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1.道士:雫 誕生

鍾離権ーー八仙にも数えられると言う仙人の中の仙人!と自慢気に語る胡散臭いジジイに仙人に誘われた俺は


「頭沸いてるのかジジイ」


と落ちたタバコを拾い、また吸い始める。全くこのタバコのせいか幻覚を見てるのか?このタバコもしかしてクスリか何か入ってるんじゃないだろうな?


「ひょひょひょ!クスリなんぞ入っておらんぞい。それは正真正銘ただのタバコじゃて」

「っ!? 考えが読めるのか!」

「まぁのう。ホレ、取りあえずこっちに来いや雫」


ジジイを形成していた煙が俺の体を包み込み、徐々に意識が遠くなっていくーー


「な…にを…しやが…るジジイ!」

「ひょひょひょ!」


ジジイの楽しそうな笑いに俺の意識はそこで途切れたーー



「ここは…何処だ?」


目を覚ました俺が見たものは霧がかった不浄なる大地ーー本か何かで見たような事がある場所だった。自分の服装も変わっており、これも何かで見たようなーーそう、小さい頃に見た映画の道士が着る服に着替えさせられており、伸びてボサボサな髪も綺麗に整えられていた



「この小僧ですかな?鍾離権」

「ひょひょひょ!そうじゃ。どうじゃ?」

「目つき悪い小僧じゃて」

「あら?貴方に言われたくないと思うわよ?呂洞賓」

「はっはっは!それもそうじゃな!」


いきなり聞こえた声に振り向くとそこには8人の老若男女がいた。なんだコイツ等…人の風貌を悪く言いやがって


「一体ここは何処だ?そしてお前らは何なんだ?」


拳を握り締めて何時でも振りぬける構えを取る


「ひょひょひょ!先程説明した通りじゃて。我等は八仙ーー仙人の中の仙人じゃよ」


鍾離権が腹を撫でながら答える


「んで、その仙人様がしがない浮浪者の俺に何のようだ?金なら無いぞ?」


俺の言葉に大爆笑する面々。まあ自分で言ってて悲しいものがある


「あ~腹痛い!鍾離権、貴方何も説明してないのね。ごめんなさいね。私は何仙姑かせんこ。宜しくね」


何仙姑と名乗る女が手を差し出してくるがそれを俺は払いのける


「あら?嫌われちゃったかしら?」

「挨拶なんてどうでもいい。それより俺を元の場所に戻せ。こんな所で俺は時間を浪費するわけにはいかない」


そう、俺には生きていく為の手段を考えねばならない。こんなジジイ達の相手をしている暇はない


「ひょひょひょ!なーに、時間ならたんとあるぞよ?なにしろ雫、お前はわしに選ばれたんじゃからな」


あん?今なんて言ったんだこのジジイは?


「選ばれた?今にも死にそうな浮浪者のただのガキが?」


ジジイ達を睨み付け、一歩も引くことなく対峙する。偉いか何か知らんが世捨て人の俺には関係ない


「ひょひょひょ!そうじゃ、その死にそうになっているのが幸いしたのう。骨が変化して仙骨になってきておるのじゃ」

「仙骨?」

「そう、仙骨じゃよ。腰にある骨の事ではないぞよ?仙人に成るためには必要不可欠の骨。雫、お前さんの骨格全てが仙人の骨になりつつあるのじゃよ」


ほう、通りで走った時に体が軽く感じたのか。普通なら大人の追いかける速度に負けるから違和感は感じていたんだがな


「わし達は後継者を探しておったんじゃ。今の世で仙人になろうとする奴もおらんでのう。おったとしても仙骨が無いのでなれんのじゃて。そして今日、微かな仙骨の気を感じてお前さんの所に来たと言う訳じゃよ」


腹を擦りながらにこやかに笑う鍾離権。仙人の後継者?俺が?


「仙人って言うのはどうやったら成れるんだ?」

「先ずは仙骨の安定、そして後は修行じゃて。なーに我等が100年付いて修行すればなれるじゃろう」


100年!? しかも監視付きかよ!


「ふざけるな!誰がなるかそんなもん!」


思わず鍾離権に向けて殴りかかる!が、


「っな!?」

「ひょひょひょ!軽いのう」


俺の拳は今にも折れそうな小指1本で止められた。嘘だろ?


「のう、雫や。御主は何をしたいのじゃ?」

「何をしたいって…」


何をするかなんて考えた事は無い。ただその日その日を生きていたかっただけだ


「御主のような子供が仙骨になるにさぞや苦労があった事じゃろう。なら少し休憩せんか?この仙境は時間の流れも変わり、下界の影響も受けん。仙道を学び、その心を癒せや」


鍾離権がピン!と小指を弾き、俺の体が吹き飛ぶ!


「うわぁぁぁぁ!」


ドサッと背中から地面に落ち、受け身を取るがそれでも呼吸が困難になる。チクショウ!痛ぇ!


「先ずは呼吸法から学べや。韓湘子(かんしょうし)、そなたに任せるぞい」

「はいはい。どうも、韓湘子です。今後とも宜しくね」


韓湘子と言う若い男の仙人が俺の腕を取ったと思えばいつの間にか立たせて体に着いた汚れをはらってくれる。成程こいつも実力者って事か


「……くっくっく。面白ぇ!修行すればお前らのような化物に俺も成れるんだな?」

「ええ、ただしそれは雫、貴方の努力次第です。心身の清浄が第一ですから。先ずは言葉使いから直していきましょうか?」


韓湘子が笑いながら俺の頭に手を乗せて撫でてくるのでそれを思いっきり払う!


「イヤだね。俺は俺のまま仙人になってやる。お前らの思い通りになんてなってたまるか!」


俺の言葉に唖然とする韓湘子。周りの仙人達は大爆笑だ


「ひょひょひょそれで良い。なーに、時間はたっぷりあるからのう。先ずは仙人見習いーー道士から始めるがよい。今日から雫、お前は道士:雫と名乗れや!」

「おう!」


こうして決して仙人には成れない道士:雫が誕生したのだった


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