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ゲーム発掘物語 ~文明崩壊後の渋谷で、僕らは“ゲーム”を発掘した~  作者: KAI


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1/7

渋谷の地下で見つかった“灰色の箱”

朝の光が、崩れたコンクリートの隙間から差し込んでいた。

巨大な円柱のような建物――かつて「SHIBUYA 109」と呼ばれていたらしい廃墟は、

今では銀座村の人々の生活拠点になっている。


外壁はひび割れ、看板は半分落ち、

かつてのロゴは風雨に削られて読めない。


それでも村人たちはこの建物を修繕し、

壁に木材を打ち付け、

雨風をしのげるようにして暮らしていた。


爽太は崩れた階段を駆け下りながら声を上げた。

「よし、今日も発掘行こう!」


慎介はその後ろで、

腰にぶら下げた道具袋を揺らしながらため息をつく。

「危ない遺物が出なきゃいいけど……」


考二はノートを抱えながら階段を降りてくる。

そのノートには、先代文明に関して彼が得た知見や考察がびっしり書き込まれていた。

「危険かどうかは発掘してみないと分からないだろう。何か面白いものが見つかるかもしれない」


最後に好機が、工具の詰まったバッグを肩にかけて現れる。

「何か面白い道具が出てきたらいいな。今まで発掘された道具からも、先代文明の方が今より高度だったのは明らかだし、分解して調べたい」


爽太が笑う。

「よし、行こう! 今日はなんかいいものが見つかりそうな気がする!」

四人は109の廃墟を背にして歩き出す。


かつての渋谷の街並みは草木に飲まれ、

道路の白線だけが文明の名残を示していた。


渋谷駅方面へ向かう途中、

倒れた高架の影が道に伸びている。


ビルの壁には、

色褪せた広告の残骸が貼り付いたままだ。


草木に覆われた旧ビル群の間に、

地面が沈み込んだ大きな穴が広がっていた。


その周囲には、

青い看板の破片が散らばっている。


爽太はスコップを握り直す。

「よし、今日こそ何か見つけるぞ!」


四人は瓦礫の間を抜け、

先代文明の残骸が眠る発掘地点へ向かった。


やがて、地面の一部が大きく陥没した場所にたどり着く。

そこは、先代文明の建物が地層に埋もれた“発掘ポイント”だった。


慎介が指差す。

「おい、あれ……なんか青い看板が落ちてるぞ」


錆びた青い板。

かすかに残った黄色いロゴ。

読めない文字。


爽太が近づいて触る。

「なんだろこれ……」

考二が真剣な顔で言う。


「先代文明の商業施設の看板だろう。文字が読めれば意味が分かるんだが……」

看板には、途中でかすれて「ゲームショップ GE…」と書かれていた。


爽太はスコップを肩に担ぎ、崩れた地面を覗き込む。

「よし、今日はここ掘ろう! 何か発掘できそうな気がする!」


孝二は

「何か根拠でもあるんですか?」

と尋ねる。


爽太は

「感だ!」

と勢いよく答える。


孝二は

「また、それですか……。昨日もそう言って何も発掘できませんでしたよね?」

と呆れながら言った。


慎介は周囲を見回しながら眉をひそめた。

「……昨日雨だったし、地面が崩れるかもしれないから、気をつけて掘れよ」

爽太は勢いよく掘り始めた。


ザクッ、ザクッ。

硬い感触が返ってくる。


「うおっ、なんか当たった!」

好機が駆け寄る。

「どれどれ……」


慎介は一歩引きながらも、目はしっかりと爽太の手元を見ている。

「……頼むから慎重にやってくれよ」

