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戸惑いとカノジョ 1

LOOP:2

Round/Once Upon A Dream



天ケ瀬に支えられてどうにか保健室に辿り着いたが、肝心の養護教諭は留守だった。

ツイてないな。


「やむを得ない、無断だがベッドを使わせてもらおう」


そう言って俺をベッドまで連れて行って、横になった俺のために上掛けまで整えてくれる。

本当にいい奴だ。

普段の天ヶ瀬だと男相手は大抵塩対応なのに、どういう風の吹き回しだろう。

まあ、助けてもらったんだ、つまらないことは気にするな。


「ああ、ジャケットは脱いでおこうか」

「ん、そうだな」


半身起こした俺のジャケットを脱がせて、丁寧に畳むと足元のベッド柵に掛けてくれる。

また横になると、改めて上掛けを整えてから、俺の胸の辺りをポンポンと軽く叩いて優しく微笑みかけてきた。

うわっ、わっ、どうしよう。

綺麗だ。

好きになりそう。

マジで顔が好み過ぎる、笑うと一層華やかで眩しい。

こいつは男なのに。

俺、頭がおかしくなりかけてるのか?

だからさっきから頭痛が、ッツ! クソ、まただ、いちいちズキズキと鬱陶しい。


「なあ、天ヶ瀬」

「なんだい?」

「色々悪いな、でも助かったよ」

「気にするなと言っているじゃないか」


白い手が髪をそっと撫でてくれる。

ああ、気持ちいい。

どうしてこんなに落ち着くんだろう。

本当にどうかしている、男相手におかしな話だ。


「さあ、おやすみ、健太郎」


「おう」と返して目を瞑ると、すぐ眠気が襲ってきた。

やっぱり体調不良だろうか、今朝から色々あって疲れたから―――


ああ、いい匂いがする。

甘くて蕩けるような花の香り、この匂いをよく知っている。

いつも隣で寄り添ってくれる、優しいあいつの匂いだ。


それなのに、俺は。

どうして―――


・・


・・・・・


眩しい―――


・・・・・・・・・・・・・

―――笑っている。


俺を呼ぶ声。

柔らかな手。

甘い唇にキスして、微笑んで、額をくっつけ合って笑う。


好きだ。

想いが溢れてずっと胸が高鳴っている。


お前が好きだ。

誰よりも好きだ。

何より愛している。


俺が辛い時、苦しい時、いつも傍で寄り添ってくれた。

支え続けてくれた。

そして幸せの形を教えてくれた。

目に見えるもの、見えないもの、たくさんの『特別』をくれたんだ。


何度も、何度も―――何度だって。

必死で足掻く俺に手を差し伸べてくれたから、俺は。


負けずに済んだ。

めげないでいられたんだ。

お前がいてくれたから、前を向いて諦めず進み続けることができた。


だから、本当に感謝している。

俺の心はいつだってお前のところにある。

替えはきかない。

他なんて何もいらないんだ。


笑ったら、本当に可愛くってさ。

どんな花も宝石も敵わない、最高に綺麗で眩しくて、きっと誰もが欲しがる特別な宝物。


そんなお前が俺を選んでくれた。

どこにでもいる平凡な、なんてことないただの男の俺を。

だから、想いに応えたい。

覚悟なんかとっくにできている、どれだけの障害、どれ程の困難が待ち構えていようが関係ない。


―――だから待っていてくれ。


俺がどれだけ諦めが悪いかなんて、お前はよく知っているだろ?

でも、悲しい思いをさせているのはごめん。

それは本当にすまない。

不甲斐ないよ、自分が情けなくて腹が立つ。


だけど、絶対に取り戻す。

―――無かったことになんてさせない。

お前と過ごした日々、交わした言葉、触れ合った記憶も、誰にも奪わせない。


だから。

待っていてくれ。


・・・・・・・・・・・・・


・・・・・

・・・


必ず―――

俺は。


・・


「―――ん?」


ゆっくり目を開く。

暫くぼんやりしてから体を起こした

今、何時だろう?

頭がいまいちはっきりしないが、何か夢を見ていたような気がする。


胸が痞えて苦しい、この感じ。


妙な焦燥感をある。

誰かや何かから早く、早くと急かされているようなこの感じ。

一体何だろう?

