表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/52

第27話:凍てつく聖域 

 東京都心部、地上数十メートルの喧騒が届かぬ場所。魔法省本庁舎の遥か地下には、国家機密のさらに深淵、一般の職員すらその存在を知らぬ巨大実験施設『第零だいぜろエリア』が存在する。

 無機質なコンクリートに囲まれたその空間には、数百名の研究者たちが放つ、焦燥と狂気にも似た熱気が渦巻いていた。

 施設の中央。防魔ガラスの向こうに鎮座しているのは、あの日、新宿の深層で回収された――古代文明の遺物だ。

 結晶化した魔導回路が網目状に張り巡らされたその「心臓」は、現代魔法のことわりを嘲笑うかのように、静かに、しかし重厚な拍動を繰り返している。

「……解析率、九九・八パーセント。……魔力増幅炉、最終接続を確認しました。……いつでもいけます、長官」

 震える声で報告を上げた研究員を、背後から一人の男が無言で見下ろした。

 魔法省長官であり、軍拡派の頂点、雷の賢者――鬼龍院きりゅういん じん

 仕立ての良い漆黒のスリーピースを隙なく着こなし、冷徹な理知を湛えた双眸そうぼうが、ガラスの向こうの「力」を射抜いている。隙のない髪型と、感情を排したその立ち姿は、まさに現代に現れた「悪」の象徴であった。

「始めろ」

 短く、氷のように冷たい声。

 仁の隣で、巨岩のような腕を組んで立っていた岩の賢者・大岩 剛が、地響きのような鼻鳴らしを漏らした。

「ガハハ! 仁殿、ついにこの時が来たか! 我らの手で、この脆弱な現代に、真なる『暴力』を再臨させようではないか!」


 直後。

 装置が咆哮を上げた。古代の設計図から着想を得た、禁忌の『魔力増幅器』。

 空間が歪み、現代魔法の定義では測定不可能なほどの膨大な魔素がひとつに集約していく。

 

 バチッ、という、鼓膜を裂くような雷鳴が地下空間をつんざいた。

 仁がその装置を手に取ると、彼の全身を黄金色の雷光が包み込む。それは、現代の魔法師たちが一生をかけても届かぬ、神話の時代の魔力――古代魔法に匹敵する、圧倒的な力の奔流だった。


「……これが、世界の理か」


 仁は、溢れ出す力を確かめるように拳を握りしめた。その瞳には、慈悲も、正義もない。ただ、力による絶対的な統治を目論む、王の野心だけが宿っていた。

 軍拡派は、着実に、そして誰にも止められぬ速度で、平和という名の幻想を食い破り始めていた。



 その日の深夜。

 初雪が舞い始めた日本全土に、一つのニュースが雷鳴のように響き渡った。

『――緊急ニュースです。魔法省は先ほど、七賢者が一人、一条 氷介ひょうすけ氏が、高齢を理由に現役を引退することを発表しました』

 氷の賢者、引退。

 穏健派の精神的支柱を失ったという報せは、世間を激しく震撼させた。

 


 そのニュースの裏側に隠された『真実』――じいが、仁の手に入れた強大すぎる力を前に、自らが人柱となって身を引くことで、葵、紫苑、煌々の三人の身の安全を保障させたという「血の契約」を知る者は、まだ誰もいない。


 冬の夜空、月が不吉な赤色に染まっていた。

 平穏という名の薄氷が、無慈悲に、そして無音で砕け散った夜だった。


こんにちは!よつばです!

今回は蓮が登場しない初の試みをしてみたがどうでしょうか?

まぁそれどころではないんですけどね。

じいの引退。これからどうなるのか。

次回は多分平和回です。次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