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2000mの争い(後編)

 天皇賞(秋)は、いよいよ最後の直線での攻防となった。

 3番手のライスフィールドは、直後にいるソングオブリベラと共に先頭のシドニーメルボルンを追い越そうと必死になって追いかけていた。

 一方、多くの人達の注目を浴びているファントムブレインはまだ他馬と並走したまま、まだ中段の位置にいた。

「いつ仕掛けてくるんだ?」

「坂江さんはどうしたんだ?」

「果たして伸びてくるの?」

 多くの観客達はまさかと言いたげな表情を浮かべていた。

 そんな中、後方からの追い込みにかけていたストアーキーパーとトランクミラクルは思うように伸びず、残り300mの時点で先頭は厳しい状態だった。

 それから間もなく、シドニーメルボルンもズルズルと後退し、ライスフィールドとソングオブリベラに追い越されていった。

(さあ頑張って!何としても勝つのよ!勝って、道脇牧場とあんたの母ダイヤモンドリングにGⅠタイトルをプレゼントをするのよ!)

 2番手にいるクリスタルロードに騎乗している弥富さんは懸命に手綱をしごき、スパートをさせた。

 外に持ち出したファントムブレインは同じく外側を走るパースピレーション、トランクロケット、トランクゼウスと並びながらぐんぐん順位を上げていた。

 もしかしたらファントムブレインが敗れるかもしれない。でも坂江さんならきっと最後に抜け出してくれる。

 ファンの人達はそのような気持ちで見つめていた。

 一方、ライスフィールドは一瞬先頭に立ったクリスタルロードを交わして先頭に立ち、あとは残り200mを粘り切るだけの状態になった。

(頑張ってくれ!どの馬が来ようとも、絶対に抜かれるんじゃないぞ!)

 鴨宮君は祈るような気持ちでムチをふるい続けた。

『先頭はライスフィールド!2番手ソングオブリベラ!その後ろからは4頭が一気に押し寄せてきた!ファントムブレイン、抜け出せるか!?』

 アナウンサーが絶叫する中、残りは100mとなった。

 するとファントムブレインは絶対王者として負けてなるものかとばかりにパースピレーション、トランクロケット、トランクゼウスを交わしてきた。

「やっぱりブレインが来たか!」

「頼む!追い越されないでくれ!」

 善郎と紅君は祈るような気持ちで叫んだ。

『ファントムブレイン抜け出した! GⅠ6連勝は目の前だ!』

 アナウンサーはファントムブレインがまるで勝ったかのように実況をした。

 だが次の瞬間、ライスフィールドを見落としていたことに気が付き、一気に表情が変わった。

『しかし前にはまだ1頭いる!!届くのか!?』

『ファントムブレイン!ライスフィールド!』

『ライスフィールドか?ライスフィールドだあーーーーっ!!』

 アナウンサーの絶叫と、大勢のファンの人達の悲鳴の中で、ライスフィールドは2分の1馬身の差を残してゴール板を通過していった。

 一方のファントムブレインは、ソングオブリベラをかろうじて交わし、後ろから来た馬達をかろうじて振り切ったものの、あと1頭を交わすことはとうとうできなかった。

「やったああーーーっ!ファントムブレインを倒したーーーっ!」

「でかしたぞ、シン!去年2着の借りを返したぞーーっ!」

 善郎と道脇君は両手を高々と上げて喜びを表現した。

 するとそこにアキや紅君が集まってハイタッチを交わした。

「おめでとう、ライスフィールド!」

「鴨宮新君、やったやった!」

「これでGⅠ2勝目だ!」

 蓉子、葉月、太郎もそう言いながらその輪の中に加わり、皆で抱き合うようにして大喜びをした。

(勝った!勝ったぞ!ついにGⅠに勝った!それもファントムブレインという強敵を倒した上で!)

