。良かったな」
「父上・・」
「そんな其方を処刑になどするものか。其方も私の大切な息子だ。早く体調を戻して元気になるのだぞ。
そして、ゆくゆくはサミュールと共に、兄アンソニーを支えやって欲しい。サミュールもわかったな?」
「はい!分かりました父上。」
「父上・・」
「アンソニー、これで其方と其方の母の心配が一つ減ったであろう?」
「はい!父上。ありがとうございます」
「陛下・・」
王妃様は泣いておられる。
「ところで、ロザリー、スザンヌ達のこと、其方は気づいていたのか?」
「詳しくは存知ませんが、この城と陛下のお部屋が見張られている事は」
「そうであったか」
「レティシア様、エリザベート嬢。ありがとう。お2人のおかげで大切な息子達を失わずに済んだ」
「お役に立てて良かったですわ」
その後もフレッグ王子の話は続き、側室スザンヌとその護衛アデルの悪行が次々に明るみになっていった。
全ての話が終わったあと、アンソニーが口を開いた。
「父上、闇魔法のことは我々には分かりません。このサウスパール城にまだその闇の者が潜んでいないとは言い切れません。
この城に潜む闇魔法の使い手を一掃しなければなりません。
ここにいるエリザベート嬢は、ドリミア王国の魔法騎士団総団長のアフレイド・ノイズ公爵の令嬢です。
ドリミア国王の国王陛下にも事情を話し、魔法騎士団に協力を依頼してはどうでしょう?
アフレイド様の判断で、場合によっては、また、レティシア様の力をお借りする事になるかも知れませんが」
「我が国の内情が知れてしまうが仕方があるまい。そのようにしよう」
「陛下からドリミア王国の王家に連絡を入れて下さいませ。私は、今から屋敷に戻って父に話ますわ」
「私も国に帰って、アミルダ国王にも話して来ます。私はいつでも参りますわよ」
「レティシア様、エリザベート嬢。お願いする」
国王陛下は私たちに頭を下げられた。
「陛下、大丈夫ですよ。では、また戻って参ります。皆さま、お気をつけて」
私とお祖母様(レティシア様)は瞬間移動で私の部屋に戻ってきた。
「また連絡するわね」
お祖母様(レティシア様)は私を部屋に送り届けると、すぐにアミルダ国王に戻っていった。
(帰ってきたわ。)
やっぱり屋敷の自分の部屋は寛ぐ。
ドーンと、ベッドにダイブして寝転んだ。
「あまり令嬢らしくない格好だね」
「え?」
ドアの前にヒルダとお兄様が立っていた。
ベッドにダイブするところを見られてしまった?
私は少し、いや、だいぶ恥ずかしい思いで、そっとお兄様とヒルダを見た。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
「お帰りエリザ。レティシア様と何処に行っていたんだい?」
お兄様は笑っていない。
「サウスパール王国に・・」
「そこは、お前に危険が及ばない国なの?」
「それは・・」
「無事に帰れたから良かったものの、父上や僕がどれだけ心配したのか、分かっているのかい?エリザベート。
それで、レティシア様と何をする為に帰ってきたの?」
お兄様は怒っているようだ。
コバルトブルーの瞳が容赦なく私を責める。
私はサウスパール王国の城で起こった事をお兄様に説明した。
「なるほど。あとは、僕と父上に任せて。
闇魔法が関わっているなら尚のことだ。お前は関わらない方がいいよ、エリザ。母上が心配するからね」
お兄様がお父様に連絡を取った。
そして、その翌日には、魔法騎士団を率いて、お父様はサウスパール王国に瞬間移動して行った。そのあとにお兄様が続いた。
これでサウスパール王国も大丈夫だわ。
いつの間にか、お祖母様が私の部屋にいらしていた。
「お祖母様、あの独りぼっちだったエリザベートは私だったのですね。あの日、婚約破棄されたのも、国外追放のあと賊に命を狙われてたのも。みんなみんな、私だったのですね。
でも、今の私は独りぼっちじゃありませんわ。
お母様もお兄様もお父様も、私の側にいて下さいます。
もちろん、お祖母様も」
ゲームと外れたこの世界に、何が起こっているのかは分からない。
私は今を生きるので精一杯だわ。
それから数日経って、サウスパール王国から帰ってきたお兄様から事件が解決した事を知らされた。
側室のスザンヌは一生を修道女として過ごし、今までの行いを反省する事になったようだ。
その護衛で愛人の男は魔力を奪われ、労働の刑に処されているらしい。
サウスパール王国の王妃様から、エリザベートにお礼の手紙が届いたのは、その数日後だった。
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