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第48話:語り継がれる奇跡

後日談

あの日、世界から魔法が消えた。

 漆黒の絶望を飲み込んだ銀色の閃光が収まったとき、東京の上空を埋め尽くしていた数万の古代兵器は、ただの動かない鉄屑となって地上へ降り注いだ。

 人々は、自分の指先から灯火が消え、身体の奥底で脈動していた「未知の力」が霧散したことに戸惑い、恐怖した。だが、その混乱は長くは続かなかった。空が本来の青さを取り戻し、不気味な魔法陣が消え去ったことで、人類は本能的に悟ったのだ。

 ――「特別な時代」は、終わったのだと。



 事件の全容は、白日の下に晒された。

 魔法省長官・鬼龍院仁によるクーデター計画。そして、彼が古代遺物を用いて世界を破滅の淵へと追い込んだ事実。公式記録には、首謀者である仁の独裁と、その暴走による国家危機の回避が克明に記された。事件は、主犯である鬼龍院仁の死亡、そして共犯者たちの検挙をもって、ひとつの時代の終わりと共に幕を閉じた。


 あの日、戦場の中心で銀色の光を放ち、世界を救った「水の賢者・葵」の姿を見た者は多い。しかし、光が消えた後、その姿を見た者は一人としていなかった。


 世界は、魔法のない「普通」の姿へと、驚くべき速さで順応していった。


 かつての七賢者も、その役割を終え、それぞれの道を歩み始めた。

 岩の賢者・大岩剛、風の賢者・如月颯真の二人は、反乱加担の罪で逮捕された。彼らが守ろうとした「正義」は、皮肉にも魔法が消えた後の裁判で、力によらない言葉の応酬によって裁かれることとなった。


 一方で、蓮たちの味方として戦った者たちは、新しい空の下で力強く生きていた。

 草の賢者・藤田紫苑は、相変わらず臆病な少女だが、今や世界を股にかける「植物博士」としてその名を知られている。魔法を使わずとも、植物の生命力を引き出す彼女の研究は、荒廃した土地の緑化に多大な貢献をし、ノーベル賞候補にまで名を連ねている。

 炎の賢者・不知火煌々は、その圧倒的なビジュアルと明るさを武器に、SNSの世界へ転身。「魔法がなくても人生は映える!」をモットーにした彼女の投稿は、瞬く間に若者たちの支持を集め、今や日本を代表するトップインフルエンサーとして多忙な日々を送っている。


 そして、蓮たちが通った国立第一魔法学校。

 魔法科という存在意義を失った学校は、一時は閉校の危機に立たされた。しかし、それに猛反対したのは陽向だった。

「魔法がなくても、ここで私たちが過ごした時間は本物だったでしょ!?」

 彼女の涙ながらの力説と、じい――一条氷介の裏回しもあり、学校は「国立第一高等学校」として生まれ変わった。教室から魔法陣は消えたが、放課後の笑い声や、受験に悩む生徒たちの姿は、かつてと変わらずそこにある。


 瓦礫の山だった東京は、重機と人の手によって再建され、魔法の灯火に代わって、LEDの街灯が夜を照らし始めた。

 かつて世界を熱狂させた「魔法」という名の奇跡は、今や歴史教科書の一隅に記されるだけの、どこか現実味のない夢物語のようになりつつある。




 あの日から、三年の月日が流れた。

 傷跡は癒え、人々は魔法を忘れて前を向く。

 けれど、あの日あの場所で、誰よりも魔法を愛し、誰よりも魔法を憎み、そして最後に全てを捧げた一人の少年のことを、仲間たちは一時も忘れたことはなかった。


 ――三年前と同じ、春の陽光が降り注ぐ朝。

 国立第一普通高等学校の門には、「卒業証書授与式」の看板が立てられていた。

次回、最終回です。

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