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episode.31

駅を出ると、サマーフェスタへ向かう人混みに紛れる。日傘をさすも最近の暑さは尋常ではない。1年前のこの日、駅で調子が悪くなった私を助けてくれたのが彼だった。


今日は高宮たかみやさんに、プロポーズの返事を伝えると決めてここまでやって来た。



結衣ゆいさん!」



門を入るとすぐに、制服姿の東堂さんに声をかけられた。相変わらずイケメンが過ぎる! 隣には秋庭あきばさんも一緒にいた。



「結衣さん、高宮たかみや一尉いちいは、メインステージに2年連続で上がるので楽しみにしてて下さいね!」


「はい、13時と聞いてます」


「それまで、時間あるので俺たちが案内しますよ」


「東堂さんたち、忙しいんじゃ…いいんですか?」


「はい! 結衣さんに悪い虫がつかないようにと…もごもご」


「え?」



こちらの話です。と東堂さんが秋庭さんをおさめると、ブースを回りながら普段の勤務のことや、私には見せない高宮さんの素顔まで色々なことを話してくれた。久々に見る護衛艦の迫力は、間近で見るとより一層重厚に感じた。高宮さんもこの艦に乗ったりしているんだろうなぁ。


観測船と潜水艦の見学をして、子どもたちに人気のロープワークもやってみたが、難しくてなかなか結べなかった。東堂さんと秋庭さんは難なくロープを結んでいく。周りの小学生から歓声まであがるほどだった。子どもたちに優しく教えてあげる姿が微笑ましい。久しぶりに会った東堂さんは、すっかりケガも良くなり任務についているとの事だった。



「お待たせしました。音楽隊の演奏がもうすぐなので、お昼は簡単に食べられるカレーでどうでしょうか?」


「カレー食べたいです!」



お昼時と重なり、少し列が伸びていたので、東堂さんが心配して秋庭さんと、日陰で待つように言われた。しかし、「いやいや、上官にそんなことさせられません! 俺行ってくるんで」と秋庭さんは東堂さんに買い出し役を申し出たことで、私は京都ぶりに東堂さんと2人きりになった。


久しぶりに東堂さんと隣り合わせに座ると、高宮さんとは違った安心感があった。



「あ、あの…身体もう大丈夫ですか?」


「おかげさまで。結衣さんも変わらず元気そうでよかったです」


「はい、ここまでこられたのは東堂さんがいてくれたからです。本当にありがとうございました」


「…じゃ、最後にお礼の分と快気祝い分で」


「え?」



東堂さんは私を抱き寄せると「必ず幸せになって下さい」と消え入りそうな声でつぶやいた。「と…東堂…さん?」すぐに身体が離れ、東堂さんは、私の乱れた前髪を優しく直してくれた。東堂さんを前にすると推しに優しくしてもらっているようでドキドキが止まらない!



「俺、もうすぐくれに移動になります。前々から話はきていたんですが、なかなか決められなくて…でもいい機会なので受けることにしました」


「…そう…なんですね。…寂しくなります…」


「いやいや、今回結構いいポストでの移動なので、もっと喜んでもらえると…はは…」



何故だか東堂さんが無理に笑っているように感じ、心配になり思わず手を取っていた。「きっと、東堂さんなら大丈夫です!」応援なんて必要ないと思うけど、私にできることはこれくらいしか思いつかなかった。



「…今日じゃなかったら、呉に連れてってたな」


「???」



「カレーお待たせしました! これ、結衣さんので…東堂さんには大盛り譲ります」



カレーを抱えた秋庭さんは、てんこ盛りになったカレーを東堂さんに手渡し、「俺はいつまでも応援してますから!」と泣きながらカレーにがっついていた。そんなにカレー食べたかったんだ…。


音楽隊の演奏も終わり、ステージ上の司会の人が制服紹介をし始めた。確か…去年も高宮さんはこのファッションショーに出ていて、一際目を引く白の制服を着ていた。


「続いては、医官として活躍しているイケメンです。……何やら今日は勝負の日だそうです。それではどうぞ!」

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