第409話
グランドには、『バトル』の推薦を貰えた、カイルのクラスの男子たちが揃っていたのである。
セナたち、女子の姿は、ここにはない。
密かに、男子たちだけに、ダンが声をかけ、集まっていたのだった。
男子にだけ、声をかけたには、それなりの理由が存在していた。
それは、これまで、トリスたちにやられっぱなしだったので、『バトル』で、自分たちだって、やれるところを見せるぞと、意気込んでいたのだ。
その中心人物がダンであり、誰よりも、トリスたちに、できるぞと、鼻を明かせたい気持ちが強かった。
魔法科にやられっぱなしで、矜持がズタボロになっていたルクスたちも、ダンの声で、やる気に目を輝かせている。
「とにかく、頭を使わないと、ぎゃふんと言わせられない」
「そうだな」
ダンの言い分に、ルクスが同意していた。
どうすれば、自分たちよりも、遥かに強いトリスたちに強くなったことを見せられるか、話し合われていたのだ。
けれど、はっきりとした答えが出ていない。
「厄介だな……」
顔を顰めているワールだった。
漠然と、こうした方がいいと理解していても、どう実行して行けば、いいのか、わからなかった。
集まっている五人の顔は、徐々に曇っていったのだ。
これまでも、頭を使いながら、戦闘において、いろいろな攻撃を仕掛けてきたが、トリスたちを上回ることができなかったのである。
トリスたちとの訓練でも、頭を使えと言われ続けていたので、これまで以上に、頭を使うことが多くなっていたが、トリッキーな戦闘から、教本どおりの戦闘もできる彼らに、太刀打ちできず、これまで土をつけたことが無かったのだ。
「勝つことは、できなくっても、俺たちにも、やれるってところを見せたい。これが、俺たちの方針なんだ。とにかく、このままじゃ、終われない」
これまでの屈辱を思い返し、いつの間にか、ダンの目が据わっている。
同じように、四人がコクリと頷いていたのだった。
五人の気持ちは、一つだ。
彼らは、トリスたちに勝てると思っていない。
けれど、自分たちが、トリスたちが思っている以上に、できるんだぞと言う姿を見せたいと言う思いが、非常に強かったのである。
トリスたちが手を抜いて戦うことがあれば、勝つことができるだろうが、それでは意味がなかったのだった。
「どうしたら……」
考え込むワール。
「稽古してても、鼻を明かせる想像ができない……」
モーガンの言葉に、シンクが頷いていた。
これまでの稽古を、思い返している。
どの稽古においても、トリスたちに鼻を明かせることができなかった。
「誰かに、頼むか?」
眉間にしわを寄せながら、ルクスが口に出していたのだ。
自分たちで稽古するには、限界で、誰かに指導して貰うことを提案していた。
ルクスの意見に、異を唱える者はいない。
「誰にする?」
ワールたちの双眸が、ダンに注がれている。
集まる視線に、渋面になっているダンだった。
誰に、指導して貰うかが、問題になっていた。
鼻を明かしたいトリスたちに、指導を頼むのは、愚の骨頂だった。
「……何で、俺なんだ……」
「しょうがない。この中で、魔法科とのパイプがあるのは、ダンなんだから」
ルクスの言葉に、ますます面白くないと言う顔を覗かせている。
「別に、魔法科にパイプを持っていない。ただ、リュートに付き合っていたら、こうなっているんだ」
「仲いいだろう?」
「このところ、魔法科のやつらと、よく喋っているだろう」
「……」
ブスッとしたままでいるダン。
「頼むぞ、ダン」
モーガンが押し付けてきたのだ。
「……」
期待のこもった視線に、溜息を吐いていた。
「……リュートに、紹介して貰うか?」
「それは、いいな」
頷く面々を、ダンが見つめていたのだった。
「じゃ、そういうことで」
「「「「おう」」」」
ワクワクする目を、五人がしていたのだ。
後日、リュートから紹介された、ミントとアニスによって、『バトル』の予選会まで、地獄の特訓が続けられていたのである。
そして、予選会当日、五人の顔は、疲労困憊な顔をしながらも、笑っていたのだった。
地獄の特訓から、開放されたからだ。
面白そうと思うミントにより、激しい特訓を強いられ、アニスによって、無理やりに回復させられ、ダンたちの精神は、ゴリゴリに削がれていたのである。
予選会の当日、開放感は、五人にとって、半端ないほど、こみ上げていたのだった。
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