番外編7 七夕の夜空に捧ぐ花束を 5
「僕ならば」
理央はおもむろに片腕を高く挙げる。
「こうする」
その指先から小さな光が空へ向けて放たれた。
光はどこまでも高く昇って、やがて空で星のように煌めく。
直後、ドーンと音が響く!
思いがけず海の上に、大輪の光の花が!
は、花火だ。
次々と打ち上げられていく。
色とりどりの光、夜空を艶やかに彩る眩しい輝き。
あの、去年の後夜祭で。
俺が他愛ないジンクスに縋ってでも絶対に叶えたかった願い。
想いを告げた時の、理央の表情、声、仕草。
交わしたキスまでもが感触を伴い蘇ってくる。
「健太郎!」
波打ち際で理央が笑う。
花火よりもずっと眩しい。
「改めて、誕生日おめでとう!」
「ッツ!」
気付くと駆け出していた。
想いが胸から溢れて―――理央! 理央! 理央!
「理央ぉッ!」
「アハハッ!」
そのまま波の中へ踏み込み理央を抱きしめるッ!
柔らかい、温かい、ああッ。
好きだッ、好き、好きッ―――愛してるッ!
「生まれてくれて、僕を好きになってくれて有難う」
「うんッ」
「君と出会えてよかった」
「俺もッ、俺もだよ、理央ッ!」
「ああ」
腕を少し緩めて、見詰めた理央と唇を重ね合う。
ああ、波の音が聞こえる。
―――好きだ。
俺とお前、二人分の鼓動が混ざり合って響く。
そして満ちていく。
全身の細胞一つ一つがお前を好きだと叫んでいる。
「なあ」
「何?」
理央とおでこをくっつけるようにして囁く。
「俺、やっぱりストライキする」
「フフ、天の川を泳いで渡るんだろう?」
「だって一日じゃ全然足りない、織姫も彦星も物分かりがよ過ぎる、俺はあんな目に遭うのは二度と御免だ」
間を置いて「僕もさ」と理央も言う。
二月の、バレンタインの時期に遭った出来事。
あの時に改めて思い知った。
俺にはどれだけ理央が必要で、理央じゃなくちゃダメで、どうしようもないくらい理央が好きかってことが骨の髄まで沁みた。
「なあ、俺が機を織るし、牛の世話もするからさ、だから理央」
「なんだい?」
「一生一緒にいよう」
理央はクスクス笑う。
その声がくすぐったくて俺も笑う。
「妙案じゃないか、それなら天帝も文句はあるまい」
「だろ?」
「だが、君一人に任せるのはしのびない、僕も手伝うよ」
「じゃあ二人で機織って牛の世話しよう、それでハッピーエンドだ」
「そうだね、違いない」
夜空にまた光の花が咲く。
ここまで派手に誕生日を祝われたのは初めてだ、流石理央、スケールが違う。
今年の理央の誕生日、俺は理央を家に招いて手料理を振舞っただけだから、来年こそはもっと―――いや、もっと凄いことをするんだったな、そういえば。
違う理由で胸がドキドキと高鳴る。
この綺麗で可愛くて特別な理央を、なにもかも独り占めできるのか。
幸せ過ぎて泣けてくる。
来年のお前の誕生日はたくさん―――たくさん、その、愛し合おうな。
それこそ今、この瞬間にも我慢しているぶんもまとめて。
「ねえ、くすぐったいよ」
笑う理央に囁かれてハッとする。
む、無意識でうなじやら首筋やらにキスしまくっていたーッ!
「ご、ごめんッ」
「構わないさ、好きにしたまえ」
うぅ、急に恥ずかしい。
俺が待ったをかけてるってのに、俺こそ自制が利かなくなりそうだ。
「な、なあ、今夜は晴れてるからさ」
「ああ」
「織姫と彦星も花火を楽しんでるだろうな」
「そうだね」
「これってお前からの粋な計らいってヤツ?」
「僕は君のためだけさ」
そうだな、分かってる。
また見詰め合ってキスをして、理央と一緒に花火を眺める。
告白した時は、忍び込んだ美術用具室で。
そして今は、この天ヶ瀬家の別荘前の砂浜で。
いつかまた、どこかで花火を見ることもあるだろう。
その時も隣にはきっと理央がいる。
俺達が大人になって、爺さん婆さんになってもずっと。
なあ、理央。
俺を好きになってくれて有難う。
お前が俺の運命だ、この先も離れない、離さない。
大切にする。
かけがえのない、特別な、何より大切な俺だけの女の子。
愛してるよ、理央。
(番外編/Happy Sweet Birthday♡:了)
最後までお付き合いいただき、有難うございました!
これにて俺の~三部作、完了です。
お楽しみいただけましたなら、感想、イイネ等、是非お待ちいたしております。
一言でも執筆の励みになりますので何卒よろしくお願いします!
(カクヨムにはないおまけパート)
※こちらの方が掲載が遅かったので、サービスです。
「……あ、そうだ、理央」
「なんだい?」
「織姫が着てる服あるだろ? あのふわっとした、なんか中華っぽいヤツ」
「羽衣と天衣だね、日本で言うところの着物のような伝統装束だよ」
「そう、それ!」
「それがどうした?」
「お前に似合いそうだなーと思って」
「ふふ」
「理央は魔女だし、天女ってのも近からず遠からずだよな」
「やれやれ、君の魔女に対する認識は随分と大雑把だな、改めて講義が必要なようだ」
「だって俺、そういうの詳しくない……それにほら! 俺にとって理央は天使だし? つまり天女ってことで、ほら! 繋がった!」
「ほら、じゃない、何もかもが雑だな」
「うぅ」
「だがそんなところも君の愛らしさだ、僕は好きだよ」
「あのさぁ、理央―――その、可愛いってよく俺に言うけどさ」
「うん」
「褒めてるのか?」
「ああ」
「で、でもちょっと恥ずかしいんだけど」
「おや」
「できれば格好いいとかにしてくんないかなーって」
「そういうところが可愛らしいのさ」
「ふぐぅッ!」
健太郎は乙女な男子です。
皆様薄々勘付かれているかもしれませんが『俺と~』シリーズの正ヒロインは健太郎です。
―――オマケはここまで。
それでは、また次の作品でお会いしましょう。
皆様どうぞご自愛なさって、日々を健やかにお過ごしください。