爽太は土を払い、灰色の角ばった箱を露わにした。


四角い本体。

前面に奇妙な溝。

背面には赤・白・黄の丸い端子。


上部にはカセットが差し込まれたままになっている。

本体には「ハイパーファミコン」、

カセットには「スーパーマリヲブラザーズ」と書かれていた。


「うわっ! なんか出てきた!!」

考二が目を見開く。


「これは今まで見たことがないな」

好機は興奮気味に本体を持ち上げる。


「この線があるということは、太陽エネルギーを使う機械だ。まだ動くかな」

今の文明の人々は電気を正しく認識していないが、

太陽光パネルと送電網の一部は生きており、太陽が出ている時だけ電気が使える。


慎介は心配そうに言う。

「慎重に扱いなよ。何が起きるか分からんぞ」


爽太は興奮して言った。

「拠点に持ち帰って試してみようぜ!」


好機は慎重にケーブルを巻き取りながら言う。

「そうだね。拠点なら太陽エネルギーが使えるし、持ち帰って調べるのがいいと思う」


考二が頷く。

「これで、もっと先代文明の文化について知れるかもしれない」


爽太は嬉しそうに本体を抱え上げた。

「よし、持って帰ろう! なんかすごいの見つけた気がする!」


慎介はため息をつきながらも歩き出す。

「……何も起きなきゃいいけどな」


四人は灰色の箱を抱え、渋谷109の廃墟へ戻っていった。


爽太たち発掘隊は、

発掘した灰色の箱を抱えて、

109の三階にある“調査室”へ向かった。


壁には木材が打ち付けられ、

かつての店舗の照明は壊れたままぶら下がっている。

好機が機器を机の上にそっと置く。


「よし、ここなら太陽エネルギーが使える。試すならここだな」

慎介は周囲を見回しながら言う。


「……ほんとに大丈夫かな」

爽太はもうワクワクが抑えられない。


「早く見てみようぜ! これ、なんかすごい装置かもしれないし!」

考二はノートを開きながら灰色の箱をじっと観察する。


「やっぱり、こんなものは今まで発見されていないな」

爽太は本体に刺さったままの黒いケーブルを持ち上げる。


「これ、太陽エネルギーを使うための線だよな?エネルギー源に挿せば何か起きるんじゃない?」

そう言いながら爽太はコンセントにプラグを差し込んだ。


慎介は眉をひそめる。

「……急に挿すなよ。心の準備ってものがあるだろ?」


好機が本体のスイッチを指差す。

「どれかが起動用スイッチだな。押してみろ」


爽太がスイッチを押す。

――カセットが飛び出した。


「やばい! 壊れた!」

好機が飛び出したカセットを拾い上げる。


「落ち着け。こういうのはだいたいはめ直せるはずだ」

そう言って、カセットをもう一度挿す。

「ほらな?」


爽太はほっとして言った。

「良かった〜」


別のボタンを押してみる。

「何も起きないな?」


好機は本体から伸びる出力端子に目をやる。

「赤、白、黄……この色と形、どこかで見たような?」


爽太が尋ねる。

「何かわかりそうか?」


好機はハッとして言った。

「テレビの裏のこれによく似てるな。テレビの方は出っ張っていないけど……」


孝二が近づく。

「僕にもよく見せてください」


観察したあと、言った。

「この色が同じ奴をテレビの方に挿すんじゃないですか?」


好機は目を輝かせる。

「お〜。多分それだ。早速やってみよう」


慎介は少し離れたところから様子を伺っている。


好機は端子を挿していく。

カチッ、カチッ、カチッ。


その瞬間、古びたテレビの画面がふっと明るくなり、

ざらついたノイズの奥からカラフルなドット絵が浮かび上がった。


