プロローグ
初めての投稿です。至らない点も多く有ると思いますが宜しくお願い致します。
悪い事は大体やったーー
酒、タバコ、女、暴力、賭け事……クスリはしなかった。そこまで堕ちたいとは思わなかったから
8歳で捨てられた俺が生きていく為には悪事に手を染めるしか手はなかった。子供心に悪い事だと分かっていたが死にたくはなかった
最初の悪事は万引きだった。ババアがやっている小さな店でパンを盗んだ。3日も食べておらず腹が減って仕方なかった。一口目が堪らなく旨かった事を今でも覚えている
次はゴミを漁った。この国は簡単に物を棄てるからシャツやズボン等を手に入れるのは容易だった。何度か人に見つかり、その度に逃げた。今を思えばあの時に捕まっていれば今のようにはならなかったのだろうか?
平和と言われるこの国にもスラムは存在する。浮浪者のたまり場が最たるものだろうか拠点をそこに移した。林の中で隠れて寝泊まりするには限界があった。まだ人恋しいと言う感情があったのか光が欲しかったのかは今となっては分からない
浮浪者には浮浪者のルールが存在する。子供と言えど他人の縄張りに手を出せば手痛い仕返しが来る。最初に他人の寝所で寝てしまい、蹴られたのは良い思い出だ。
ここでは子供も大人も関係ない。それが俺には嬉しかった。誰も詮索をせず、関わらなければほっといてくれる。たまに来る市役所の連中が来たときには真っ先に逃げた。捕まったらその時は終わりだと思っていた
それから5年が経ち、このままだといずれ役所に捕まりそうと判断した俺は13歳になった日に密航して違う国に逃げた。ツテは同じ浮浪者の元ヤクザの人だった。違う国に行きたいと呟いていたら相談に乗ってくれた。報酬は俺自身を売る金だったが。
指定された場所に行き、いかにもな船に乗った。
船の中はゴミためのニオイが充満していたが普段から慣れている俺は気にもせずニオイにやられて吐いている大の大人を見て冷めた目で見ていた。この部屋には3人がいたが俺以外は皆大人だった。
関わりあいになりたくないのでと体力を温存するためにずっと寝たふりをして過ごし、見知らぬ国に着いた途端に俺は逃げた。俺を買った人物が激高して銃を打って追いかけてくるがそんな事は知らない。わざと人の多い所を抜け、追っ手を撒いて人がいなさそうなボロ小屋に飛び込んだ
「はっ、はっ、は……」
息を整えてじっと身を潜めて気配を殺す。
これで取り敢えずは第一段階クリアだ。次は第2段階、拠点を作る。
静かに起き上がり部屋の中を見渡すと誰かが住んでいる様子は無い。しかし簡易なベッド、机、箪笥等も置いてあり暫くの間はここに隠れて過ごせそうだ
「次は食料だな。夜まで待って盗みに行くか。使えそうな道具はあるか?」
机の中を漁るとタバコとライターが入っていたので火をつけて吸ってみる。浮浪者仲間に以前別けて貰った時はかなりむせたが…慣れだろうか?この肺にくる煙がひどく心を落ち着かせる。暫くの間タバコの煙を楽しんでいると違和感を感じてくる
「なんだ?煙が…」
吐いた煙が徐々に変化し始め、人型を作っていく。ポロリと手から落ちたタバコは気にもせず、その形作られた人型に意識を集中していると腹を出した太ったジジイの形になった
「ひょひょひょ……なあ、小僧」
煙が声を発した事に驚いたがその時の俺は何故かひどく落ち着いていたと思う
「なんだジジイ?俺には雫と言う名前がある」
「ひょひょひょ!ワシを見て驚く所かジジイとな?面白いな小僧!ふむ、骨もなりかけだが仙骨になっとるのう……のう、雫や?」
煙が体に纏わりつき、何かを調べられた感覚が全身に行き渡る。骨?仙骨?なんの事だ?
「御主、仙人に興味はないかえ?」
「あん?」
これが認めたくは無いが師匠ーー鍾離権との出会いだった