表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/69

第一章 いつかの春③

 入学式が終わって教室に戻る。

 僕の席は、真ん中の列の廊下側、後ろから二番目の席だった。同じように教室に戻ってきた永井は、僕のすぐ後ろの席に腰掛けた。

「あれ、さっきの……」

 僕は椅子に肘をかけて、半身だけ振り向いた。

「永井遥花です。これから、よろしくね」

「こちらこそ、よろしく。仲良くしてくれると、嬉しいな」

「うん。私も、遠野くんと仲良くなれたら、嬉しい

 永井は、そう言うと、またにこりと笑った。穏やかで優しい笑い方をする女の子だなあと、僕は永井の笑顔を見ながら思っていた。

 しばらくして先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。最初に、一人一人自己紹介をすることになった。

 僕は他の生徒の自己紹介の声を聞きながら、机に肘をついて、遠く窓の外に目をやった。この席からでは、グラウンドに咲く桜は見えない。

 前の生徒の自己紹介が終わる。次は、僕の番だ。椅子から立ち上がる。さっきまで呑気に外を眺めていたが、本当は、心臓が破裂しそうなほど緊張していた。

「え、ええっと、遠野誠太です。この高校までは電車で来ています。中学までは野球をやっていました。一年間、よろしくお願いします」

 言い終えると、軽く頭を下げて、すぐに椅子に座った。ふうっと、息をはいて、無事に終わったことにほっとして、胸を撫で下ろした。

 次は、永井の番だった。僕は後ろを振り返り、永井を見つめた。

「え、ええっと」

上擦ったような裏返った声が、教室に響いた。永井も緊張しているようだった。永井は「ご、ごめんなさい」と慌てて頭を下げると、恥ずかしそうに両手を顔で隠した。

「その、私は、永井遥花って言います……。文芸部に入ろうと思っているので、いっしょに文芸部に入ってくれる人がいたら、嬉しいです……」

 最後の方はどんどん声が小さくなってしまった。少しだけ泣き顔に近い顔になってうつむいてしまう。よほど恥ずかしいのか、「えっと、その……」と体の前で、指をもじもじとさせている。

 そして、永井は、意を決したように思い切り顔を上げて、「わ、私のモットーは、今を一生懸命に生きることです!」と目をつむりながら叫ぶように言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