6.道士:雫 相棒に過去を語る
「あん? 嘘じゃないぞ。ほれ、さっさと寄越せ」
放心して目の前の起こった現実が信じられない少女の頬をペチペチと叩き、報酬を要求する。後5秒で正気に戻らなかったらグーで殴るかな? と思っていたら
「な、なに!? 何なのその魔道具! オーガの肉体を何体も切り裂く魔道具何て聞いた事もないわよ! それこそ伝説上でしか聞いた事もない聖剣クラスじゃない!」
と興奮してはしゃぎ出した。フム、この世界には乾坤圏と同クラスの武具はそう無いらしい。これは良い情報だ。魔道具と言う名前からして魔力を糧に動く道具か?
仙気が無いから魔力を使うのは分かるが、例え乾坤圏を使わなくてもあの程度だったら勝てたぞ?
この世界の覇者になるのは案外簡単そうだな……邪な考えを心の中に秘めつつ乾坤圏を元の腕輪に戻す
「そんな事はどうでもいい。 さっさと金を寄越せ……お前もああなりたいか?」
指をオーガと呼ばれた化物に合わせると真っ青になった少女が慌てて懐から金銭が入っているであろう袋を取り出す
「い、今はこれだけしか……」
「聞こえなかったのか? そこで死んでる奴等のもだ。死人に金は必要無いだろう」
「あ、え、ええ……ちょっと待ってて」
少女が恐る恐る仲間の死体から金銭を集め始めると同時に上からライが降りてくる……何だか怒っているみたいだが
「……色々言いたい事もあるけど取り合えずお疲れ様」
「おう。まあ疲れてはいないがな。これで当面の資金も手に入ったし情報も入りそうだ」
ホクホク顔の俺に仏頂面で見つめてくるライ。全く何をそんなに怒っているんだ?
「なあ、何でそんなに不機嫌なんだ?」
「何でって……あんな少女に死体を漁らせてどういう神経してるのさ! 少しは同情とかないの?」
はあ……全くコイツは本当にお子さまだな。懐からタバコを取り出して火をつけて煙を吸う。フゥ……仕事の後の一服は最高だな。煙を吐き出して非難囂々の目で見つめているライに向き直る
「同情ならしてるさ。その為にアイツに漁らせてる。見てみろ」
俺の言葉にライは少女の方を見ると少女は仲間の死体を漁った後、神に祈るように手を合わせていた
「こんな世界だ。死は日常茶飯事何だろうよ。魔力が充満しているしそのまま死体を放って置けばキョンシー……いや、ゾンビになる。ここで燃やすしか無いだろうしな。最後の別れ位一人でやらせるのがいいだろう?」
本当は死体に触るのが面倒だ……と言う言葉は伏せておく。
俺の言葉にキラキラした目をして見つめているライの夢を壊すのは後々面倒そうだし……
「シズク! 君は本当は優しい子だったんだね! ボク、てっきり死体に触るのが面倒くさいんだとばっかり思っていたよ!」
感動して叫びながら抱きついてくるライの頭を撫でつつ本心を見透かされていた事に心の中で舌を出す。
全ての供養が終わったのかこちらに近づいてくる少女を見る
「はい、これで全部よ。後はオーガの魔石を集めるだけ」
「そうか。ならそれも集めてくれ。場所は分かるか?」
「……た、多分心臓の所だと思うけど。そ、それよりその子は?」
複数の袋を渡しつつ俺に抱きついて離れないライに視線を向けてから更に俺に怪しい目を向けてくる少女。いや、俺は別にロリコンじゃないぞ? 大体ライは俺より歳上だしな
「妹だ。取り合えず早く集めてくれ。時間もおしい」
「ちが!っん!?」
「え、ええ。わかったわ」
否定しようとするライの口を塞ぎ、早くしろと敢えて不機嫌オーラを出すと慌てて作業に入る少女。ナイフを取り出して解体作業に入る姿を確認しつつモガー、モガー! と暴れているライの口を押さえている手を放す
「シズク! ボクは妹じゃなくて君の恋人だぞ!」