 これがGⅠ初勝利となる鴨宮君は、そう思いながら派手なガッツポーズを繰り返していた。

 そんな光景をよそに、ファントムブレインの陣営は受け入れがたい事実を突き付けられ、茫然と立ち尽くしていた。

 会場を埋め尽くしたファンの多くも、信じがたい光景を目にして落胆の声を上げていた。

『ファントムブレインついに敗れるーーーっ!!難攻不落の牙城を崩したのは去年2着のライスフィールド!去年のこのレースから始まったファントムブレインの連勝劇を、自らの手で止めました!』

 アナウンサーはライスフィールドの勝利をたたえながらも、ファントムブレインの敗戦がまだ信じられないという気持ちだった。


 硬い表情のまま引き上げ場に戻ってきた坂江騎手は、ファントムブレインの関係者の人達から

「こんなこともありますよ、坂江さん。」

「ライスフィールドの漁夫の利ですよ。」

「気にしないでください。」

 という声をかけられていた。

 また、会場からも「こんなのまぐれだ。」という声が上がり、それは坂江さんの耳にも届いていた。

 その中で、一足遅れて引き上げ場に戻ってきた鴨宮君が真っ先にアキに勝利の報告をしている姿が彼には気になった。

(みんなは漁夫の利だと言っているが、もしかしたらそれは分析や作戦能力に優れた風晴アキさんが意図的に仕掛けた作戦だったのかもしれんな。)

 そう思いながら彼は直線シーンをもう一度思い出した。


 自分は最後の直線で外に持ち出し、並走するパースピレーション、トランクロケット、トランクゼウスと争っていた。

 しかしそれに気を取られてしまい、しかも左斜め前を走っていた他馬が壁になって、内を走っていたライスフィールドに気付くことができなかった。

 やっと気付いた時には時すでに遅く、結局粘り切られてしまった。

 みんなはそれをライスフィールドの漁夫の利だと解釈しているし、確かにそう考えればそれで片付けることはできる。

 しかしその漁夫の利が単なる結果論ではなく、風晴さんの作戦だったとしたら…。

 もしかしたら僕の思い違いかもしれない。でももし本当なら、僕は彼女との頭脳戦に敗れたことになるな…。


 坂江さんは大喜びしている鴨宮君やアキ達を見ながら、しみじみとそう考えていた。


 結果的に3番人気、1番人気での決着にはなったものの、波乱気味のレースとなった天皇賞(秋)は、次のように確定した。


 1着 4枠8番 ライスフィールド (1分57秒8)

 2着 4枠7番 ファントムブレイン(2分の1馬身差)

 3着 5枠9番 トランクロケット (2分の1馬身差)

 4着 3枠6番 ソングオブリベラ (アタマ差)

 5着 6枠11番 トランクゼウス (ハナ差)

 6着 2枠3番 クリスタルロード (クビ差)

 7着 5枠10番 パースピレーション (クビ差)

 なお、1枠1番ストアーキーパーは10着。8枠18番トランクミラクルは12着、3枠5番シドニーメルボルンは17着だった。


 会場のざわめきがおさまらない中、ライスフィールドの陣営は満面の笑みで表彰式に臨んだ。

 馬にまたがっている鴨宮君は「どうもありがとう。」と言いながら手を振り、喜びを表現した。

 そんな彼らに向かってヤジを飛ばしたり、嫌な顔を見せたりするファンの人達がいたため、表彰式はどこか異様な雰囲気が漂っていた。

 それでも式は何事もなく行われ、陣営の人達は終始笑顔を絶やすことはなかった。

 そして天皇賞(秋)に関することが終わると鴨宮君を除く陣営は関係者エリアでライスフィールドと喜びを分かち合い、鴨宮君は急いで勝負服を着替え、最終レースに臨んでいった。

 こうしてファントムブレインが敗れるという結末に沸いた天皇賞当日の競馬は、静かに終わりを告げていった。


4歳10月の時点におけるライスフィールドの成績

14戦6勝

本賞金:2億950万円

総賞金:4憶2620万円


 今回は枠番と馬番をレース確定後に公表しました。

 これは1、2着馬の枠番、馬番が偶然にもライスシャワーの勝ったあのレースとかぶったためです。

 そのため、レース前に打ち明けてしまうと結果を読まれてしまうかもしれないと思ったため、このような形にしました。

 ちなみにゲームでの3着馬の馬番は5枠9番だったため、馬番は1つずれましたが、枠番はかぶりました。


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