頭もまだ少し痛い、さっきほどじゃないがズキズキと嫌な感じに響いている。


―――そういえば、天ヶ瀬は?


見渡しても辺りにはいない、な?

ベッドの周りには目隠しのカーテンが引かれている。

教室に戻ったか。

寝ている俺に付き添ったって意味ないもんな、第一そこまでしてもらうのは流石に悪い。

溜息を吐きつつベッドを出てカーテンを開けると、その向こうで机に向かっていた養護教諭が振り返った。


「あら? 起きたのね、気分はどう?」

「はい、もう大丈夫です、勝手に休んですみません」

「いいのよ、だけどまだ少し顔色が悪いわね」


椅子から立ち上がって俺の傍まで来ると、額に手をあてる。

瞼の裏や首の辺りを確認して「まあ、大丈夫でしょう」と養護教諭はニッコリ笑った。


「君は二年の大磯 健太郎君ね」

「あ、はい」

「先生、貴方のことすっかり覚えちゃったわ、いつもヤンチャしがちだけど、元気なのも程々にね?」

「はあ」


顔と名前を覚えられるほど世話になってはいない筈だが。

まあ、心配してくれるのは素直に有り難い。


「戻れそうなら教室に戻って授業を受けていらっしゃい、まだ寝ていたいなら幾らでもどうぞ、だけど先生お仕事しているから、静かにね?」

「はい」


壁に掛かった時計を見ると、そろそろ昼だ。

随分寝たな、どうりで頭がボーッとしているわけだ。

午前の授業を丸々サボるハメになるとは。

今からだと教室に戻る途中で昼休みに突入するだろう。


養護教諭にお礼を言って保健室を出る。

廊下を歩く途中で案の定チャイムが鳴って、急に辺りが賑やかになり始めた。


「健太郎」


不意に天ヶ瀬の声が聞こえた気がして、振り返ろうとした矢先に「ケン!」と腕を掴まれる。


「サラ」

「見つけたわよ、さあ、お昼を食べに行きましょう」


そのままサラに引っ張って連れて行かれながら、さっき声が聞こえた方へ視線を向ける。

―――いないな。

確かに天ヶ瀬の声だと思ったが、気のせいか?

まあ、あいつは今頃ファンクラブの子達に誘われて、大方中庭のテラス辺りに飯を食いに行っているだろう。

大抵いつもそんな感じだしな。

さっき世話になった礼は、後で会った時にでもするとしよう。


食堂に辿り着いた。

いい匂いが漂ってくる、けど、俺にしては珍しく食欲が湧かない。


「ねえケン、私あれがいいわ」


サラが指差したのはオムライスセットだ。

俺は、そうだな、カレーにしよう。

迷ったときは取り敢えずカレーを食っておけば間違いない。

寝過ぎて体内時計が狂ってるのかもしれないし、だったら尚更スパイスでピリッと眠気覚ましだ。


「それじゃ、私は席で待っているから、早くしてね」


そう言ってサラは一人でテーブルの方へ向かっていく。

えーっと、俺に自分の分も持ってこいってことか、まあ、別にいいが。


注文カウンターでオムライスセットとカレーを頼んで、受け取りのカウンターに向かう。

―――あ、おにぎり。

受け取りカウンターの脇に置かれたケースの中に並んでいる。

注文したあとちょっと足りないって時に重宝するんだよな。

俺の好物。

あいつが握ってくれた―――いや?

俺の好物はカレーと唐揚げだ。

おにぎりは別に、あれば食うが、特に食べたいってものでもない。

大体おにぎりが好物ってなんだよ?

普通に白米でいいだろ、おにぎりにするのは携帯し易いのと食べ易いから、それだけだ。

なんで好物なんて思ったかな、うーん。


あ、でも、そういえば最近は少しレパートリーが増えたんだよな。

刃物や火は危ないから禁止されてるって、何の話だ?

でも俺は、あいつが作ってくれたものなら何だって―――ッツ! くそ、また頭痛だッ!

ホントいい加減にしてくれ、一体何なんだ!

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