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再開

白い天井が視界に広がる

どこか既視感が合った


規則的な電子音

薬品の匂い

どこかで液体の流れる微かな音


(…ここは)


ゆっくりと瞬きをする


体はしびれ

痛みも酷かった

だが――動ける


「起きたか」


横から声がした


顔を向けると、そこにいたのは白衣の男――ニノマエだった

椅子に座り、端末をいじりながらこちらを見ている。


「ここは研究区画。安心して、解剖なんかはしないから」


「安心できる要素がないんですかけど…」


真也は体を起こす

全身に軽い違和感を感じ体をみると

丁寧に包帯が巻かれていた


「外傷は軽いんだ。問題はそこじゃなくてね」


ニノマエは端末を操作する手を止めた


「君、自覚あるかい?」


「…何がですか」


一拍。


「”治りが早すぎる”」


その言葉に、真也は少しだけ視線を落とした


思い出す。

庭での戦闘

全身に走る鈍い痛み

それでもなお動けた体


「普通の人間はあんな動き方をしたら立ち上がる事さえできない、

 筋肉繊維は断裂し、神経までイカれる」


「でも君は動き続けてた」


端末の上の指を横にズラし机を叩く


「それどころか、”戦いながら修復していた”」


真也は眉をひそめた


「見てたんですか」


「映像でね。まったく便利な時代だ」


ニノマエは椅子にもたれかかる


「言うなれば、超回復になるのかな」


真也は顔を上げ、ニノマエの方に向き直る


「でも、多分違う」


「どういう意味ですか」


「傷口は閉じて体内組織も。バッチリ元通り。けど…」


その一言で、空気が変わった


「痛みや、疲労はそのままってこと」


さらにニノマエは続ける


「そこなんだよ。君のそれは”治ってる”わけじゃないんだ」


真也は目を細める


「……え」


「厳密に言ったら、閉じただけ」


端末の画面をこちらに向ける

そこには断面図のような者が写っていた


「傷口は塞がり、血も止まる。見た目だって綺麗だ」


指でスライドする


「でも中身は別だ」


真也には専門的なことは一切わからないが

人間のものだとしたら歪だという


「本来なら時間をかけて治るはずのものが、無理やり繋がってる状態」


真也は無意識に自身の腕をみた

軽く力を込めてみる――


「だから痛いし、力も入りきらない」


ニノマエは淡々と続けた


「応急処置を繰り返し続けてるだけってこと」


「……意味ないじゃないですか」


真也の声は少し震えていた

ニノマエははっきりと真也に言い切る


「あるよ」


短く、強く


「普通ならその前に動けなくなっておしまい。でも、君は”壊れたまま動ける”」


その言葉は真也の心に静かに重く落ちた


「ただし」


ニノマエは人差し指を立てる


「それを強さだと勘違いしちゃだめだ」


穏やかな目つきから、鋭い視線を感じる


「痛みは警告だ。体が止まれって言ってるサイン」


「でも君は今それを無視出来る。…無視出来ちゃう」


真也の喉が小さく鳴る

部屋にはしばし静寂が流れた


真也はゆっくりと息を吐く

庭での感覚を思い出す


踏み込んだ時のズレ

細かく伝わった痛み

それでも動くことの出来た理由


「…原因ってわかるんですか」


ニノマエは軽く肩をすくめた


「リオの能力の後遺症だろうね」


再び端末に視線を落とす


「幾度も蘇生されるその過程で、再生能力だけが爆発的に強くなった」


「名前を付けるなら”高速癒合”ってとこだろうね」


その言葉はやけにしっくりきた


「でも覚えとけ」


ニノマエの声が低くなる


「それはただの時間稼ぎにしか過ぎない」


真也はその言葉を聞いても動じることはなかった

そんなこと自分が一番わかってる。。


「それでも、千恵を守るって側にいるって決めたんです」


「そうか、それならこっちきな」


ニノマエに連れていかれた場所は見慣れた訓練区画だった


「また特訓なんですね」


「今度は、ちょっと違うよ」


扉が開き中に人影が見えた頃

真也は一人見覚えのある人物に気が付いた


「千恵!!!!」


ツバキや小宮に囲まれたその輪の中心

彼女はそこにいた


――――三時間前――――


ツバキは事件のあとすぐに千恵の様子を見に行った

特別変わった感情などはない

一隊員を気にかけるような気持ちで


ガラス張りの部屋を覗くとそこにはこちらを見つめる少女がいた


「もう目覚めたのかい?」


「こんにちわ」


ツバキは想いもよらない反応に驚いた


「何でそんなに冷静なんだい?」


食い気味に質問をする


「そこの男の人が教えてくれたんです」


千恵はツバキの背中の方を指さした

ツバキが振り向くとそこには小宮がいた


「君は仕事がはやいね」


彼女は嫌味っぽく肩を叩く

そんな様子を眺めて千恵は微笑んだ


「それで、話の感想でも聞こうか」


「私は、この力を人のために使いたいです!!!!」


「素晴らしい意気込みだね。けど、それ以外にも目的があるんじゃない?」


探るように質問を続けた

千恵はうつむき少しそっぽを向く

彼女の思っていることはツバキにはお見通しだった


「目的は何にせよ。協力してくれるのかい?」


「はい…そのつもりですよ」


眼鏡の反射で彼女が頬を赤らめているのが見えた

ツバキは笑いをこらえるようにうつむく


なんとか笑いをこらえるとガラス張りにされた部屋の扉を開き千恵を手招きした


「それじゃあ会いに行こうか」

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