第6部 誰かがいる
すみませんが書き直しました。
ちゃんとみないと続きがわからなくなります。
フォース家別館なる第2館、数多くあるへやのなかでの特別室。それはこの屋敷の主の部屋の隣室にあたるそれなりに豪華な部屋である。客室以上の造りであり、長期滞在を望む客人に作られた部屋だ。そこのベッドで眠るのは一人の少女。
小鳥たちの目覚ましが小さく森に木霊し窓からかすかに入る朝日。その優しい光は彼女の眠りを覚ますには十分だ。
「んっ…………後5分は寝かせてください。」
フワフワしたベッドの中で寝ていた彼女の幼い顔は金色の美しい髪と共に布団によって隠れる。
しかしガチャッと扉が開く音がし黒いワンピースに白いエプロン姿の女性ーエリスがこの部屋へと足を踏み入れた。ティーカップやポットを乗せたお盆を持ち、ベッドへに眠るサクラへと近寄った。
「サクラ様、おはようございます。」
布団に潜っていた少女ーサクラはさっと起き上がった。
「エリスさん!おはようございます。」
エリスは静かに礼をとると優しいまなざしをサクラへと向ける。
「おはようございます。サクラ様。モーニングティはいかがなさいますか?」
「あっあの紅茶は、いりません。すみません。エリスさん。」
「いえ、構いません。それに何度も言うようですが私に敬称を使わないでください。あなたは仮にもお客様ですので。」
「そんな……こんな私を置いてもらってるだけで嬉しいのに。あまり迷惑をかけたくないだけなんです。」
サクラがベッドに腰掛け伏し目がちにエリスの顔を伺う。エリスは眉間に皺を寄せ、ため息混じりに口を開いた。
「何を言われても私にはどうしようもありません。私が仕えているのはシオン様ただ一人なのですから。サクラ様に何を言われてもシオン様の命がある限り私はサクラ様の命令は聞けません。」
「違います!命令じゃないんです。ただ私は……。」
言い淀んだサクラを見つめエリスはふと表情を和らげた。
「サクラ様、とりあえず着替えましょう。寝間着のままではシオン様に怒られてしまします。」
「はっ、はい!」
元気よく返事をしたサクラはクローゼットへと足を向かわ扉を開いた。
シオンから買ってもらったドレスがぎっしりとつまっていた。
「どれにしましょうか……。この黄色いワンピースにしようかな!」
サクラは薄い黄色のワンピースを手に取り、着替る。
初めは何も入ってなかったクローゼット。しかしシオンはこのままではサクラが不便だと思い至急フォース地方で一番の評判を飾る仕立屋を呼び寄せ作らせたのだ。ただ地方を治めるほどの家系。お金のかけかたが普通の人より少しおかしい。シオンは挑発的な目で仕立屋にこう言ったのだ。
『今季の流行をすべて取り入れた服を50着。ドレス、ワンピースは問わない。お金もいくらだって払ってやる。しかしサクラに似合わないと思うような服を作ってみろ。我が物顔でフォース地方にいられると思うなよ。』
この言葉に仕立屋の男はピクリっと曖昧に笑ったのだ。
この地方(いや国と言っても過言ではない。)で一番を誇るこの仕立屋が似合わない服を作る……それは馬鹿にされたも同然だった。そのため仕立屋の男は総力をかけ1週間はかかるであろうと思われた服作りは3日で終わらせた。もちろん、サクラが似合う物ばかり。仕立屋は疲労した顔つきだったが営業スマイルを駆使し『サクラ様のスタイルがよろしいからですよ。そして表情も輝かしい。服を作っていてここまで仕事冥利につきることはありません。本当にお似合いですよ!』
と言った。地方で一番を勝ち取る仕立屋の意地を最後まで尽くした瞬間だった。
着替え終わったサクラはエリスへと密かに視線を送った。
何かを悟ったエリスはお似合いですよ、と微笑んだ。本当に似合っている。彼女のすらっとした白い足。可愛らしい顔立ち。流れるような金髪と自分の髪を比較してため息をつきたくなる。
エリスはふっと顔をあげた。そろそろ仕事に戻らなくてはいけない。
「サクラ様。私は仕事に戻ります。屋敷内を散策するなり庭を拝見なさったりするのは今まで通りご自由になさってください。しかし絶対に森には入りませんように……。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「朝食の準備は済んでいますのでダイニングルームに向かわれてもかまいません。今ならシオン様がいると思いますので……。」
行ってみてはいかがですかーエリスが言葉を発するよりも早くサクラは廊下へと駆けだした。
「シオンさん!」
シオンに会える。今まで会えていなかったサクラは嬉しそうに白く磨かれた床を蹴り続ける。武力専門で国家直属騎士の地位を持つシオンは戦争が起これば狩り出される。今は平和な世の中であるためその必要はないが、他にも仕事があるらしく各地を飛び回っている。サクラは会おうと思っても忙しいシオンとはなかなか会えないでいた。
やっとのことでダイニングルーム前につく。
身なりを整えようとサクラは服をはらった。
「う~シオンさんに会えると思うと嬉しくて自我を忘れそうだった……。」
扉を開けようと手をドアノブにかけたところで、動かなかった。いやサクラは動けなくなった。
ひんやりと感じる首元に突きつけられた物が怖くて動けない。
「誰………ですか?」
振り返ることもできず後ろにいる人へと勇気を振り絞ってサクラは言葉を漏らした。
「…………朽ちろ。」
低い声が静かに廊下に響いた。