爽太が叫ぶ。

「何か起きたぞ!」


考二が興奮気味に言う。

「今までテレビにはザラザラが出てくるだけだったのに!これが足りなかったから、無価値に思えたのか」


テレビにはデモプレイ映像が流れている。

爽太「まだ押してないこのボタンを押してみよう。」

と言って爽太はリセットボタンを押す。


ゲームは最初の画面に戻り、

制作会社のロゴが映し出され、

再びデモプレイ映像が流れた。


好機が言う。

「元に戻すボタンかな? 興味深いな。分解して中身調べてもいい?」


爽太は即座に止める。

「ダメ。まだ調べ始めたばっかだろ。これも調べてみないと」


そう言って、爽太はコントローラのボタンを押す。

デモ映像が終わり、ゲームがスタートした。

「また、何か起きた!」


爽太は十字ボタンを押す。

「すげえ……動いてる……!」


画面の中の人型の何かが、

左右に動いたり、止まったりするたびに、

爽太の心臓はドクドクと高鳴っていた。


そして――茶色いキノコのような物体が近づいてきた。

慎介が身を乗り出す。

「なんか来たぞ……!」


爽太は反射的に十字ボタンを押し続けた。

だが、“人”はそのまま突っ込み――


ピコッ。

短い、不快な音。


“人”が跳ね上がり、

画面がふっと暗転し、

最初の場所に戻った。


爽太は目を丸くした。

「どういうこと……?なんで戻ったんだ?」

孝二は画面を見つめながら眉を寄せる。


「まだ、いまいちよくわからないですね。まだ押してないボタンがあるなら、試してみましょう」

爽太はコントローラを見つめ、 一つずつボタンを押していく。


カチッ。 カチッ。 カチッ。

そして――


ポンッ!

画面の中の人が、ふわっと宙に浮いた。


爽太は叫んだ。

「跳んだ!! すげえ!!」


慎介は思わず後ずさる。

「お、おい……そんながちゃがちゃ押して大丈夫なのか……?」


孝二は冷静に分析する。

「どうやら、押したボタンに反応して“人が動く”仕組みのようですね。危険なことは起きていないようです」


好機はテレビの裏を覗き込みながら興奮していた。

「音はどこから出てるんだ? ボタンを押すと絵が動くって……どういう仕組みなんだ?」


爽太は再び画面に集中する。

「ジャンプできるなら……さっきの茶色いの、避けてみるか」


爽太は十字ボタンを押し、タイミングを見計らってジャンプした。

ポンッ。

“人”はキノコを軽やかに飛び越えた。


爽太は拳を握る。

「上手くいった!!」


孝二は頷く。

「さっきの“嫌な音”は鳴りませんね。避けるのが正しいということなのでしょうか。」


爽太は画面上部の「ブロック」を見つめる。

「この上のやつ……なんだ? 十字の上を押してみるか?」


孝二が提案する。

「いいですね。試してみましょう」


爽太は十字の上を押す。 しかし、何も起きない。

「上下は反応しないみたいだな。 じゃあ……ジャンプしてみるか」


“人”がジャンプし、茶色いブロックに頭をぶつける。

ゴッ。

ブロックが少し揺れたが、それ以上は何も起きなかった。


爽太は首を傾げる。

「よくわからないな……じゃあ、他と違うこの“?”の下でジャンプしてみよう」


ポンッ。

「?」ブロックが変形し、中からキノコが飛び出した。


爽太は叫ぶ。

「何か出てきたぞ! これどうする!?」


孝二は慎重に言う。

「さっきの茶色い奴みたいに避けるべきでは?」


爽太はジャンプボタンを押す―― しかし、頭が上のブロックにぶつかり、ジャンプが低くなる。

そのままキノコに当たり――


ピロリンッ!