「その発言は却下だ。何が悲しゅうて幼女宝具を恋人にせにゃならんねのだ」
「そんなの愛があれば大丈夫だよ! さあ早くチューしよう! 勝利のご褒美だよ!」
そう言って目を瞑って唇をつきだしてくるライの頭を押さえつつタメ息をつく
「チューはどうでもいいからさっさと目を開けてアイツの行動を見ておけ。今後は俺達も同じ事をする事になるんだからな」
「はへ?どういう事?」
目を開けて言う通りに少女の行動を見つめるライ……本当にコイツは少しも考えないな。タメ息を更に吐きつつ答えてやる
「いいか、アイツはオーガの魔石と言った。あの化物の売れる所である事は間違いない。今後は金を稼ぐ手段として討伐の仕事を受ければ嫌がおうにもアイツと同じ行動をする事になる。だから取り出しする場所を覚えておけ。くれぐれもその場所を破壊しないようにな」
「あ、う、うん。そうだね!」
ライの攻撃力ならあんな化物位ならチリも残さず焼きつくす。せっかく金になる部分を燃やしてしまっては元も子もない。俺のジト目を一筋の汗を流しつつスルーして少女の行動を改めて見つめるライ。全く……少しは自重してくれよ?
「それに……俺はお前の事を相棒だと思っている。しっかりしてくれよ? 相棒!」
「うー……取り合えず今はそれでいいよ」
まだ不満そうな顔をするのでグリグリとライの頭を撫でてやると嬉しそうな顔で安らぐライ。まあ、恋人にはしないがな。さすがに宝具が恋人と言うのは悲しい。せめてもう少し背が伸びて体の凹凸があればな……
無い物ねだりをしてもしょうがない。俺も取り出す場所を確認せねば。少女の方に視線を戻すとすでに五体目に取りかかっていた。確かに心臓の場所から丸い紫色の石を取り出している。
どうやらあれが魔石らしい。見た所、高純度の魔力の塊だ
「へぇー……確かにあれなら売れそうだね。かなりの魔力の塊だよ? 普通の人間が使うとそれだけでシズクの身体能力位は一時的に手に入るだろうね」
「ほほう……ならかなり高く売れそうだな」
お互い顔を会わせてニヤリと笑う。手元にあるこの世界の通貨の価値はしらんがこの袋全てよりは価値があるだろう。まあ後でアイツ等の家に行って全財産をぶんどれば分からんかもしれんが
外道と言われようが口約束と言われようが構わん。貰える物は全て貰う。そう言えばアイツ等の装備は売れるのか?破損しているのはともかくその他の物は乾坤袋にいくらでも入るから持って帰れるし……
「シズク……また悪い顔をしているよ?」
「人聞きの悪い事を言うな。約束したんだよ。全財産貰うってな。だからアイツ等の装備がどれくらいの価値があるか考えていただけだ。死人に道具は必要ないだろ?」
さすがに服位は残してやるがそれ以外は全部貰う。売れるものはとことん売るのが世捨人のルールだ。空き缶拾って売っていた幼年期を舐めるなよ? 自分を売るのさえ躊躇いはない
「シズク……過去に何があったのさ。どうしてそんなにひねくれてるの?」
「8歳の頃に親に捨てられて世捨人になって13歳になって自分を売って違う国に来たとたんに仙人になれって拉致られた」
「安心して! これからはボクがきちんと面倒見るから! 君の為ならこの世界すら手に入れて見せる!」
急に抱き締められて男前発言するライ。マジかっけーっす! でも本気でやりそうだから自重しろよ?
「ああ、ありがとうな。期待しているぞ」
「うん! 任せといて!」
まさかこの発言が後にとんでもない事件を引き起こす事になるとはその時は思わなかったんだ……
少女の名前は次回にて。ヒロインにするかは迷い中……
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