心地よい音が鳴り、“人”が大きくなった。


爽太は驚く。

「あっ!避け損ねた……けど……戻されはしないみたい?」


孝二は目を輝かせる。

「さっきとは違いますね。何でしょうね?」


爽太は別の「?」を叩く。

チャリーン。コインが出た。

「これだけ?」


孝二は肩をすくめる。

「悪いことではなさそうですね」


爽太は右へ進む。

階段状のブロックを軽快に登り、土管を飛び越え、穴に差し掛かる。

「この穴……落ちたらまずいよな?」


孝二は真剣に言う。

「そうですね。落ちるのは良くないと思います」


爽太はジャンプし、穴を飛び越えた。

その先で、羽の生えた亀が跳ねながら近づいてくる。

「どうすればいい?」


孝二は即答する。

「避けたほうが良さそうです」


爽太はジャンプする―― しかし、亀に当たり、“人”が小さくなる。

慎介が叫ぶ。

「また当たったぞ!」


孝二は冷静に観察する。

「でも……戻されないですね。 大きくなっていたからでしょうか」


爽太は再び右へ進む。

茶色いキノコが複数迫る。


「次こそ避ける!」

爽太はタイミングよくジャンプし、すべて躱す。


さらに「?」ブロックを叩き、

キノコを取り、

右へ進み続ける。


しかし、爽太は気づく。

「動くの遅いな……もっと速く動けないのか?」


孝二が提案する。

「十字の右を押しながら、他のボタンを押してみたらいかがですか?」


爽太は試す。

すると――“人”が急に速く動き始めた。


爽太は叫ぶ。

「速く動けるじゃん!!」


孝二は笑う。

「これで快適ですね」


爽太は勢いよく右へ進み、階段を登る。

そして――旗が見えた。

「なんか見たことないものが出てきた」


孝二は首を傾げる。

「何でしょうかね?」


爽太は

「他にできることもなさそうだし、このまま右に進んでみるか。」

と言って、“人”を旗に触れさせる。


軽快な音が鳴り、“人”が砦に入っていく。

その瞬間、太陽が沈み、電力が落ちた。

テレビは黒くなり、装置は静かに止まった。


爽太が言う。

「今日の調査はここまでだな」


孝二が頷く。

「今日拾ったものは興味深いですね。もっと調べたいところです」


好機が言う。

「そろそろ分解してもいい?」


慎介が止める。

「戻せなくなるかもだし、同じものがいくつか発掘できてからにしたら?」


しかし好機はもう裏側のねじを外し始めていた。

慎介が慌てる。

「おいおいおい! まだ調査途中だぞ!? 壊したらどうすんだよ!」


好機は真剣な目で内部を覗き込む。

「壊さない。構造を知ることが先代文明を知ることに繋がるし、この装置がどうやって“動いていた”のか……それを理解できたら、壊れたものから使える部品を集めて動くものも作れるだろ?」


考二は興味と不安が入り混じった表情で近づく。

「確かに……内部構造の記録は重要だ。でも慎重に頼むよ。これは唯一の資料なんだから」


爽太は黒い画面を見つめながら言う。

「……すげえよな。今日、初めて“動かせる絵”を見たんだぜ。こんなの、今までの発掘品で見たことないよ」


慎介はため息をつきながらも、どこか嬉しそうに笑った。

「まあ……確かに面白かったけどさ。でも、あれ……なんなんだろうな。人が動いて、音が鳴って……なんか、ただの記録じゃないよな」


考二が言う。

「そうだね。ボタンを適切なタイミングで押さないといけないし、指を器用に動かすための訓練道具とか?」


慎介は画面を見つめながら呟く。

「……指を鍛える訓練道具なら音を鳴らす必要はないんじゃないかな……」


少し考え、顔が青ざめていく。

「まさか、呪いのおまじないとかじゃないよな?」


考二は首を振る。

「違うんじゃないでしょうか?呪いのためだとしたら、自分ならもっとおどろおどろしい音楽を流しますね。何かの儀式じゃないですかね?」


爽太は頷く。

「キノコのようなものがいっぱい出てきたし、キノコの豊作祈願に使ってたのかもな。先代文明の人はキノコが大好きなのか?」


好機は基板を指でなぞりながら言う。

「俺は……“機械の試作装置”だと思うな。押したボタンに連動して絵を動かしたり、音を鳴らしたりできる機械を試作したんじゃないか?」


爽太は首を振る。

「試作装置にしては完成度が高すぎるんじゃないか?」


孝二も言う。

「それはないですね」


慎介も言う。

「ないな」


好機はちょっと拗ねたように言った。

「俺の扱い、ひどくね?」


四人は同じことを感じているか確認するように互いの顔を見合わせ、同時に笑い出した。


爽太はぽつりと言う。

「……今日の調査だけじゃ、わかんねえな。明日以降も調査してみよう」


考二はノートを閉じる。

「確かに、結論を出すにはまだ早い。もっと調べる必要がありそうですね」


好機は基板を慎重に机に置きながら言う。

「内部構造を全部記録して、明日もう一度動かしてみよう。繰り返し観察すれば目的が見えてくるはずだ」


慎介は肩をすくめる。

「まあ……今のところは危険なことは起きなさそうだしな。確かに気になるよ。これが何のために作られたのか……」


爽太は黒い画面を見つめながら言った。

「明日も続きやろうぜ。この装置の“本当の目的”を見つけよう」


夕日が完全に沈み、調査室の電力が落ちる。

テレビの画面は黒く、灰色の箱は静かに横たわっていた。


だが四人の胸の中には、

今日触れた“謎の装置”への興奮と疑問が、

いつまでも消えずに残っていた。


次話、動く床と深い谷が待ち受けるアスレチックステージへ。四人はさらに文明の謎に近づく。

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